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雷、見えない、文字
雷の光に、文字の様なものが浮かぶ。
ミミズが這った様なこの筆跡は、あいつに間違いない。
が、問題は「来て」以外は全く読めない事だ。
こんな天気だが、行くしかない。
到着すると、目の前にあいつがいた。
「来た!」
笑顔で叫び、さらに言葉を続けた。
「じゃ、お願い」
何を? 話が見えない。
「えー、書いたでしょ?『プロポーズして欲しいから来て』って」
頭を抱えたが、やっと言った。
「結婚してくれ。 だが、字は丁寧に書いてくれ」
この彼女、この大胆さは一体何なんでしょうね? プロポーズしに来い、だなんて…。そして、そんな突然の事にも動じないで、はっきりとプロポーズしてしまう、この彼って…? んー。自分で書いといて、意味不明です。 でも、きっとお互いに大好きなんですよ。ね。
それにしても、字はきれいに書きましょうねぇ、私も他人の事はいえませんが…。