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うちの娘は生まれてすぐ「マジありえなーい」などと喋りはじめ、未知の魔法や高度な算術も使いこなす天才児。でも問題児。  作者: 枝垂みかん
第六章

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チビっ子スモウ大会②


 今日はチビっ子スモウ大会の日程で、俺らの試合はなし。だもんで、ヒスイといっしょに客席から観戦させてもらう。


 ゆるりとってわけにはいかんがな。その理由は言うまでもねぇ。


『おっ待たせ〜!』


 だいぶ前から選手のチビたちは揃ってるっつうのに、さんざん勿体つけた登場カマす問題児のせいだ。


 ちなみに会場は本日も満員御礼。俺の他にもチラホラと昨日活躍した選手の姿も見受ける。

 とくにわかりやすいのはウァルゴードン殿か。デカいしな。

 つうかアイツもチビたちの試合見るのかよ。意外感しかねぇぜ。


 そんな会場のド真ん中で耳目を集めるチビたちは、カチカチに固ぇ。手と足がいっしょになって動いてらぁ。

 なかには太々しいのもいるが、ほとんどのガキが縮こまっちまってる。


 ベリルは昨日にひきつづき魔導三輪車(トライク)に乗って現れたんだが、その衣装がまた……。


「あなた。ベリルちゃんが可愛いらしい仮装をしていますよ」

「見りゃあわかる」


 可愛らしいかは知らんがな。

 ゲンナリしつつ答えると、女房は聞いてもねぇのに娘のケッタイなナリについて解説をはじめた。


「なんでも『セーラー服』という装いだそうで、ジェーケーの制服の一つとのことでした」

「なんでもいいがよ、ツンツルテンで下穿きが見えちまいそうじゃねぇか。ったく、みっともねぇ」

「あら、そこはベリルちゃんなりの拘りなのではないかしら」

「もっと見た目に相応しいナリをだな」

「あなたの虎柄腰巻きのような?」

「チッ。もういい」

「うふふっ。まあまあアセーロさんったら拗ねちゃって。そういうところも——」


 妙にご機嫌な女房にイジられてると、


『はいそこ! イチャイチャしなーい!』


 土俵の上からベリルが物申してきやがった。

 そいつに便乗してヒスイも悪ふざけ。腕に寄りかかってくる。

 くっそ。母娘揃って親父を晒しモンにするたぁ太ぇヤツらだぜ。


『まったくもー。あーしはこーして働いてんのにさーあ。まっ、いーや。みんなお待たせー! ワンパク大集合、チビっ子スモウ大会の予選をはじめまーす。ぱちぱちぱち〜』


 立ち合い人兼司会進行に絡まれたときは注目を集めちまったが、皆の目当てであるチビたちの手押しスモウがはじまるとなると、客の目は自ずと土俵の方へ。


 このころには、ちったぁチビたちの縮こまりはマシになってた。

 ベリルの計らいが功を奏したってところか。目論みはわかるが、だからって親父を笑いのネタにすんなよな。ったく。


 チビっ子スモウ大会の予選も、昨日と同じく十人一組で勝ち残り戦だ。

 パッと見、目ぼしいのは……、


「あら、あなたのお気に入りの子が出ていますよ」

「だな」


 お気に入りっつうとエコ贔屓してるみてぇだろ。べつに俺が立ち合い人するわけじゃあねんだから構わんのだけどよ。


 土俵に一番乗りキメ込んだのは、ハナタレ山ことモコ。リリウム領の鼻垂れボウズだ。


「あの子、ずいぶんと成長しましたね」


 ヒスイが言うとおり、縦にも横にも、おまけに厚みも増してコロンコロンにデッカくなってた。

 加えて、


「どんなお稽古をしたのかしら?」


 と、ダークエルフの首領でもあり大魔導の二つ名を持つオンナからしても、首を傾げるほどに腰が重そうになってんだ。


「んなもんスモウの稽古に決まってんだろ」

「対戦相手にあなたを想定して、という重要な点が抜けているのではなくて」

「かもな」


 へへっ。怖ぇモン知らずなガキだぜ。



 ガンバってきた他のチビたちには悪ぃが、予選の結果は見るまでもねぇ。


『ハナタレ山の勝ち〜!』


 ズシンと両腕を突き出すだけで、あっさり決まっちまう。足を揃えてんのにグラつくことすらねぇんだから、よっぽどだ。

 サクッと十八連勝カマして対戦相手は萎えちまった。んで、予選通過。


 あまりに早く終わっちまったもんで次の試合の準備ができとらん。

 そこでベリルは気ぃ利かして、土俵を降りようとするハナタレ山を呼び止めたんだ。


『ねーねーハナタレ山、みんなに挨拶しよっかー。応援ありがとーって』

『…………あっ』


 魔導メガホンを向けられると、ポーッと会場を見回す。そんでお目当てを見つけたらしく、手ぇ振って声をあげた。

 ここで俺ぁてっきり『かあちゃん』とくると思ったんだが——意外や意外!


『ワルさまー。オデ、勝ったどー』

『——はあぁあああ〜⁉︎』


 ベリルが驚くのもムリはねぇ。俺だって度肝抜かれたんだからよ。

 まさかのまさか、相手はウァルゴードン殿だった。うむ、とか威厳たっぷりに頷いてっから間違いねぇ。


『もしかしてアンタ、ワル辺境伯と仲いーん?』

『スモウ教えてくれたど』

『そーなんだー、マジ驚愕の事実ってやつだし。つーかどんな練習したん? ワル辺境伯って、あんまし手加減とかしてくんなそーだけどー』

『いっぱいどーんで……えっと、いっぱいメシ食った!』

『ほーほー。よくわかんねーけど、いっぱい練習してゴチになったと。そーゆー感じかー』

『にっひー』


 なんでか得意げに笑みを浮かべて、ハナタレ山は土俵を降りていく。

 以前は遠目にもわかるほどすきっ歯が目立っていたが、すべて生え変わったらしい。しっかり食いしばれそうな歯並びになっていた。


『はーい。本選に勝ち進んだハナタレ山でしたー。いまさらだけど、ハナタレ山ってゆーのは四股名ねー。みんな覚えたげてー』


 つづいて予選第二試合へ。


 紅一点が観客の目を引く。

 唯一の女子選手、プレシア嬢の登場だ。


 あと、うちのチコマロもだが……。

 こりゃあダメっぽい。すでに骨抜き。あのガキ、だらしねぇツラしてプレシア嬢に見惚れてやがるぜ。ったく。


 最新話までお読みくださいまして、ありがとうございます。

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