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うちの娘は生まれてすぐ「マジありえなーい」などと喋りはじめ、未知の魔法や高度な算術も使いこなす天才児。でも問題児。  作者: 枝垂みかん
第五章

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茶会議、延長②


 四日目、五日目と茶会議はつづき、ようやく終わりが見えてきた。

 大詰めは、それぞれの進行予定について。


 まず、王都からトルトゥーガ間の道路の敷設。資材なんかの費用はあっち持ちで、うちは実作業を担う。

 併せて、土工の者と宮廷魔道士が見学に訪れる。その者らへの多少の指導も。

 まっ、税金やら魔導歯車の件でもだいぶ譲歩してもらったんだが、こんくれぇ賦役と思って喜んで受けておく。


 さらには道路作りに並行して、列車を走らせるって話もでた。

 まだまだ研究もはじまってねぇのに気の早ぇ話だが、いろいろ試してみるにもレールは必要だってことで、とりあえずはトルトゥーガからパスカミーノ間だけ。

 材料に鉄を使うだの混凝土に溝を掘ってみるだのとベリルは閃きをブチ撒けたが、そいつぁ後日、技術交流会なりなんなりんときに話し合ってくれってことで落ち着いた。


 で、残るはスモウ大会……。


「では陛下、教会にもご協力いただき進めて参ります」

「うむ左大臣よ。良きに計らえ」


 リリウム領でのスモウ大会では奉納もした。だから前例に倣い、教会を巻き込んで開催すると正式に決定。

 ここらへんはベリルが()ぇかいてたとおりになったわけだ。


 そしてその時期だが、


「トルトゥーガからの道路ができあがり、その後に会場の設営に入るとしますと……、なにぶん本年度来年度の予算もありますので……、ええー、また手押しスモウの普及と、大人子供の参加者を募り、予選まで含めてまして……」


 左大臣殿はスゲェ言いづらそうに、ポツリと。


「二年後あたりが妥当かと」


 陛下の目元がピクッとした。

 こういうところ、無関係だったら親しみもてるイイ王様なんだけどな。

 直臣からすると『よく聞こえぬのだが』みてぇな圧に感じちまうんだろう。左大臣殿をはじめ役人たちまで、そそーっと目ぇ逸らしてらぁ。


「はいはーい。提案てーあーん!」

「ベリルか。申してみよ」

「はーい。せっかくだし、なんかの記念日にしたらどーかなってー。んん〜とぉ……あっ! 例えば二月四日から十五日まで開催とか」

「意図するところは?」

「二四一五で『つよいこ』って語呂合わせ的な感じだけど、あくまで例えだし。ちゃんとしたのはあとで考えてもらうとしてー、記念日っぽくするメリットは〜、ひひっ、特別な日ってイメージあると贅沢してもいーかなって気になるし」


 ずいぶん前に聞いた気がするな。たしかタイタニオ殿んところでだったか。あんときは感謝の日とか言ってたが、財布の紐を緩めさせる理屈は似たようなもんだろう。


「面白い」


 まぁた陛下は面白がってるよ。

 これは誰の役目なんだ?

 ぁあ。眉尻が情けなくさがってっから殖産の長官殿らしい。


 とまぁ、こんな具合に今後の予定まで決めていった。


「この五日間で多くの事柄が決まり、進められていくこととなった。それもこれも皆の尽力があってのもの。余はこのミネラリアの君主として、ここにいる者すべての柔軟な思考や献身的な姿勢を心より嬉しく思う」


 無理難題を押しつけたうえで、こうして感謝を態度で示すんだからな。陛下を敬愛する臣下らは邁進するしかねぇ。


「「「陛下、なんと勿体ない」」」


 似たようなセリフがつづき、


「わあ〜い! 国王陛下バンザーイ、ミネラリアバンザーイ!」


 被せるようにして、ベリルはパチパチ拍手と喝采を挙げた。

 するとザッと全員が立ち上がり、ベリルに倣う。


 議場は妙な昂揚感に包まれた。



 陛下が退席された途端、忠誠心って名の熱に浮かされた面々は一斉に仕事に取り掛かる。役人の頂点である左大臣殿から下々に至るまで一様に。


 そんななか俺はベリルを連れて、ポルタシオ閣下の元へ挨拶に伺った。


「閣下。俺らはこれで」

「おお、トルトゥーガ殿か。この度はいろいろと助かったぞ」


 でしょうね。


「そんな顔をするでない。ベリル嬢の望みも多く叶い、結果としてよかったのではないか」

「あーしとしては、ホントは東方親征まで持ってきたかったんだけどねー。でもまー、帰りに海よって船見てくからいーし」

「ほう。ということはラベリント領の先にあるタリターナ領によるのだな」


 閣下は前半のしょうもないのは聞き流してくれて、知らんかった情報をくれた。


「おおーう、なにげにタイタニオどのんちだったんかー」

「村長を代官に立てた飛び地だがの。あのあたりは外敵種もおらん長閑な漁村が多いと聞く。なのでワシにはとんと縁のない土地であるが、骨休めにはもってこいかもしれんのう」


 まぁ、将軍がよく行く場所なんて基本的には戦場だよな。


「あーしが今回イイ子にしてたご褒美にね、父ちゃんが連れてってくれるってー」

「ほっほっ。そうかそうか、それはよかったのう」


 いつイイ子にしてた? つうか約束してねぇだろ。たしか俺は、その余力があったらとか返事を濁したはず。


「つうことはだ、王都での挨拶してまわるあいだもイイ子にしてると期待していいんだよな?」


 この茶会議のあいだイイ子だったかには、ドデカい疑問符がつくが。


「あーし、いっつもイイ子だもーん。余裕だし」

「そうかい」


 あまり長居してもあれだ。またぞろ面倒な話を持ちかけられかねん。さっさと退散するに限る。

 俺はベリルの肩をポンと叩いて、ポルタシオ閣下に別れを告げる。


「それじゃあ俺らはそろそろ」

「将軍さま、まったねー」

「うむ。またの」


 こうして俺らは王宮をあとにした。陽が傾きかけた街並みを進み、長男の住まいへ。

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