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うちの娘は生まれてすぐ「マジありえなーい」などと喋りはじめ、未知の魔法や高度な算術も使いこなす天才児。でも問題児。  作者: 枝垂みかん
第五章

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スポンサーめぐり⑥


「神や精霊にまつわる日付け、ですか……」

「そーそー。あーし記念日つくりたくってー。エピソードから語呂合わせとかで決めちゃってもいーんだけど、神官長さんならなんか知ってるかなーって」

「そうですな……」


 と、頭を捻ってもらった。

 が、これといって思い当たらんそうだ。


 逸話自体は山ほどあるそうなんだが、日時がハッキリしてるもんがねぇらしい。

 言われてみりゃあ、いついつ何日に神様がこんなことしましたって話ぶりだったら、ありがたみが薄れちまうわな。


 それに近しい言い伝えが残っていたとしても、地域に根差したモンだそうで、各地に大きく広めんのには向かねぇんだと。 


「なら十一月二二日で『いい夫婦の日』とかでいっかー。てゆーか、あーし勝手に決めちゃって神様に怒られたりしない?」

「夫婦で互いに感謝をしあう日なのでございましょう。でしたらお咎めを受けることはないかと」

「いちおー商売に使うんだけどねー。けどヘーキってんならいっかー」


 そっからベリルは八の月の八日目が『親に感謝の日』とも決めてった。語呂合わせは『母とパパ』だそうだ。


「では我々も広めるお手伝いを——」

「いやいや神官長殿。さっきコイツがいったとおり商売を絡める話なんで、そんなことを教会の方にしてもらったら俺らは天罰くらっちまう。なっ、ベリル」

「これって完全に私利私欲ってやつだかんねー」


 なんつう明け透けな言い草。


「さようですか」

「つーか、神官長さんたちとは別で儲けさせてもらうもーん。材料を半円にして目盛り彫って、あとは教会の紋章みたいの入れたらできあがりなわけじゃーん。まさにお(サツ)刷るみてーに分度器定規つくっちゃうし。うひひっ」


 ったく、ここは教会だぞ。悪どいことばっか考えてっと、そのうちホントにバチ当たんぞ。


「ほっほっほ。尽力いたします」

「ちゃーんと神官長さんにも儲け出るよーにしといてねー」

「我々は教会を通じて神よりお給金をいただいておりますので」

「そーゆーもんかー」

「ええ。ですので、もし利益が生じるのでしたら、そのぶんはベリル様が主催されるチャリティーへの寄付としてください」


 こんなふうに話は逸れたが、記念日についてはさっきので決まりらしい。どうやって広めるのかは、ベリル次第か。

 お手並み拝見、なーんて呑気なこと言ってるとロクなことにならんので、あとでしっかり聞き出さねぇとな。素直に話すたぁ思えんが。


 そして話題は、


「タケ……ですか」


 ベリルが探してる木材についてへ。


「知らない感じかー。名前違うのかなぁ? 固い筒が繋がってるみたいな木でー、ほぼおんなじ幅の節があってー、んで中は空洞なってんの」


 なんだ、そのケッタイな植物は。


「たしかめっちゃ成長早かったはずー。水さえあればだいたいどこでも育つし。あったかいとこが好きみたいだけど、あるてーど寒くってもヘーキ。あとガチでツエーから。家の床とか破って生えてちゃうくらいだもん。コンクリだって余裕でぶち抜くし。マジ農家さんの敵みてぇな木なんだけど……、やっぱ知らない?」


 おいおいベリル。なんつう危ねぇもん探してたんだ。土地によっちゃあ農地が壊滅しちまうじゃねぇか。

 うちでもそんなもん生えてたら根絶やしにしてやんぞ。


「樹木ではありませんが——」

「心当たりある感じ!」

「ええ。バンブートレントと呼ばれる魔物に、似たような特徴があったかと」

「ビンゴだし‼︎」


 よりにもよって魔物かよ。

 亀の魔物をメシと道具の材料にしてる俺が言うのもヘンだが、魔物は魔物だ。同じ土地に共存なんか考えるのもバカらしい。


「たしか英語でバンブーは竹だったし。トライリンギャルなあーしは知ってるも〜ん。トレントはよくわかんねーけど、でもたぶん間違いねーし」

「トレントっつうのは樹木によく似た魔物だ。ただ似てるってだけで樹木とはまったくの別モンだぞ。アイツら動くからな」

「ほーほー。父ちゃん詳しーし。で、神官長さーん。そのバンブーってどこ生えてんのー?」

生憎(あいにく)ですが、このあたりにはおりません」


 むしろいいことだろ。

 ベリルが言ってたように、どこでも増えて生えて強靭な幹の魔物なんか近場にいて堪るか。


「一番近くだとー?」

「そうですな。ミネラリアよりも遥かに南、または東方の手前にも棲息していると聞きます」

「けっこー遠いのかぁ……。せっかくイイ材料が手に入るとおもったのになー。ざんねーん」


 コイツにとっちゃあ魔物ですら木材扱いかよ。っとに、相変わらずブッ飛んだ頭してやがるな。


「いったいなんに使うつもりだったんだ?」


 もしかしたら神官長殿が代わりになる都合いい材料を知ってるかもしれんからな。聞くだけ聞いておく。


「コンクリートの骨? 芯みたくするし」

「なんか利点があんのか。想像してみた限り、余計なモンいれたぶん脆くなりそうなんだが」


 嵩増しが狙いとしか思えん。


「コンクリは揺れとかに弱くって、その補強みたいになるはず。よく知んないけどー」


 コイツはまた半端な知識で物を言う。


「つうか混凝土を補えるほど、タケってのは強ぇのかい?」

「めちゃ曲げられるしマジ固いし」

「オマケによく増える、か」

「だし」


 聞いてる感じだと使い勝手よさそうにも思えちまう。管理できればって注意点を忘れちゃあならんが。


 結局、神官長殿にも似たような木材の心当たりはねぇそうだ。なら誰に訊ねたって知らんだろう。

 ベリルのことだし、ヒスイにはもう聞いてるんだろうからな。

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