第176話
目の前に広がる光景……息を飲むというより、言葉を失うという表現の方が正しい。まさに地獄絵図。
「…………」
「おねえさま……これは何の冗談だろーか」
「冗談であってほしいのだ。こんな……あんまりな……」
赤い空に照らされた死体の数々。流れ出ている血は紛れもなく本物。独特の臭いが鼻を抉る。
「国はどこまで承知していると思ーう?」
「石が作りだした仮想世界という程度だろ。危険性があったのなら、国民に開放なんてしない」
電子変換されているとはいえ、それは仮想世界に入るための認証でしかない。当然これは生身の肉体。致命傷を負えば死ぬ。
「引き返そう。ここの危険を知らせないと――?」
「水岡さん?」
「おかしい。ゲートが現れない!?」
何を悪い冗談を……そ、そんな……。あたしのパラダイスでもゲートを開けない!?
「無駄だ。1度入れば最後、この世界から出ることはできない」
「……誰だ!」
白い髪の女。ただの人間には思えないのだ。
「ワタシは、この世界そのもの。仮にデストラ、とでも名乗ろう」
「この者たちを殺したのは貴様か!」
「そう。ワタシの目的は人間を滅ぼすこと。人間を滅ぼし、万物の頂点に立つことだ」
万物の頂点……だと!?




