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第25話 日常への変遷

 そうして俺は3日間、病室のベッドで泥のように眠り続けた。

 佐々波さんも服部さんもお見舞いに来てくれた。

 3日後、退院許可は出たもののまだ体は万全ではない。

 それでも、やっと来週の月曜日から、大阪のあの中学校に復帰できる。

 

 「そういえば、佳紬由さん。なんで佳紬由さんは俺の家の場所が分かったんですか?」

  

 俺は宮家への帰宅の途中、ふとしたことを佳紬由さんに聞いた。

 

 「ん? なんのこと?」

 

 「いや、だからその、俺が宮家に来た日のうちに俺の道具がもう家にありましたよね? 俺が気を失っているときにどうやって分かったのかなって」


 「あー、それはね。元々凪人くんのおじいさんいたでしょ。あの人と知り合いだったから」

 

 「え? じいちゃんとですか?」

 

 じいちゃんは、俺が小5の時に死んでしまった。病気で死んでしまって、俺はそれから一人で生きてきた。からっぽの俺を埋めてくれていたのはじいちゃんだったな。

 

 「そう。だから凪人くんのことは、波導協会の資料とツテで分かったのよ」

 

 「そうなんですか」

 

 大方話は分かった。

 じいちゃんは元々波導士か何かで協会にいたんだろう。それで、俺のデータも協会に保存されていたんだろうな。

 まさかじいちゃん協会と関係あったんだ。

 

 「凪人くんがここにきてもう4か月ぐらい? 早かったわね」

 

 「そうですかね? 俺からしたら一瞬のような気がします」

 

 「私からしたら、手のかかる大きな息子が一人増えたみたいで、ドタバタな4か月だったわよ」

 

 「僕も初めての大人数の家族でしたから、本当に楽しかったですよ」

 

 「ふふふ。なんか最後みたいな雰囲気だけど、まだまだ凪人くんは私たちの家族だからね」

 

 「はい、ありがとうございます」

 

                ***       


 「よし、じゃあしばらくぶりの家だからゆっくり休んでね」

 

 そうして俺は久しぶりの自室へ戻った。

 なんだか、随分昔のように感じるな。

 そうだ、学校のために制服を久しぶりに着てみようか。

 4か月前までは普通に着てたんだけどな。

 

 「あ! 凪人くーん! おかえり! もう学校行くんだね! 良かったね!」

 

 すももちゃんが無邪気に部屋に入ってきた。

 彼女の左腕にはまだ、痛々しい包帯が巻かれている。

 

 「うん。やっと行けるよ。そういえば、すももちゃんって学校とか行ってるの?」

 

 「私は、波導学校に行ってるんだよ。一応授業とかあるけど、あんまり行ってないかな。大体は家でできるしね」

 

 「波導学校なんてあるんだ」

 

 「そう! 大体の波導士は通ってたんだよ。凪人くんも通えるはずだよ。それでも、今までの学校のほうがいい?」

 

 「うん、そうだ。俺はあそこに帰らないといけないんだ」

 

 「そうなんだ、それが波導士になった理由の一つ? 女王さんが何とかなのは知ってるけど」

 

 「ああ、俺はねーー」

 

 そうして、俺は静香のことを、あの日のショッピングモールの事件のことを事細かく話した。

 

 「だから俺は、謝りたいんだよ。静香から逃げたこと。目の前で静香が死ぬことが嫌だから、守ろうとも、助けようとも、殺すということも、自分の選択から逃げたことを謝りたいんだ」

 

 「そっか、凪人くんは静香さんに謝るために戦っていたんだ。そうだ、それなら静香さんにもそれ以外の友達にも波導のことを言っちゃだめだよ」


 「え? なんで?」

 

 「もし凪人くんの秘密を知っている人が増えたらさ、敵はそれを弱点だと思うでしょ。だったら、友達から攻められる。それに一般の人が波導を知ってしまうとパニックになるでしょ? それを信じる信じない以前のもんだいになるかもだからね」 

 

 「それもそうだよな。分かったありがとう」

  

 「うん、じゃあまたね凪人くん。学校楽しんでね」 

 

 「そうだ、あと一つ。凪人くん、助けてくれてありがとうね。おかげで私はここにいれるよ」

 

 「うん、俺のほうこそ、助けれなくてごめん」

 

 「ううん! 凪人くんは私たちを守ってれてたよ」

 

 「……」

 

 そうして、すももちゃんが部屋を出て行った。

 一人になると、部屋はひどく静かだった。

 

 「なあ、なんでお前は俺たちを生かしたんだ?」

 

 宮島で俺が死にかけた時、俺を再生させた。みんなも殺そうとしなかった。

 

 「俺はお前に感謝なんかしねえぞ。あのまま死なせなかったのはお前のきまぐれか? 計算か?」

  

 影は何も答えなかった。

 ただ、ひっそりとそこで揺れているだけだった。

 

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