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四十畳ダンジョン物語  作者: @さう
四十畳ダンジョン物語 第一章 王都ダンジョン
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09 迷宮

 09 迷宮


 魔法使い対策に考えたのは迷宮だった。

 通路が狭すぎてはいけない。通れない程狭いと、入る者が居なくなる。

 逆に広すぎてもいけない。並んで2人が歩けてしまうと、こちらが不利になる。

 理想としては、人一人は余裕で通れるが、2人は無理、それぐらいの大きさだ。

 40畳の中にそれがどの程度できるか。どれだけこねくり回してもあまり時間稼ぎにはならないだろう。

 俺は、距離と時間を稼ぐよりも別の方法を考えている。


 たっぷり半日かけて見取り図を作った。

 そして実行。

 ダンジョンがわずかに振動し、第二階層に迷宮が出現した。

 なお、うちのダンジョンのサイズでの迷宮化は100DPだそうだ。ゴブリン10体分。高いのか安いのかよくわからん。

 ゴブリンも生産し、眠らせる。

 人間がいて、階層移動を許可しておけば平気だが、今現在人間が居ないので共食いで勝手に死んでしまう。


 次の解禁日は明日。

 またしても賭けの部分が大きいが、このままではダメだ。

 まぁ、死んでもいいかとは思う。

 今まで殺して来たんだし、自分が殺されるのだけ嫌だというのはおかしいと思う。

 だが、徹底的に抵抗はする。食うか食われるかだ。


 ・


 次の日、早朝、王都ダンジョンは再び開いた。

 守備についていた衛兵から冒険者ギルドへ連絡が行き、すぐに冒険者が集まって来た。

 上限2人の小さなダンジョンだが、今まで生きて帰ってきたのはB級の魔法使いが2人。それ以外の冒険者達は皆帰って来ない。

 だが、2人だけでも帰ってきたなら、俺にもできると粋がる冒険者は多い。

 早速駆けつけたC級冒険者達が入っていった。

 上限2人に達し、一時的にダンジョンの入り口が閉まったが、またすぐに開いた。

 2人は帰ってこなかった。


 上限数2人というダンジョンはかなり珍しい。普通は4人パーティーが20組入っても平気だ。

 この様に、上限に達してダンジョンの入り口が一時閉じるなどという現象もほとんど報告が無いぐらい、普通のダンジョンというものは上限数が高い。

 この上限数は、ダンジョンの規模によるものとされている。

 食いきれない量の食べ物が口の中に入るのを防ぐため、と、比喩されている。

 上限2人という事からも、このダンジョンが小規模であるという事がわかる。

 実際、帰って来た魔法使い2人の報告によれば、二階層まではワンフロアで、規模もかなり小さかったそうだ。

 最初の冒険者の生き残りがなんとか気を持ち直し、ゴブリンにやられたと語った時には、A級冒険者がゴブリンなどに、そんなバカなと誰もが思った。

 だが、その証言を元に、ギルドからの任務で赴いたB級冒険者の魔法使い2人の報告では1階層まるごとゴブリンが詰まっていたらしい。

 部屋一面ゴブリンだったらしい。

 その場では魔法で事なきを得たが、あの中に剣士や戦士が突っ込んでいってはまとわりつかれて何もできないだろうという事だった。

 フロア自体も狭いので、同士討ちの危険があり、お互い距離を取らざるをえない。そうなれば、個々全方位からゴブリンに取りつかれてどうしようもなくなる。

 何度も何度も、どうして入り口で戦わなかったのか、どうして壁を背に戦わなかったのかと繰り返していた。

 分からないでもない。いくら数が多くても、ゴブリンだ。警戒などしてなかったのだろう。


 今日もまた、命知らずの冒険者があのダンジョンに向かった。

 すでに情報の開示はしてある。フロアが狭い事、第二階層はゴブリンハウスである事。

 だが、どれだけの冒険者がその危険性に気付いたかは疑問だ。

 みな口々に、A級冒険者はゴブリンにやられた、たいした事ねぇ連中だった、と嘲笑している。

 ギルド職員のほとんども、この危険性が良くわかっていない。


 よりにもよって、この王都にダンジョンができるとは。

 それも、こんな異常性の高いダンジョンだとは。


 あのB級冒険者の魔法使い2人に、再び調査依頼を出した。

 ダンジョンが閉じて、再び開く時には、ダンジョンの構造が変化している事があるのだという。

 そもそも、多くのダンジョンは上限数が王都ダンジョンよりも遥かに高く、絶え間なく人が出入りしており、ダンジョンが閉じる暇は無いのだが。

 このダンジョンは何かおかしい。


 ・


 解禁してから、すぐにC級冒険者達が入って来た。

 迷宮化した第三階層で、

(報告と違う)

(どうせあの魔法使いどもも報酬だけもらって後は何にもしなかったんだろう)

(臆病者が)

 などと言ってげひゃげひゃ笑う下品な連中で、あっさりゴブリンの餌になった。


 ゴブリンが使えるというのは十分に分かったが、しかし、あんな馬鹿どもでも、4人集まれば、500万DPに相当するという。それもゴブリンアタックでなんとかなりそうだが、魔法使いがパーティーに居たらアウトだ。

 そう、魔法使い。

 今回はそのための対策をしたんだ。

 魔法使い。魔法使いはまだか。


 次の侵入者も、C級冒険者2人だった。

 恐る恐る入って来た。多少は頭があるようだ。

 だが、迷宮でゴブリンに遭遇し、やはり餌となった。


 迷宮を開放してからしばらくC級とD級冒険者が侵入しては食われ、侵入しては食われという作業が続いた。


 午後にさしかかり、やっと来た。

 あの時の2人だ。

 手が震えた。あの時、そのままマスタールームまで一直線に侵入されて殺される恐れがあったのだ。やはり怖い。

 だが、一応、俺に思いつく事、今できる事はやった。

 後は野となれ山となれだ。


 魔法使い2人は、前回と同じ様に第一階層ミニ草原を抜け、第二階層に入る。

 入り口で盾を構えていたが、迷宮化している事に驚き、

(迷宮が変化している。帰るか?)

(いや、もう少し見ていこう)

 と、話し、警戒しながら迷宮へと侵入していった。

 冷や汗が吹き出た。

 そうか、変化だけ見て帰るという手もあったのか。そうなれば対策を取られていたかもしれない。危なかった。これで一つ幸運を使った。なんとかまだ幸運が残ってくれていればいいが。


 魔法使いが角を曲がったところで、眠らせてあったゴブリン達を起こす。

 侵入者の臭いを感知して、すぐにゴブリン達が襲い掛かった。

 まず飛びかかったゴブリンを、杖で殴打して殺す。魔石が床に転がったが、次々に襲い掛かるゴブリンに、盾の魔法使いが、またあの盾魔法(仮)でバリアの様なものを張り、内側でもう一人の魔法使いがごにょごにょとやっている。


 さぁ、ここからが勝負だ。

 俺は一切れの干し肉を口の中に放り込んだ。

 持久戦になるぞ。

 

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