修正テープを使う
授業はあと四分で終わる。
「酸素と二酸化炭素は絶対に覚えろ。テストに出すぞ」
と先生が黒板に『酸素』と『二酸化炭素』という文字をわずか五秒ほどで書いた。書くのが早いな……。すぐに黒板の文字が消えていくので急いでノートに書き写さないといけない。
あっ!『二酸化炭素』の『炭』を『岸』と書き間違えてしまった!しかも先生が絶対に覚えろとか言うから色ペンで書いてしまったじゃないか。修正テープを使うか……。
『岸』を消してまた『岸』と書いてしまった。エンドレス……。
また修正テープを使ったが、二度目だったのでその部分だけが不自然になっている。まあいいや、そんなことを気にするような細かい人間じゃない。
今度はちゃんと『炭』と書けたが、やはりその部分だけが不自然だ。さすがに気になって、もう一度修正テープを使うことにした。
慎重に、慎重に……。
やった、これで綺麗に書けた!と思った頃にはもう授業は終わっていて、教室の中は嗅ぎなれない匂いが漂っていた。
今日の給食『ラタトゥイユ』。何だラタトゥイユって……。