第131話
F&D、崩壊。
それは全プレイヤーを震撼させるのには充分すぎた。
街もフィールドも変わり果て、NPCの悲痛な声が聞こえてくる。痛々しい傷を負い、赤い血と汗と涙を流しながらも最期の力を振り絞り訴えた。
「世界を……救って……」
変わり果てた街で咆哮を上げるドラゴン――タラスク。6本の足で容赦なく人を踏み殺し、長く生えた牙を剥き出して人を食らう。
仲間のために立ち向かう者を毒の息で苦しめ、炎の糞で苦しめ。どんな攻撃も甲羅で防ぐ。そしてまた食らう。
「グゥゥ!!」
腹の底から威圧の声を発し誰も寄せ付けない。その姿は魔獣以外の何者でもない。
※ ※ ※
オフ会中の俺たちに届いたインフォメール。その内容に興奮と不安がない交ぜになる。
「タラスクを倒せということのようだな。このあいだのイベントを参考に対策を練った方がいいのだ」
「最近思うんだけどよ、かなり攻めた内容が続くなあって」
「ユーザーを飽きさせないための工夫ではないかね」
「あまり攻めすぎるのもどうかと思うけど。街が崩壊しているということは、武器や防具、アイテムの購入ができないってことだろう? イベント開始は明日からってのも急すぎる。最低でも1週間前には告知しとくべきだろう」
「シュガーの兄貴の言うことは一理あります。このあいだのイベントで装備を失ったプレイヤーは大勢いるはず。僕も弓を失いました」
「これから緊急メンテと緊急アップデートがあるみたい。ログインはできないということだーね。忙しない運営だ」
「ククク。なにやら一波乱ありそうぞよ」
「まあまあ。今は考えても仕方ないッスよ」
「神谷の言う通りかも。俺たちは楽しく攻略するだけだ」
結も赤井もいるんだ。そう簡単に苦戦なんかしてやるもんかよ!




