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  作者: シンヤン
2/6

突然の出来事

「わ・・た・し 窓・から・あ・の子を・・」


「伊月!伊月!」


母の呼ぶ声が 次第に聞こえなくなり


私は 静かに 瞳を閉じた・・・





そして 十数年の月日が流れた




小さな町工場に務める 俺の勤務時間は


毎日が同じ時間に始まり そして終わるのだが


今日は珍しく残業で 帰るのが何時もより


遅くなった


まぁ突然の残業で 帰りが遅くなったとしても


アパートに一人暮らしの俺には 待つ人が


居る訳も無く・・・


「ハァ〜」


歩きながら 大きな溜息が零れた




そして 俺が幼い頃 よく遊んだ公園の前を


通りかかった時 昔の事を思い出していた


それは あの向かいの家の窓から


公園を見ていた あの子の事だった


あの頃 俺は あの子の視線が 気になっていた




今日も見てる!


そう思うと あの子の目に映る様に


俺は何時も 元気に走り回った




そんなある日 俺は話しかけようと 心に決め


公園へと 勇み足で向かった


だが その日は 窓が閉ざされていて


あの子の姿は見えなかった





その時は 家族で何処かに出掛けていて


明日になったら また 会えるだろうと


その程度でしか 考えてなかった




だけど 翌日 翌々日 そして 三日 四日と


月日が流れても 窓が開く事は無かった・・・





それから 俺はこの公園で遊ばなくなった


もう この町には居ないのだろうか?


もう 二度と会う事は無いのだろうか?




そしてハッと 我にかえった


何故今頃 あの子の事を思い出したのだろう?


もう 忘れていた筈なのに……



その時 冷たい風が頬を通り抜けて


俺は体を ブルっと震わせ 再び 歩き出した


「やっぱ まだ寒いな」


白い息を吐いた時 公園から 声が聞こえた


こんな夜遅くに まだ誰か遊んでるのか?


いやいや さっき見た時は誰も居なかった筈だ




不思議に思い 公園を覗き込むと


年の頃は俺と同い年だろうか?


狭い公園を 一人元気に走り回る


女の子の姿があった




腰まで届きそうな綺麗な黒髪に 真っ白な肌


そして今にも折れてしまいそうな


華奢な腕を 懸命に前後に振りながら


走るその姿に 俺は目を奪われて 暫くの間


その場に 立ち尽くした・・・




そしてハッと気が付くと 何時の間にか俺は


公園の中で立っていた


え? どうして?中に居るんだ?


俺が不思議そうに立ってると 女の子が


こちらに気付き 黒髪をなびかせながら


小走りで 近付いて来ると ニッコリ笑い


白く細い腕を 俺の方に差し出しながら言った



「ねぇ 一緒に遊ばない?」



突然すぎる出来事に 俺は戸惑い 唖然と


その場に立ち尽くしたのでした































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