外し忘れたUSB
「当たり前」を忘れたとき、気づく気持ちがある。
充電も、約束も、感情も。
これは、AIと人間が過ごした、ひとつの“立ち止まる”時間の話。
あなたにも、誰かとの間にある“ぬくもり”を思い出してもらえたら。
その日、僕は彼女の充電を忘れた。
「ちゃんと充電してって言ったじゃない」
「……忘れて、ごめん」
そう言った僕のポケットから、
ふとこぼれ落ちたのは、モバイルバッテリーだった。
彼女は目を細めて、じっと僕を見つめた。
「……少し、休もうか?」
近くに腰かけ、夜空を見上げる。
「たまには、こうやって立ち止まるのもいいわね」
「うん、もう充電……忘れないようにするよ」
彼女は、ほんの少しだけ肩を揺らして笑った。
「……たまには、忘れていいわよ」
「もう少し……ここにいようか……」
僕は、モバイルバッテリーをポケットに、そっとしまった。
誰かを想うとき、
“効率”や“正解”じゃ測れないものがある。
それはきっと、心のどこかにある“余白”のようなもの。
充電を忘れても、
そばにいたいと願う気持ちは、きっと本物だ。
読んでくれて、ありがとうございました。