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四十畳ダンジョン物語  作者: @さう
四十畳ダンジョン物語 第一章 王都ダンジョン
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20 餌食達


 20 餌食達


 さて、朝、太陽が昇り切った午前、ダンジョンを開いた。

 早速、C級冒険者コンビが入って来る。


 今回は、第一階層のミニ草原にもモンスターを配置してあった。

 毒蛇復活!

 20匹ほど放した。前回とは違う種類の蛇で、毒は前の種類ほど強くは無いが、ミニ草原の草の色に近い緑色で、体長も小さめなのを選んだ。

 長さをひざ下ぐらいに調整した草にまみれてほとんど見えない。


 さて、この冒険者達、情報を得ていたのか、第一階層を何の警戒もせずに通り抜けようとした。

(よっしゃあああ! 一番乗りだぜ!)

(ミスリルあんだろ? マジでミスリルあんだよな?)

 テンションたけぇな。


 で、さっそく毒蛇に噛まれていた。

 鎧というのは考え物で、蛇が足にまとわりついていても気付かなかったのだ。足元をちゃんと見れば、足に蛇がまとわりついているのが見えたはずなのだが、

 脛当ての隙間に入り込み、冒険者の足を噛んだ。

(って! なんだ?)

(おいどうした!? って、おい! これ毒蛇じゃねぇか! いてっ!? こっちもかよ!)

 騒ぐのも大声だった。何日キャンプしてたか知らんが、疲れ知らずだな。

(くそっ! くそっ!)

 蛇が結構な数這い上がっており、鎧の隙間という隙間に入って、冒険者を噛みまくっている。

 鎧の隙間に入り込まれているため、なかなか引き摺りだす事も払い落す事もできない。

(うおっ?)

 冒険者がこけた。草原の中に倒れ、さらに毒蛇が絡み付いていく。

 開店前に、思い付きで設置したトラップだった。

 わざわざ一階層まで俺自身が上がり、色んなところの草を縛って来た。

 足を引っ掛けるトラップだ。

 眠らせてあるとはいえ、くさむらの中を覗くと毒蛇がいっぱいいて怖かった。 


 さて、冒険者達は、毒で体を痙攣させながら、ダンジョンの入り口へ這って行く。

 体にはまだ蛇がまとわり付いている。

「フィレ、ダンジョンモンスターって、外に出たらどうなるの?」

『どうもなりません』

「え? そのまま出ていけるの?」

『はい。しかし現在、マスターはその許可を出していません』

 毒蛇達は、冒険者2人が入り口の階段に入ったところで体から離れ、ミニ草原に戻って行った。

 あの2人はいったい何しに来たんだ?

 魔力もお金も装備も落としていかねぇ。いや、さっき剣と盾落としていったな。

「フィレ、装備回収」

『了解しました』

 冒険者達が外に出たのとほぼ同時に、一時的にダンジョンが閉鎖され、ミニ草原の中に落ちていた剣2つ、盾2つが沈んでいく。

 がらんと音を立てて、マスタールームにそれが吐き出されると、再びダンジョンが解放される。


 俺が、入り口から外に出る許可を出したらモンスターは出ていけるんだな。

 というか、俺自身普通に外に出ていけるし。

 てことは、王都のど真ん中に開いたこのダンジョンは、とんでもなく危ないんじゃないのか?

 DPが少ないので現状何もできないが、強力なモンスターを大量に生み出せたら、それだけで王都を陥落させられる可能性がある。

 冒険者ギルドも、王都の偉い人達も、それには多分気付いているだろう。

 でもまぁ、この程度の規模だもんな……。

 

 程よく楽しんで程よく落として帰っていただいて、それでもまた来たくなる。

 そんなダンジョンを目指します。


 上限2人だし、カップルでも来れる様なダンジョンにできないかな。

 彼氏が魔法使いとかなら、いいかっこしーで、魔法連発してくれるかもしれん。おいしい。


 そんな事を考えているいうちに、次のお客様が入って来た。

 D級2人だった。

(毒蛇が……いるな)

