第196話
綺麗な草原ではないか。うむ。21年前のVRだからと多少の粗さには目を瞑るつもりでいたが、その心配はなさそうだ。
あたしのアバターはヒーロータイプというもの。レイド戦で真価を発揮するみたいなのだ。色が選べたので赤にしてみたのだが、やはり1人だと寂しいな。
「ガッハッハ! 敵を発見!」
いきなり何なのだ? いかにも敵だと言わんばかりの風貌ではないか。
「何者なのだ」
「ガッハッハ! ここにいながら俺様を知らないとはモグリめ。俺様はアークマー。正義を振りかざすやつらの敵だ」
「そうか。どうやら、あたしは貴様と戦わなくてはならないようなのだ」
さて、あたしが使える装備は……あったのだ!
セイギノケンジュウ、か。銃と剣のモードを切り替えて戦えというわけだな。面白い!
「俺様と戦おうとは命知らずめ。後悔しても知らないからな! ブー!」
トランペットを吹いて分身した!? 5体に増えたのだ。
「ガッハッハ! さあ、処刑の時間だ!」
斧を使ってくるようなのだ。近づけさせなければどうということは――。
「――ガッハッハ! オラララ!」
「なぬ!?」
な、なんという速さなのだ! 見た目はゴツいがとんでもない。
「言ったはずだ。後悔しても知らないと!」
「ぐは!」
攻撃が重い……。これをあたし1人で倒さなくてはならないのか……。
「所詮はヒーロータイプ。1人ではこの様だ」
「あたしは負けないのだ!」
「威勢のよさだけは認めてやる。ガッハッハ! 死ね!」
このあたしがズタボロなのだ。舐めていた、21年前のVRを。




