第200話
結の気合いが半端じゃない。こうしてログインしてからも話しかけられないぜ。
「さあ、現れろ。アークマー! 今度こそは貴様を1人で倒してみせる!」
結の声に呼応したかのタイミングで怪人が現れやがった。あいつが結を負かしたのか。
「俺様を呼んだのはお前か? わざわざ負けに来たわけだ。ガッハッハ!」
「勘違いをされては困る。今度はあたしの手で貴様を倒す」
「やってみるがいい」
「セイギノケンジュウ――剣モード!」
あの武器はヒーロータイプ専用の。だが、それで倒せるのなら苦労はしないぞ。
怪人の方は分身するし速いしと手加減なしときたもんだ。
「ガッハッハ! オラララ!」
「ぐはああ!!」
このままだと結が負けちゃうぞ! ここは俺が加勢に入るしかない。攻撃が通用するかは分からないけど、黙って見ているよりはマシだ。
「はあ!」
「何!?」
当たった! 仮面タイプの動体視力が役に立った!
「ごめん結。決して邪魔するつもりはなかったんだ。ただ見ていられなかった。ゲームであろうとも」
「始起……貴様ってやつは」
「決めるんだ結! キツいのを喰らわせてやれ!」
「恩に着るのだ。はああああ!!」
俺の攻撃を受けて動きが鈍っているところに、結の剣が容赦なく斬りかかる。2人がかりとはいえ、1度は負けた相手を倒せたんだ。悔いはないだろう。
「お見事だったぜ。よくぞアークマーを倒した」
「僕たちが助けに入ることもなかったさ」
あの2人は! 俺と結の戦いを見ていたのか。
「トゥルーレッドには遠く及ばないのだ」
「そんな謙遜しなくていいぜ。いいものを見させてもらった。安心したぜ、未来にもゲーマーの心を燃やすやつがいて」
「「え!?」」
「惚けなくてもいいさ。“ほかのフルダイブ型VRゲーム”なんて言われて不思議に思ったんだ」
「今、“ほかのフルダイブ型VRゲーム”なんて存在しないんだ。だとすれば考えられるのは、2人が未来から来たってこと」
俺が何気なく言ったことを覚えていたのか!? 普通なら聞き流していても不思議じゃないのに。
おそらく、結も同じことを言ったんだろう。目を丸くしているよ。
※ ※ ※
ログアウトしたあとの結は清々しい顔でいる。これで俺も安心だ。いろいろ見たし、そろそろ帰るとするか。
「なあ。未来から来たって2人、何年先から来たんだろうな?」
「分からないさ。2人のことは何も訊いてないからね」
「せめてお前との未来くらいは知りたかったぜ」
「あの2人が僕たちを知るわけないじゃないか」
「そうかあ? イード社の紅蓮緋って言えばピンときたかもしれないぜ」
紅蓮緋……ああ! なるほど、そういうことだったのか!
「始起。今の2人、未来とかなんとか言っていたな。しかも、女性の方は喫茶店にいた人だったのだ!」
「結、思い出したよ。俺が女の人をどこで見たのか」
イード社。俺たちゲーマーにユートピアを生み出してくれた会社じゃないか。
それに紅蓮緋っていえば、ユートピアの発案者だ。レトロゲーム特集に載っていたのは、若いころの2人だった。
「教えてくれないか」
「帰ったら教えるよ」
こんな巡り合わせがあるなんて。お陰で俺のゲーム熱が復活したぞ。ああ、過去に来てよかった!