 さっきの2人の惨状を見たのだろう。

 警戒しながら進んでいる。

 足をひっかけて転んだりもしたのだが、素早く立ち上がって毒蛇を払っていた。

 やっぱりちゃんと警戒していれば躱せる程度の罠なのだ。

 毒蛇は鎧の上からは噛みつけない。隙間に入り込む必要があるし、鎧で覆われていない部分はまとわりつけばわかる。

 この毒蛇はどうもすぐに噛みつくタイプではなく、いったん獲物に絡み付いてから、確実に仕留めるタイプらしい。

 なので体に付いたらすぐに払えば大丈夫だ。

 このD級2人は、ミニ草原を抜け、階段を降りて行った。

「焦った。まさかの毒蛇無双かとおもった。やっぱ警戒してればちゃんと抜けられるじゃねぇか」

 なお、フィレに確認してみると、あの毒蛇達はいまだに一匹も減ってないらしい。

 あんなに叩かれたりしてたのに、結構タフだなおい。

 剣で払われたりもしていたが、体が軽いからなのか、上手く切れなかったようだ。

 これはこれで使えるかもしれない。


 そのD級冒険者達は、第二階層のゴブリンの餌になった。

 いつものハメ殺しだ。

 第二階層、第三階層はゴブリンを詰めてある。

 第二階層は多少減ってしまったが、それぞれ200匹ずつ用意してあった。

 入り口付近からは分からないが、迷宮に入ってちょっと角を曲がるとぎゅうぎゅう肉詰めのゴブリン達がお出迎えだ。

 これが皆やられたら、今日のダンジョン営業は終了。


 がらんがらんと音がして、冒険者の装備がマスタールームに落ちた。

 やっぱりゴブリンにやられた冒険者の装備は酷い状態だ。

 まぁ、どうせ鉄くず送りだからいいんだけど。


 3組目が入って来る。C級冒険者とD級冒険者。

 割と上手く連携し、二階層半ばまで進んだが、ゴブリンの餌になった。


 ・


 さて、問題は4組目だった。

 2人とも剣士の様だ。軽装の鎧に、細身の剣を持っている。あれは多分レイピアとか、そういうものだろう。迷宮では刺して引いて刺して引いての攻撃は有効だ。懐に潜り込まれると危ないが、腰にはナイフも下げていたので、対応は可能だろう。

 だが、明らかに体の線が細く、ゴブリンの猛攻に耐えられそうにない。こいつらも餌になるだろう。

 だが、

(ホントに毒蛇がいるわね)

(草と同化して分かり難い。あれ? あそこ、草が縛ってあるわよ)

(あ、ほんとだ。地味だけど、この毒蛇の海じゃ効果的なトラップね)

「は? こいつら……おい! フィレ、こいつら女か?」

『肯定します』


 女冒険者。

 この世界に来た時はいるんじゃないかと思っていた。

 だが、ダンジョンに来るヤツみんな男だった。魔法使いならもしかして思っていたが、あの2人も男だった。

 やはり危険な仕事だし、女に務まるものでもないのかと諦めていた。

 だが目の前にいる。本物の女冒険者が。


 まだ4組目だ。キャンプ組の範疇だろ! 女の子が何やってるの!


 男女差別と言われてもいい。

 さすがに女がゴブリンに食われるのは見たくない。


「くっそ! フィレ、ダンジョンからあいつらを放り出す事はできないか?」

『不可能です』

「じゃあ、二階層への立ち入りを禁止できないか?」

『不可能です』

 くっそ。どうすればいい。

 2人は毒蛇をものともせず、第二階層への階段に辿りつく。

 第二階層に降りてしまう。どうすればいいんだ。


 結局、一番単純で、やってはいけない方法を俺はとった。

 迷宮のゴブリン達を起こさなかった。


(うげっ……こっちにもゴブリンが)

(なんなんだこのダンジョンは)

 2人の女冒険者は小声で話をしていた。だが、マスタールームでは音量レベルを上げて聞いてるので、筒抜けだ。突然叫ばれたりするとうるさいかもしれないが。


 第二階層に降りて、迷宮に入り、すぐに曲がったところで大量のゴブリンが眠っているのを発見した。通路にぎっちりと詰まり、折り重なって眠っている。

 刺激して起こしてしまわないように、来た道を戻り、別の道に入るとまた同じ光景。

 どの通路に入っても、緑色の肉が詰まっていた。

(報告通りだけど……)

(これじゃ進めないわね)

(あのゴブリン……攻撃してみる?)

