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第2章:設計図の秘密と、招かれざる練り物帝国

挿絵(By みてみん)



練り物工場の喧騒の中、私の心はあのカニカマがもたらした衝撃でざわついていた。手に取ったカニカマから脳裏に焼き付いた設計図の断片。それは紛れもなく、私の故郷、カニカマ星の技術の粋を集めた宇宙船「カニカマ号」のものだった。なぜ地球の、それもこんな小さな練り物工場に、その一部が?


「カニカマリアちゃん、本当に大丈夫か?熱でもあるんじゃないか?」


一郎社長が心配そうに、私の額に分厚い手のひらを当ててきた。彼の体温は、カニカマの練り上がりの温度のように、どこか温かい。私は首を振り、彼に悟られないよう、カニカマを検品する手を休めなかった。


「ご心配なく、社長。ただ、このカニカマの輝きに、少し見惚れてしまっただけですわ」


私はそう言って、曖昧に微笑んだ。だが、内心は焦りでいっぱいだった。この設計図の存在は、故郷への帰還を意味する。しかし同時に、それを狙う「練り物帝国」の影が、すぐそこまで迫っている証拠でもあったのだ。


練り物帝国。それは、カニカマ星の平和な練り物文化を歪め、その力を兵器として利用しようとする、宇宙の悪党集団だ。彼らは、練り物の究極の姿である「カニカマ号」の力を手に入れ、全宇宙を練り物で支配しようと企んでいる。


午後、休憩時間になると、一郎社長はいつものようにノートとペンを広げ、私の隣に陣取った。彼の琥珀色の瞳は、新たな知識への探求心でキラキラしている。


「で、カニカマリアちゃん。今朝のカニカマ語は、一体どんな宇宙の真理を語っていたんだい?」


社長は、まるで子供のように目を輝かせながら尋ねる。私は少し躊躇したが、彼を信頼することにした。彼は、私の唯一の理解者だ。


私はゆっくりと口を開き、あのカニカマからダウンロードした情報を、出来る限り正確に日本語に変換して伝えた。設計図のこと、練り物帝国のこと、そしてカニカマ号が持つ計り知れない力のこと。


社長は、私の話を聞くにつれて、みるみるうちにその顔色を変えていった。彼の顔から、いつもの間の抜けた笑顔が消え、真剣な表情へと変わる。


「まさか…そんな壮大な話が、この練り物工場に隠されていたとは…!俺はただの隠れマニアなんかじゃなかったんだ!カニカマリアちゃん、これは、まさに宇宙規模の練り物革命だ!」


彼は興奮のあまり、持っていたノートを地面に叩きつけそうになった。だが、私は冷静だった。この情報をどう扱うか、それが重要だ。


「社長、この情報は、決して外部に漏らしてはなりませんわ。練り物帝国は、すでにこの地球にスパイを送り込んでいる可能性があります」


私の警告に、社長はハッと我に返った。彼の顔には、一瞬にして緊張感が走る。


その時だった。工場の入り口のドアが、けたたましい音を立てて開いた。そこに立っていたのは、見慣れない男二人組。彼らは、ぴったりとした黒いスーツに身を包み、どこか無機質な雰囲気を漂わせている。


一人の男は、やたらとテカテカした額が特徴的で、まるで茹で上がったちくわのように真っ白だ。もう一人は、奇妙なほど長い腕を持ち、その手には、まるで魚肉ソーセージのように細長い、見慣れない通信機器を握っていた。彼らの目が、私と社長にじっと向けられる。


「ここが、例のカニカマ星人が潜伏しているという練り物工場か。ようやく見つけたぞ、カニカマ姫」


テカテカ額の男が、感情のこもらない声でそう言った。彼の言葉に、工場内の作業員たちの動きが止まる。私は、咄嗟に社長の背後に身を隠した。練り物帝国のスパイが、こんなにも早く、こんなにも堂々と現れるとは。


社長は、驚きと恐怖で固まっている。だが、彼の琥珀色の瞳は、しっかりと私と、そして目の前の不審な男たちを捉えていた。


「て、テメェら、一体何者だ!」


社長の震える声が、工場に響き渡る。静まり返った工場に、カニカマの検品機が動く微かな音だけが響いていた。

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