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野生児転生。話が違うじゃないですか!  作者: ふゆよる
【第一章】 内政チート
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幼児期9

はぁっはぁっはぁっ

息をつく暇も無く俺は、俺たちは走っていた。

足を縺れたら終わりだ。

躓いたら終わりだ。

足を止めたら終わりだ。

諦めたら終わりだ。

振り返ったら終わりだ。

だって、さっきからずっと聞こえてる。


断末魔が・・・。

すぐそばで、聞こえる。







それは戦と呼べたのだろうか。

勝敗は始まる前に決まっていたんだ。

俺たちテルベリア軍が突撃した先には、赤い鎧を纏い手に青銅武具を掲げ

こちらの数倍の兵達が雪崩のように攻めてきた。

対して此方は石器装備。

皮鎧なんて無い、いつもの衣服だ。

一瞬で、一目見た瞬間戦意は砕かれた。

赤黒い津波の前に棒立ちになったテルベリア軍の先陣は一気に飲み込まれた。

遠目に馬から引きずり下ろされる王の姿を見て俺の頭は真っ白のまま・・・。

はっと気がつくと手を握られて走っていた。


「ウィル!確りしろ!」


「・・・っ!」


「みんな!逃げるぞ!急げ!」


「あ、ああ!」


手を引く父は弓を捨て、槍だけを手に俺を引っ張って走る。

俺も父を見て矢筒を投げ捨て足を動かす。

村長の声に我を取り戻した面々は一気にその場を離脱しようと駆けた。


「大村方面は行くな!南から村に帰る!」


「わ、わか」


「おう!」


村長の声に後ろを咄嗟に振り返る

大村方面へ足を向けようとした、数人が方向をかえた

その向こうでは王であったろう者の首を槍に掲げ馬を進めるロマリア軍が見えた。

なんだこれ

ロマリアの兵達が

赤黒い津波が人々を飲み込み大村へ迫る

なんだこれ

俺たちは悲鳴と怒号轟く戦場を背にひたすら逃げた

なんだこれ・・・。



走り続けて逃げ続けた。

もう体力なんて無い。

途中で体力の無い子供はその親が抱えて走っていた。

俺たちは力尽きてその場に座り込んだ。

空はいつの間にか夕焼けに染まっている。

いったい何時間走ったろう・・・。

呼吸が落ち着かない。


「ずいぶんと距離を稼げたとは思うが・・・っまだ安心できない・・・はぁっ!皆、夜になるまでもう少し走ってくれ・・・!」


「わ、わかった・・・村長」


「・・・っはあっはぁっ!了解」


「よぉうし・・・行こう!・・・っ!!!!」


「「「!!!」」」


息を整え立ち上がったノヴェルのおじさん

でも、そのままうつぶせに倒れたおじさん

なんで、背中に矢が刺さってるのさ・・・背中真っ赤じゃん・・・。

皆が衝撃に息を呑んだすぐ後

ひゅんひゅんと風を切る音がいくつも聞こえて、カステル兄さんが頭に棒をはやして倒れた。


「う、うわああああああああああああああああ!!!!」


目の前の衝撃的な映像にパニックを起こした俺は悲鳴をあげる

そのすぐ後にはまた大きな手に引かれて足を動かした。

ヒュンヒュンヒュン

風きり音が聞こえる。

ヒュン ヒュン

村長さんのくぐもった声が聞こえる。

ヒュン ヒュン 

ついさっき、ペルラドおじさんの声がした。

ヒュン

その前はマケルドおじさんの声がした。

同じくらいに、ホルネス君の声が聞こえた。


断末魔が・・・

すぐ傍で聞こえる。



気がつけば、父さんと二人だけで息を殺して背の高い草の陰にいた。

空には星が瞬いて月が大地を照らしてる。

もう、どれくらい瞬きをしてないだろう。

目は乾ききって痛いのに、瞬きの仕方が忘れてしまったのか分からない。

声を押し殺して草の陰から様子を探る。

追っては・・・いない。

虫の声以外に何も聞こえない。


「お、おとうさ・・・っ」


「・・・ウィル。いいか?よ~くきけ?今は月で明るいがもうすぐ雲に隠れる」


「うん・・・」


「そしたら、一気にこの草地を駆けて森を目指す」


「うん・・・森に入ったら隠れながら村に帰る?」


「さすがウィル。うちの子は天才だ。・・・よし」


「・・・」


「いまだ!行くぞ!!」


ダっと、草影から飛び出した俺と父さんは一気に走る。

月が雲に隠れている間により遠くへ

一心不乱に駆け抜ける

視界の先に森が照らし出される

もう少しだ!


刹那、トストスっという音とともに俺は背後から突き飛ばされた。


「え?」


背の高い草に倒れこむ俺が目にしたのは

背中に2本の矢を受けて倒れこむ父の姿だった。


「あちゃ~・・・ウィル・・・大丈夫・・・か?」


「・・・」


「怪我してないか?」


「・・・っ!と」


「し~っ。・・・いいかいウィル?もうすぐ・・・森だ。草に隠れながら行くんだ」


「・・・」


「大丈夫。・・・俺の息子は・・・天才だから・・・」


「・・・」


少し、遠くで馬の足音と人の声が聞こえる


「・・・大丈夫。父さん・・・にまかせな?」


「・・・っ!っ!」


「お母さんを頼んだ・・・・っ!!!うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


倒れこんでいた父さんは雄たけびを上げ立ち上がり、黒曜石の槍を振りまわしながら走っていく。


「っ!っう!!」


俺は、父さんの声を背に森へと駆けた


あれほど乾いていたかった目は


涙でぬれて視界がぼやけていた。







ありがとうございました♪(´ε` )

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