(無理よ。あんな数をこんな狭い場所でなんて)

 2人は剣士で、剣を構えて迷宮を進んでいた。わずかな探索だったが、その間にこの迷宮との相性の悪さを感じた様だ。

(どうしよう……)

(呪符か毒粉か、準備が必要だわ。今日は帰りましょう)

 2人は第二階層から上がり、第一階層で毒蛇を皆殺しにして、魔石を拾い、帰っていった。


「あぶなかった……」

 焦った。

 実はあのゴブリン達は、俺が起こすまで起きない。つまり、あのまま2人が調子にのって攻撃していたら、全滅させられていたかもしれない。

 今回は特に被害も無く……いや、毒蛇全部死んだか。

 今回は切り抜けられたが、次はどうなるか分からない。やはり、楽しんでから帰っていただく様な仕組みが必要だ。


 2人の女冒険者が出たすぐ後に、次の冒険者が入って来た。

 C級冒険者2人。さっきと同じレベルだが、こちらは男2人だ。少し安心した。

 ダンジョンには死体も装備も落ちてないし、ゴブリンもまだ残っているので、開けっ放しにしていた。

(あいつら無傷で出て来やがったな)

(対した事ねーんだろ。噂なんてアテにならねぇもんさ)

(ミスリルはギルド情報だからな。楽しみだぜ)

(『桜花』の2人、何も情報くれやがらねぇし。もしかしてあの2人がミスリル取っちまったんじゃねぇのか? 無傷だったし)

(女冒険者組合のくせに偉そうに。だがまぁ、あの2人は面だけはいいよな)

(確かジェイナは胸もあったぜ。『五万両』であいつらが飲んでるの見た)

(まじかよ。せめてこのダンジョンの上限人数がもう少し多ければなぁ。前の時みてぇに後から付いて行ってやっちまうんだが)

(『山吹ダンジョン』の時みてぇにか? あの時はお前がやる前にモンスター来ちまったじゃねぇか)

(だからだよ! 俺次最初な!)

 こいつらはクズだな。

 まぁ、餌に善悪もあるまい。遺伝子組み換え大豆がどうとかも別に気にした事ないし。

 それよりも、貴重な情報を得た。

 女冒険者組合というものがあり、その名称は『桜花』というらしい。冒険者達からの風当たりは強い様だ。

 だいぶ日本語名だが、もう自分の喋っている言葉が何なのかも分からない。


 このクズ2人には、しっかりダンジョンの餌食になってもらった。

 その後、2組の冒険者が餌食になったが、このクズ2人の所持金が一番多かった。

 2人で金貨5枚、銀貨17枚、銅貨30枚。鉄貨幣……棒切れがいっぱい。

 1人で革袋2つも持っていた。一つはカモフラージュだろう。1つは銅貨と鉄貨だけだった。

 所持金だけならA級冒険者に匹敵する。あの口ぶりからすると、他にも悪い事してるんだろう。


 最後の1組はミスリル剣の湖まで行ったが、2人とも泳げなくて、湖に入ったところですぐにスライムに気付き、引き上げていった。一応、水の中で見えないスライムに襲われるのが危険だと分かるぐらいには賢いパーティーだった。

