第16話
やったー! 今日は美少女が一緒だぞ!
あ、でも待てよ。必ずしもアバターを現実と同じ性別にしているとは限らないよなあ。
まあ俺も現実とは全然違う外見だし文句は言えないけど。金髪金眼の爽やかイケメンだけど。
「ちょっと早かったかな」
待ち合わせ時間には10分早い。俺が早く入っただけだ。
待ち合わせ場所に指定したのは公園。芝生にベンチがあるだけというシンプルな作り。
「寝転んで待ちますか」
どうして芝生は気持ちいいのだろう。太陽の暖かさと芝生の匂いでノックアウトされちゃう。こういうのは反則だろうに。
「あああ……もう限界」
「何が限界なわけ?」
「えっ?」
声をかけられたから目を開く。飛び込んできたのは赤髪の姿だった。芝生に仰向けで寝転がる俺に対し、上から覗きこむような体勢でいる。
「芝生で寝転ぶのは勝手だけど、そんなに隙だらけだと殺されるから」
「街中じゃ殺せないと言っただろう?」
「そういえばそうだった。あたしとしたことが」
「キミは何の用で? 俺はここで待ち合わせしてるんだ」
「あら奇遇。あたしも待ち合わせしているの。お互い名前を教えてないからどうしましょ」
「そういえば俺もだ。『会ってからのお楽しみにしよう』と言われたからな」
「そうそう。あたしも同じことを言われた……ん? ちょっと偶然がすぎない?」
あれれ? もしかしてこの流れってアレじゃないか? 実はもう既に会っていたパターンじゃないか!?
「な、なあ? キミは転校生だったりするのか?」
「そうだ。隣の席のやつが質問を浴びせてくるもんで苦労したが、あたしがゲームを得意だと言った途端、一緒にやろうと誘ってきたんだ。戦力になりそうならフレンドにしようと思っているのだ」
「……そいつとは既にフレンドになっているぞ。キミの隣の席のやつは、勉強が得意かと質問していただろう」
「どうして貴様が知っている!? ま、まさか貴様!?」
赤髪が動揺してるぞ。というか偶然すぎるだろう!
まさか赤髪の正体が、黒髪ロングの美少女・川島結だとは――。




