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うちの娘は生まれてすぐ「マジありえなーい」などと喋りはじめ、未知の魔法や高度な算術も使いこなす天才児。でも問題児。  作者: 枝垂みかん
第五章

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魔導パドルシップ、出航!⑬


 そこそこ時間がかかると思ってたんだが、ホーローたち若い衆は大きさ別の魔導歯車をすぐにこさえてみせた。


 もっと面倒くさがるはずなのに……。

 こう不思議に思ってた連中のやる気の源は、ひと息ついてる戯言んなかで明かされてった。


「へっへっへ。次にイエーロに会ったとき、度肝抜いてやろうぜ」

「そんなことよりさ、なんでも魔力が高いと都会のお嬢さん方にモテるらしいよ」

「ウソくせぇ」

「いやいやホントだって。小悪魔が言ってたもん」


 そいつぁ余計に胡散くせぇ。

 だってのに若い衆ときたら、


「考えてもみろ。こないだトルトゥーガにきてたダークエルフのお姉さん方を覚えてるよな。あの美人たちが小悪魔に夢中だった理由はなんだ?」

「ま、魔力……」

「そのとおりだ。オレらは腕っぷしだって、魔導ギア作りだってそこそこできる。あとは魔力がありゃあ——」

「ひひっ。モテモテだし」


「「「小悪魔、信じてるからな!」」」


 まんまとベリルに騙されてやがる。


「そんなことよりさーあ、アンタらモテてモテてカノジョ選ぶの大変なのを心配しとくべきじゃね」


「「「おお!」」」


「よし、さっそく魔力を鍛えるぜ」

「おいホーローテメェ!」

「抜け駆けしようったって、そうはいかねぇぞ!」


 ホーローたちは我先にと造船所へ駆け足。


 ……呆れたぜ。ここまでしょうもねぇ理由だったとはな。

 ったくベリルめ、あれだけ唆すなって釘刺しておいたのによ。


「オメェってやつは……。とんだペテン師だな」

「はあ〜? あーしウソ言ってねーしー。ふつーに魔力がないよりあった方がモテんじゃーん。どんだけ差ぁでるかは知んないけどー」

「俺の言いつけを忘れたんか?」

「父ちゃんと約束したの、魔力トレーニングに参加するかしないかに限ってだし。ホーローたちがサイズ別の魔導歯車作るって話はまた別だもーん」


 このやろ。屁理屈捏ねやがって。


「で、肝心の魔力トレーニングとやらの参加者はどう募ったんだ?」


 コイツのことだ、どうせインチキくせぇこと触れまわって集めたに違ぇねぇ。


「まーたそーやってウソつき見る目ぇするー。あーしはちゃーんと『ちょっとのあいだ研究を手伝ってくれたらお昼寝してもヘーキ』って誘ったし」

「やっぱりか。肝心なところが丸っと抜け落ちてんのは、意図してだろ」

「科学の発展には犠牲がつきものっしょ」

「……物騒な話だな」


 さすがに健康を害すようなマネまではさせんだろう。そこだけは信用しといてやるか。


「オメェが嗾けたんだ。間違いなく若い衆はムチャすんぞ。責任もってしっかり監督しとけよ」

「だいじょぶだいじょぶっ。やりすぎは逆効果って脅かしてあるし」


 ハァ〜……。コイツはもっと普通に物事を伝えることができんのか。困ったヤツだ。



 意外なことに、昼メシ食ったあとの昼寝は魅力的だったらしく、造船所の前には見習い船乗りの他にも若い衆や女衆まで大行列を成していた。

 おまけに、


「オメェらもかよ」


 ゴーブレたちオッサン爺さん連中まで。


「昼メシのあとが一番眠ぃんですがね、さすがに明るいうちから寝るなんてガキでもねぇのに……」

「罪悪感あったと」

「へい。寝かしつけてると釣られてこっちも眠くなっちまって」

「……なら構わんけどよ」


 気持ちはわからんでもねぇ。

 だがこの混雑っぷりはマズいだろ。仕事にも、バルコが担ってる船乗り見習いの鍛錬にも差し支えちまうぞ。


「おいベリル!」

「なーにー」

「どうにかしろ」

「そんなん父ちゃん考えてよー。あーしとママは研究で忙しーのっ」


 つうわけで俺が大鉈を振るうハメに。


「せめて二組に分けろ。バルコには『可能なら夜、寝る前にしろ』って話しておくからよ」

「りょー」


 これで多少は緩和すんだろ。

 っとに、どいつもコイツも。そこまで昼寝が魅力的なのかねぇ。


 こんな具合に、トルトゥーガ領では魔力トレーニング(昼寝が主目的)が大いに流行った。



 そしてひと月が経ち、


「——思ってたのと違ーう!」


 結果が出た。


 食器類の片付いたテーブルの上に、ベリルはエドがまとめた紙を広げてブツクサ言ってる。

 どうやらコイツは聞いてほしいようだ。


「話してみろよ」

「えっとねー」


 待ってましたと言わんがばかりに、数字を指差しながら語りまくる。

 すると、台所からヒスイもやってきた。


「ここの年代層が顕著なのよね」

「あーし、もっともっと小っちゃい子が有利だと思ってたのにー」

「もしかしてベリルちゃんの魔力量が多いことから、そう想定したのかしら?」

「それもあるし。あとテンプレ的なー」


 言い分をまとめちまうと、ベリルは幼少期の方が魔力が伸びやすいと考えていたらしい。

 だが結果は、十五〜二五のあいだが最も魔力の成長がハッキリ表れてたんだ。


「なんだ。やっぱり身体づくりと変わらんってことじゃねぇか」

「そーだったー」


 ……ん、待て。つうことはだ、ベリルが年頃に成長したらもっとスゲェ勢いで魔力が伸びるってことだよな。

 このとんでもなさにヒスイも気づいたようで、本気な顔つきに。


「あなた……」

「ますます長生きせんとな。コイツは、まだまだ俺らに面白ぇモンをみせてくれるらしい」


 この場では半分本音で半分チャカす。


「そこ! イチャつかなーい。そーゆーのはベッドで二人っきり——あ痛っ。いった〜い!」


 戯言ほざくマセガキに、コツンと。


「それより聞かせろ。元々は見習い船乗りのためにはじめたことなんだろ。そのあたりどうなってんだい?」

「その前からチビっ子ちゃんたちのためにもやってんだけどねー」

「結果は上々ですよ。ねえ、ベリルちゃん」

「うん! ギリギリ伸びやすい歳の人も多くって、もう父ちゃんたちより魔導歯車回すの上手に長く回せるはずー」


 そいつぁスゲェ。

 つっても俺ら大鬼種(オーガ)の、それも年寄り連中はああいう類の魔力の扱いは苦手も苦手だ。それにしたってエライ進歩じゃねぇか。


「とーぶんバルコが許可しないだろーけど、たぶんボビーナちゃんちまで行って帰ってくるくらいはできんじゃね」

「ほう。そいつぁ楽しみだ」

「ねー。人数も多いし、交代でやれば余裕そー」


 となると近ぇうち船を出すことになるのか。

 それよりも先に、


「鍛錬用の魔導歯車の置き場を考えておかんとな」


 目先の問題だ。早いうちに造船所を空けねぇと。


「せっかくだしトレーニングルーム作っちゃおーよー。魔力トレーニングの歯車だけじゃなくって魔導ルームランナーとか、他にもいろいろ置いちゃってさー」

「おう構わんぞ。三階建てのおかげで場所にも困らなくなったしな」


 俺の考える鍛錬とはまったくの別モンだが、こういうモノもこれからの時代には必要なんだろうさ。

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