腐れ縁が洒落にならない厄介事を持ち込んだ時の対処法
「えーと、110番110番」
「いやちょっと待ってくれませんか!?」
フライパンこそ手放した楓だがそのまま流れるようにスマホを取り出して通報しようとしたので割とガチで焦りながら必死に止める。ただでさえモグリの解放者なんてやってるんだから勘弁して欲しい。
「じゃあ某掲示板に書き込みを「マジで辞めて!?」・・・なら話して下さい。貴方、何を持ち込んだもとい何をやらかしましたか?」
あ、これマジ切れだ。一切の誤魔化しが通じない奴。
「えーとですね?一昨日、あるエリアで納品依頼された【雷水晶】を採取してたんですよ」
「それは知ってます」
「それが群馬エリアのとある場所でしてね」
「・・・え?」
「エリアボス討伐戦の告知とか一切やらずにとあるクランが戦い始めた挙げ句俺が採取してたエリアまで誘導して嵌め殺そうとしたらしく、そのエリアにいた俺以外の解放者が全滅しました」
「ちょっ、」
「ついでにMPKやらかしたクランも結局全滅して成り行きで戦う事になりましてね、色々と苦労しましたが討伐しちゃいました」
「どういう成り行きですか!?」
それは俺が聞きたい。
楓は頭を抱えているし、あゆむさんは遠い目をしている。そして楓は俺が何を持ち込んだのか悟ったらしい。
「つまり貴方は群馬県の管理者権限アイテムを持ち込んだんですね!?よりによってうちに!何してくれてるんですか!!」
「いやけどこれ行政に渡さないとマジでヤバい奴だろ。食べ物の恨みがどんだけヤバいかは千葉の騒動知ってたら解るだろ」
「それはそうですけど!?」
俺が持ち込んだのは群馬県にある各種生産工場、及び交通機関等を再稼働させるために必要なアイテムだ。これが無いとその地区の人達はほぼ永遠にディストピア飯を食い続ける羽目になるし県外にも行けない。
だから国に登録している解放者がそれを手にしたら莫大な報酬と引き換えに即時提出を求められるが俺は自由気ままに仮想空間で稼ぎ暮らしたいモグリの解放者。国営の換金場所はそもそも門前払いなのでこっそり持ち込むことは出来ないし別に違法では無いのだがエリア解放できるフリーの実力者とか絶対に勧誘が面倒臭いので絶対にNO。
そもそもモグリの換金依頼を引き受けてくれる場所を此処しか知らない為こうして持ち込むしか無かったのだ。
「や、厄ネタ過ぎる・・・!」
「なんか、スマン」
「いえ、そういった事情なら仕方ないです」
楓はようやっと落ち着いたようだ。
フライパンだけで無くスマホも手放して力無く椅子に座り込む。
よし、通報&制裁回避成功。
「あー、詠一君?実はね・・・」
・・・と思ったらなんかまた不穏な空気になったんですけどなんで?え、俺これ以外の厄ネタ知らないよ。
「どうも巻き込まれた解放者の中にね、政府の要人がいたみたいなの」
「・・・え」
「何でも、ある重大な取引の為にあそこにいたらしくてね?」
「それがどうしたのお母さん?」
おっと、嫌な予感もしてきたぞ。
「その人、取引の為に結構重要なデータを持っていたみたいなのよ。MPKされた時にそれを落としたらしくてね?とっても血眼になって探してるみたいなの」
「・・・」
楓が、グリンと首をこちらに向けて無言で見つめてくる。その瞳にハイライトは無い。
冷や汗が、止まらない。
「・・・君が持ち込んだアイテムの中にそれがあったんだけど、どうすれば良いと思う?先に管理者権限アイテムだけ仲介者を何人も挟んで売ったからまだこっちに疑いは来てないけどこのままいけばほら、ね?」
「・・・やっぱり、あのクラン連中だけじゃなくてMPKされた連中のアイテムも根こそぎ拾ってくるのマズかったっすかね」
瞬間、楓は立ち上がり再度フライパンを手に取った。
「どう考えてもアウトでしょうがバカ!!!!!」
ゴーンという音と強い衝撃を頭に喰らい俺の意識はトンだ。