話が違うじゃないか!
逃げて逃げて
走って走って
逃げて走って、転けて這いずって。
少しでもはやく、少しでも遠くへ
どれだけ俺は逃げただろう・・・。
気が付けば、いつの間にかあの兵士たちはいなかった。
周りは鬱蒼と茂る木々。
丈の長い草。
周囲の視界はない。
空を見上げればこの葉の間から若干の月の光が漏れる。
正直、どこをどう走ったか分からない。
「・・・」
ため息が漏れる。
静寂の森の中で俺のため息は人機は大きく聞こえた。
今の状況、悪夢なんじゃないだろうか
現実の俺は、今家の布団で両親の横に転がり
若干の寝苦しさを感じながら寝ているのではないだろうか。
「いつっ・・・」
だが、切りつけられた左腕は容赦なく、それが現実なのだと訴えてくる。
傷自体が浅かったのだろう
出血は既に止まっていた。
「なんなんだよ」
愚痴が漏れる。
「俺なんか間違った?なんでだよ・・・。」
全て順調だった。
前世でさんざん読みふけった知識を活かして。
生活は向上し、村は活気が満ち来年への希望に満ちていた。
去年より今年、今年より来年
どんどん豊かになって
すごい村になって
いつかは国に!
とかさ・・・。
小説の主人公たちがやったみたいにうまくいってたじゃないか。
それが・・・。
なんでだよ・・・。
たった一回だ
たった一回の戦争のせいで全部燃えた!全部なくなった!!
「みんな・・・死んだ」
俺一人じゃないか・・・。
だいたいなんだよあれ
こっちは石器装備で相手は青銅装備って
バカじゃないの
無理ゲーすぎだろ
しかも何?
こちとら収穫祭の準備で忙しいのに
いきなり連行されて強制戦闘イベントとか
ふざけんなよ・・・。
「こんなの・・・話が違うじゃないかっっ!!!!!」
「ふざけんなよ!戦闘あるならスキルとかチートくれよ!!!」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
夜の森に俺の雄叫びが響く
力の限り叫び声を上げ
怒りを
悲しみを
何もかも込めて吐き出すように
何度も何度も俺は叫び続けた。
一頻り叫び、疲れ果て
俺はその場でパタリとうつ伏せに倒れる。
もう疲れた。
ほんと疲れた・・・。
考えればここ数日まともに寝てない
体力の限界なんてとうに越していて・・・。
俺は意識を投げ捨てた。
【野生児転生。話が違うじゃないですか!】
#転生したっぽい冒頭へ進む
ここまでで
長すぎるプロローグとさせていただきます。
次回より野生児本編を開始します
ありがとうございましたヽ(´▽`)/