夕食
両手を上げて 喜ぶ彼女の 姿を見て
まぁ いいか……
そう 思ったのだった
日曜の 夕方だけあって 大勢の人で
スーパーは 賑わっていた
彼女は 店に着くと とても珍しそうに
辺りをキョロキョロと 見渡しながら
人混みの中を 歩き始めた
何度も 買い物に来てる俺にとっては
見飽きた 店内なんだけど 彼女の瞳には
きっと その全てが とても新鮮に
映ってるのだろう そんな事を考えながら
彼女を ボ〜ッと 見ていると
突然 俺の方に 小走りで 駆け寄って来て
目の前で 立ち止まり 俺の顔を見上げると
「ねぇ 夕食は 何が食べたい?」
「え?」「 う〜ん」「カ カレーかな?」
別に カレーが食べたかった訳じゃあ
ないが 咄嗟に出た言葉が そうだった
「よ〜し じゃあ 野菜売り場に行くわよ」
俺の手を取ると 人混みをかき分けながら
颯爽と 店内を 歩き始めた
突然 手を握られて ドクッと胸が 高鳴った
だが 彼女は そんな俺の事など お構い無しに
手を握ったまま 素知らぬ顔で
食材売り場を 再び 闊歩し始めたのです
そして 買い物を終えて 店を出る頃には
陽は沈み 外は暗くなり始めていた
店からの帰り道 彼女は 歩き疲れたのか
足取りは重く 俺もそのペースに合わせ歩いた
でもどうして 彼女は家出をしたんだろう
いや そもそも 家出なのか?
そう言えば 今戻っても また母親に
心配をかけるだけだからって 言ってたな
あれは一体 どう言う意味なんだ?
そんな事を 俯き 考えながら歩いてると
突然 彼女が 口を開いた
「今日は有難う とても 楽しかった」
「い いや 夕食の買い物も あったから」
「うん でも ありがとね」
微笑んだ 彼女を見て どうしてもっと
気の利いたセリフを 言えないんだ
俺は 悔やんだ・・・
家に帰り 彼女の作った カレーを頬張った
いつも食べるレトルトとは 一味違い
とても 美味しかった
あっという間に 平らげて 顔を上げると
笑いながら 俺を見ている彼女と目が合い
それに慌てた俺は 咄嗟に口を開いていた
「お 美味しかったよ 凄く」
すると 少し驚いた顔をして 立ち上がると
「有難う」
そう ニッコリ笑って 食器を片付け始めた
その夜 ベッドは 勿論 彼女に使ってもらい
俺はソファーに 横になった
だが 隣のベッドに居る 彼女の息遣いが
気になって 寝付けずに居ると 彼女が呟いた
「ゴメンなさいね ソファーで 寝かせて
迷惑かけちゃって」
「い いや 大丈夫だよ 何時も ゲームしてたら
そのまま ソファーで 寝たりするからさ
慣れてるんだよ!」
「プッ それも どうかと思うわよ フフフ」
そう言って 彼女は笑い出した
「そうだよね 変だよな」
そんな話しをしていると 俺は 何時の間にか
眠りに就いていたのだった