第132話
イベント開始。終わりの始まり。
街は廃墟へと様変わりしている。足の踏み場を埋めつくす瓦礫が悲惨さを高めており、空が曇っているせいなのか、気持ちがどんよりする。
「ほかには行けないのか」
「少なくともワープはできないのだ。歩いて行けるかは分からない」
「とりあえず移動しよう。ここで立ち止まっていても始まらん」
こういうとき、レッドウェルみたいなやつがいて助かる。ムードメーカーみたいな感じかもしれない。
「それにしても、どこにもいないーね。たらふくだっけ?」
「タラスクですよ。出現に条件があるのか、はたまたランダムなのか。どちらにせよ警戒するに越したことはありません。ウォーター姐、くれぐれも単独行動をしないように」
「安心しーて。わっちは、おねえさまから離れないから」
「だからといって引っ付くな。瞬時に動けないのだ」
あはは。緊張感がないのかあるのか。固くなっているよりもいいけど。
「ん? みんな、何か聞こえないッスか?」
ゴッドバレーの一言に足を止める。
周りにはほかのプレイヤーがいるものの、特に怪しいものはいない。特に音もしない。
「ククク。全員、地面を見るぞよぉ」
「「!?」」
足下が眩しく光る。反射的に目を閉じる。
それは一瞬の出来事だった。どうやら、別の空間に飛ばされたみたいだ。俺たち以外のプレイヤーはいない。
「ここは?」
「ああ! あのダークエルフ!」
いきなり大声を上げたゴッドバレーが指差す先に、褐色のエルフが立っていた。ダークエルフって響きだけで胸が躍るぜ。
「ククク。あのダークエルフが持っている剣、間違いなくエクスカリバーぞよぉ」
「僕たちを嵌めたやつだ」
「エクスカリバー!? 何のこったかは知らないけど、あれを倒さないと駄目みたいだぞ」
「殺ス」
美人からの暴言は無駄に効く。赤髪からの暴言はもっと効くけどよ。




