深い眠り
私は幼い頃 現代医学では解明出来ない
病気にかかった
そして そんな私の居場所が
この 冷たいベッドの上だった・・・
そんな私にも 楽しみにしてる事があった
それは この窓から公園で 楽しそうに遊ぶ
男の子を 見る事だった
何時もその男の子は 陽の光の下で
楽しそうに笑いながら 皆の先頭を元気に
走り回っていた
その姿が 私にはとても眩しかった
でも 直にその姿を見れなくなってしまう
頭痛が酷くて 体が重く とても 息苦しい
今日か明日には 高熱が出るだろう・・・
そうなると 一ヶ月は 熱が下がらない
一ヶ月は 窓から公園を見られない
仕方ない事だと 分っていた
それなのに 私の目からは涙が零れ落ちていた
私は溢れた涙を拭いながら 心で叫んだ
どうして私は 産まれてきたんだろう?
何の為に 私は 産まれてきたんだろう?
ベッドから 降りる事さえ出来ないのに・・・
一体 何の為に・・・ 私は・・・
それから間も無くして 窓は閉ざされて
私はベッドの上で 高熱に唸された
額からは 汗が滲み出して 喉が 激しく痛み
息をするのが やっとだった
そして 思った
どうして こんな苦しい思いをしてまで
私は 生きなきゃいけないの?
生きてたって ベッドから出る事は出来ない
女手一つで 私を育ててくれた母さんに
迷惑をかけるだけ それなら
もういっそのこと 死にたい・・・と
そんな私の思いとは 裏腹に 私は今回も
生き永らえた
そして 一ヶ月が過ぎて 熱が下がり
目を覚ました時 やつれた母の顔が映った
「伊月 大丈夫?」
やつれた母の顔を見て 苦しんでるのは
私だけじゃない そう思うった時
涙が コメカミを伝い落ちて 枕に染み込んだ
「どうしたの 伊月? どこか痛むの?」
違う 違うの そうじゃないの
昔 あんなに綺麗だったのに 私のせいで
こんなに白髪も増えて 頬も痩けて……
「ゴメンね母さん 私のせいで」
「何言ってるの 私の大事な一人娘でしょ」
涙声で 震えながら 私を抱き締めてくれた
母の その腕の中は 暖かく 優しかった
「ねぇ 母さん あの子は今日も元気に 公園を
走り回ってるのかな?」
「そうね きっと元気に走り回ってるわよ」
「そうだよね〜 いいな〜」
「伊月も早く元気になって あの子と一緒に
公園で遊べる様に なろうね」
「うん そうなる日が 来るといいな〜」
「大丈夫よ 直ぐ元気になるわよ」
「そうだよね」
でもね 母さん それが無理だって事は
私が一番 知ってるんだよ?
「伊月 ゼリー食べる?伊月が 食べたいって
言ってた ゼリー買ってきたのよ〜」
そう言った 母さんの顔が 霞んで見えた
「伊月? どうしたの?伊月!」
「わ・・た・し 窓・から・あ・の子を・・」
「伊月!伊月!」
母の呼ぶ声が 次第に聞こえなくなり
私は 静かに 瞳を閉じた・・・