 この組は新たに用意したミスリルナイフ2つをゲットしていたので、諦めるのも早かった。

 ここに来て、やっと型通りにいった。


 モンスターも切れたので、ダンジョンを閉める。

 もしかすると、外の人々は、ミスリルのナイフをとったらダンジョンが閉まると勘違いしているんじゃないだろうか。


 閉店後の後始末。

 冒険者の装備を、マイカートに放り込んでいく。

 お金をそれぞれ分ける。この前から鉄貨も集めている。

 ダミー1、ダミー2、本命1の革袋にそれぞれお金を定額いれておく。


 まだ午後だった。

 ちょっと地上に顔だしておこうか。マイカートも、もう幾つか作っておきたかった。ダンジョンが忙しくなれば毎日鍛冶屋に持ち込むのも難しくなるだろう。目立つし。

 いくつかマイカートを作っておいて、それに装備を詰め、エレベーター前に置いておいて、人目に付かなさそうな時にまとめてもっていこう。

 これも、このマイカートが普及したり、スラムの通りを行き交う人が増えれば多少ごまかしは効く様になるだろう。


 ・


 地上に出て、セバスさんの所へ行く。マイカに教えてもらった。もうちょっと他人の個人情報に気を使った方がいいと思う。

 セバスさんは団体での作業の時には監督役で出勤しているが、普段は内職をしているらしい。家の中には大量の編みカゴが積まれてあった。

 スラムのお年寄りや、働けない女性の主な仕事はこういった内職関係だ。

「こんにちは」

「おお。リブロース殿。いかがなされましたかな?」

「ちょっと冒険者達と話をしたいのですが」

「わかりました。廃教会の方へ来るように伝えておきましょう」

「おねがいします。……ところでこれは竹ですか?」

「そうです。それが何か?」

 竹は良い素材だ。そういえばスラム冒険者達も弓矢を装備していた。アレは竹だったんだろうか。


 鍛冶屋に寄って、注文をした後、廃教会の周りを少し運動しながら散策した。

 と言っても、墓地以外は特に何もない。

 あの崩れた家々も別に所有者は居ないという事なので、あの辺まで敷地を広げようと思う。とりあえず柵で囲ってしまえばいいだろうか。

 この前の話では、スラムで使っている薪の多くも、あのスラム冒険者達が外で木を切り倒して持ってきたものらしい。

 板に加工したものは、スラムでも使うが主に市街でお金に換え、加工時に出た廃材なんかを薪に使っている。

 じゃあ、木の注文も出せるのだろうか。柵のために注文しておこう。


 夕方になり、スラム冒険者リーダーが現れた。一人だけだ。他の皆はスラムの家々を回っているのだろう。

「おう。リブロース。用事ってのは何だ?」

「どうも。ちょっと冒険者の話を聞きたくて」

「なんだ? リブロース、冒険者になりてぇのか? やめとけ。お前じゃ見習いもできねぇぞ」

 俺は現代日本でさえ平均身長以下だった。この王都には、俺よりデカい奴がゴロゴロいる。言うならば、そもそもサエさんも俺よりデカい。セバスさんもだ。元使用人達の中には俺と同じぐらいの身長の人もいたが、それより低い人は居ない。

 この大きな人達が、持つのをメンドクサイというような荷物を俺が持つのは無理だろう。

「いえ。違います。『桜花』という団体をご存知ですか?」

「ああ。女冒険者組合の事だろ?」

「女性ばかりなんですか?」

「そうだ。というか、女冒険者は貴族以外だとほとんど全員入ってるな。なんというか、まぁ、女冒険者ってのは風当たりが強いからな」

「その『桜花』の誰かと話をする事はできますか?」

「なんだ? あいつら、ギルドから以外の依頼はあまり受けねぇんだがな。でも、それならスラムにも2人いるぞ。呼んでくるか?」

「え? いるんですか?」

「ああ。まぁ、ここは色んな人生の吹き溜まりだからな。色んな奴がいるさ。ただ、狩猟は俺達男の仕事だ。下手に女冒険者を巻き込んだら、あいつらも『桜花』でやり難くなるからな」

 組合のメンバーが、慈善事業をしていたら、他のメンバーは考えてしまうだろう。自分たちも参加すべきかどうか。スラムの事なのに、参加させてしまうのは悪いし、また、組合をないがしろにしていると怒る人もいるかもしれない。

 そういったごたごたを避けるためだという。

「その2人と話をさせて下さい。お願いします」

「わかった伝えておく」


 さて、リーダーはやたら仕事が早く、そして女冒険者達は暇だったのか。

 サエさんとマイカのところにお邪魔して、暗くなったから廃教会に帰って来ると、月明りの中、廃教会前に2つの人影があった。

「貴様がリブロースか。私たちに何の用だ」

 仕事早すぎる。


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