第122話
俺は目を疑った。その光景はあまりにも衝撃的すぎた。
「……始……起」
激しい運動をしたように息を切らし、とても疲れた顔を俺に向けている結。
「あたしは……あたしは」
身体をふらつかせながら俺に歩み寄り、静かに身体を預けてきた。
「結」
「……やってやったのだ。あたしは勝ったのだ」
「そ、そのようだなあ」
俺の視界に映る男たちは泣いていた。脚を引きずりながら必死に逃げていくさまは何とも言えない。
「なかなかにやるではないか。それでこそ私の選んだ人だ」
「誰が貴様に選ばれただと? 助けに入ってくれたのは感謝しよう。が、あんなに貴様が弱いとは思わなかったのだ」
なんで赤井がいるのかは置いておこう。結を偶然見かけて追ってみたら――とかだろうし。
「怪我はないのか?」
「このあたしに傷を付けられるやつなどそうはいない。もしものためにと護身術を会得しておいて正解だったのだ」
「あはは。なーるほど」
実質1人で男6人を負かせたのは護身術のお陰だけとは思えないけど、何はともあれ無事でよかったよ。
「それはそうと、貴様と一緒にいるのは誰だ。茶髪で始起を釣ろうとしておるのか」
「違う違う!? 今日のオフ会のメンバーだよ。ウォーターヒル。てるてる坊主の」
「ああ! てるてる坊主!」
「わっちはどういう覚え方をされているーの」
「オフ会だと!? そんなの聞いていない」
「貴様は誘っていないからな。貴様は芸能人。忙しいのが目に浮かぶ」
「今日はオフだ。私にもプライベートはある。オフ会に私も参加してやろう」
「結構なのだ。20歳が10代に付き合う必要はない」
「いや、参加してやろう! きっと盛り上がる!」
「無理に付き合わせるのは気の毒なのだ」
「なーに。遠慮することはない」
「しつこい。私は遠回しに帰れと言っているのだ」
「た、頼む……参加させて……くれ!」
赤井よ。あんたにプライドはないのかよ。




