第10話
なんてこったあ。どうしてこうなるんだ。俺はまったりしたいだけなのに! 今すぐログアウトしてやる!
「おい砂糖。貴様、ログアウトすればどうなるか分かっているな?」
刀を持って睨むなよ。本当に斬ってきそうでおっかない。
だいたい、俺は戦うだなんて、これっぽっちも言ってないぞ。今、ライオンみたいなモンスターと対峙していることが不本意だ。
「砂糖じゃない、シュガーだ。というか確信犯だろう」
「あたしが貴様をどう呼ぼうがあたしの勝手だ。お互いが分かればいいんじゃなかったか?」
「かわいくない。赤髪ポニテはかわいいのに」
「当たり前だ。このキャラにどれだけの時間を費やしたと――」
「――その話はもういい。それより今は戦闘中だ」
目の前のモンスターを少しは気にしたらどうなんだ。緊張感がまるでないぞ。恐怖心がないのか。ただのバカか。
「たかだか1体にギャーギャーウザい! あんなもの、ぶった斬ってしまえばいいだろ! それとも、貴様もあたしに斬られたいのか。とんだ変態だ。変態変態変態変態――」
「――口を動かす前に身体を動かせよ!」
このゲームに能力値はない。レベルそのものが存在しない。当然、経験値も存在しない。戦って得られるのは、ドロップされるアイテムだけ。
「それは貴様の方だ!」
戦いは好きじゃないんだがなあ。ログアウトしたいなー。




