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Tokyo Babel  作者: スパイク
三軒茶屋ワーウルフ
3/7

三軒茶屋ワーウルフ2

02


「礼央君起—きーてー礼央くーん?起きないとーダメだよー次の英語絶対あたるんでしょー?」


やや間延びした真木野さんの声と、体を控えめに揺すられる振動で僕は目を覚ました。


「あー礼央君起きたー」


まだ半分ぼけた視界の先にのんびりと笑う真木野さんの顔が見える。


「あーだめだ…全然目が開かない、もう無理」


「もーう、だーめーだーよー」


再び机に突っ伏そうとした僕を慌てて真木野さんが揺り動かす。


大体この真木野さんの少し甘い感じでのんびりした声は、僕にはただひたすらに安らぎをもたらすだけな訳で、この一所懸命なのであろうがまるで赤ん坊をあやすかの様なのんびりとしたリズムでしかない振動も気持ち良く、起きるどころかむしろもっと深い睡眠の底に誘われそうな訳で…


「うおっ!?」


心地良く睡眠に落ちようとしていた僕の首筋に、突然冷たい金属を当てられた刺激が加えられる。

たまらず起き上がると缶コーヒーを片手にそしらぬ顔をしている石松がいた。


「ほら礼央起きたよ真木野さん」


「わーありがとー石松君」


ほっとした表情の真木野さんが石松にお礼を言っているが、そんな奴にお礼は言わなくていい


「いーしーまーつー」


しかし突然強制的に起こされた恨みのこもった視線は、石松には通じないようだ、石松は気にせず手に持った缶コーヒーを投げてよこす。


「ほらよ、また徹夜でゲームか?」


おそらくわざわざ買って来てくれた缶コーヒーを一気に飲み干す…ブラックか、僕は缶コーヒーは甘ったるいのが好きなんだが、わざわざ買って来てくれたんだから文句は言うまい。


「あーまあね、ついつい気付けば朝だった」


「ったくこれで成績は良いってんだから、ヤになるよなー、何秘密は進研ゼミ?」


「そうそうテスト中なんか『この問題ゼミでやったやつだ!』ってな具合ですよ」


「マジで?」


「無料の勧誘マンガを毎回読み込めば石松もそうなるよ」


「ならねーっつーの」


石松とどうでも良い話をしている内に目が覚めて来た、真木野さんの言う通り今日の英語は長文訳があたる順番である。いかに進研ゼミのマンガを毎回読み込んでる僕とは言え少しは準備した方が良いだろう。


「ちょっとノート取ってくるわ、真木野さんありがとーね」


ニコニコと石松との下らないやり取りを眺めていた真木野さんにお礼を言って、席を立ちかけた僕を真木野さんが呼び止めた。

「あー礼央君、今日は放課後なんか予定あるかなー?」


「いや特に、何かあるなら付き合うけど?」


まあ大抵の用事ならこの人の良いのんびりとしたクラスメイトのお願いを優先させるに決まってはいるが、実際今日も帰って「ナイブラ」をするくらいしか用事はない。


僕の答えに「良かったー」と胸の前で手を合わせると、真木野さんは


「あのねー久しぶりにー部活やろー」


とニコニコと言ったのだった。


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