第141話
何度も何度も目を擦って凝視する。しかし何も変わらない。このゲームの終わりが決まったことには。
今、俺の意識以外は全てデータにすぎない。どんなに現実と遜色なくとも。草原の草をむしって風に乗せて飛ばす。身体に感じる風もデータだ。
「唐突なんだよ、まったく」
「あたしたちのデータはどうなるのだ」
「分からない。他社のゲームに使えるとは思えない。何も動きがなければ……消滅だろう」
どんなに汗水流そうが所詮はゲーム。昔は特にその風潮があったみたいだ。やっている俺たちからすればふざけるなって話だよ。娯楽に意味や必要性を求めるのは違うと思う。娯楽は娯楽、それ以上でも以下でもない。
「終了まで1ヶ月ある。最後の最後まで遊びまくってやるのだ!」
赤髪の目が潤んでいる。俺以上にゲームを愛しているに違いない。寂しさも悔しさも人一倍のはずだ。
なんだか無性に抱きしめたくなったぞ。ああ、つくづく俺は赤髪のことが好きなんだと思い知る。
「俺も楽しんでやる。キミと、みんなと一緒に!」
「ああ、そうなのだ」
2人で眺める青空は格別だ。何でもないのに心が落ち着いてきた。
赤髪が見つめてくる。本当にかわいいとしか言えない。バカだなんだ外野から言われようが構わない。
「誘ってると受けとるぞ?」
「好きに解釈するのだ」
日向ぼっこは気持ちいい。そんななかでするキスは格別だ。




