第148話
水岡さんに連れられたのはショッピングモール。いろいろな店があるというだけで来たらしい。入った店は若い女子に人気らしく、通路通路ですれ違う。
そんな店の一角がなにやら騒がしい。店内にいる客がぞろぞろと集まっている。あたしと水岡さんも気になり近づいた。
「やはり私は人気者なのかな? 自分では分からないもので」
「「きゃあああ!!」」
これが黄色い声援というものなのか。しかし世間は狭いのだな。こんなところで赤井を目撃することになるとは。彼の隣にいるのは、白石万希ではないか。
「赤井森夜さんプロデュースの手袋のイメージキャラクターをさせてもらうことになりました白石万希です! まだまだ駆け出しのアイドルですが、この手袋の魅力を頑張って伝えていきます!」
そういうことか。自分がプロデュースした手袋のイメージキャラクターに新人アイドルを起用するだなんて思いきったことをしたものだな。赤井の強い希望が通ったに違いない。
「なかなかにイケてるデザインじゃないか! あれなんかピッタリだと思うよ、おねえさま」
「こういうものに疎いあたしでも惹かれるものがあるのだ。早くも決まったのだ」
「じゃあさっさと会計を済ましちゃおう」
水岡さんは一緒に置かれていたニット帽を手にする。何種類かあったのにパッと選ぶあたり、直感で物事を決める人なのだろう。
あたしも手袋を2つ取る。始起と自分の分。そのままレジに向かおうとしたのだが、呼び止められてしまったのだ。
「待ちたまえ。結ちゃんと花音ちゃん」
「「ざわざわ」」
このバカ者が! 馴れ馴れしく下の名前で呼ぶやつがあるか! 女子の視線が一点集中ではないか。
「君たちには私からプレゼントしよう」
「「ざわざわ!?」」
赤井のやつめ。気持ちは嬉しいが、大勢の前で特別扱いは結構大変なのだ。気まずいのだ。
「サンキュー赤井さん!」
水岡さんのメンタル半端ないのだ。




