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うちの娘は生まれてすぐ「マジありえなーい」などと喋りはじめ、未知の魔法や高度な算術も使いこなす天才児。でも問題児。  作者: 枝垂みかん
第四章

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そして得たモノは①


 拓けてるたぁいえ、さすがに焦げ臭ぇ焼け野原に天幕を張る気にはならんかった。

 つうわけで麓までつくと、俺らは街道沿いの街跡地から少し離れたところで野営することにしたんだ。


 慣れもあってか、うちの連中が率先して支度をしていく。

 とはいえ急ぎで装備整えて、適当に食料積んで遠征用の荷物を引っぱってきただけのようで、メシの方はあんまり期待できそうねぇんだが。

 なんにせよ、とりあえずの休息はとれんだろう。


 で、ヒスイとベリルはといえば、ダークエルフたちに囲まれてスッカリ寛いでやがる。


「ベリル様は、ヒスイ様の幼いころとそっくりですよ」


 あのダークエルフ、見た目じゃあ判別できんけど、口ぶりからするとヒスイよりも歳上なのか。

 いまヒスイはたしか……。


 ——ハッ! スンゲェ殺気っ⁉︎


「あなた。いけませんよ。それ以上は考えてはなりません」

「お、おう。い、いつまでもそのまんま綺麗でいてくれ」


「「「キャー!」」」


「うひゃうひゃ! (はっず)っ、ムリっ。マジマジ父ちゃんてば、そーゆーのすぐ言っちゃうしー。見せつけるなってーのー」


 キャーキャーはしゃぎやがってからに。

 俺をはじめ、うちの連中はゲンナリしてらぁ。


「旦那っ。大したもんはありやせんけど、メシの支度が整いやした」

「おう。任せちまってすまねぇな」

「とんでもありやせん」


 ようやくありつけたメシは塩気たんまりだった。疲れた身体にはちぃと障るが、贅沢は言ってやれんな……。



 一晩明けた——

 でもまだ俺らは解散できずにいる。


 ダークエルフたちは帰しちまってもいい。しかしアンデッドの残りがいるかもしれんと、ヒスイが留めたんだ。

 うちの連中が居心地悪そうだから申し出てみたんだが、言われてみればそのとおりか。


 予期せぬ展開で、ベリルとダークエルフ衆との初顔合わせになっちまった。接客研修にきてたコハクとメノウは除いて。

 ちなみにあの二人は、ここには来てない。

 方々への報せと、火事場泥棒みてぇに混乱してる俺らのスキを狙ってアンテナショップに手ェ出す不届き者がいねぇか警戒するため、王都に残ってるんだと。


 ……いい加減、暇だ。

 勝手に後始末をはじめるわけにもいかんし、かといって撤収もできねぇ。


 ダークエルフたちはベリルを構い倒してるが、すぐ隣にヒスイがいるからボロは出してねぇようだ。

 うちの連中はスモウとって遊んでる。あれだけの危機のあとだから余計に気が抜けちまう。



 三日が経ち四日が経ち……。

 そうしてようやくポルタシオ将軍率いる王国軍がやってきた。


 で、俺らの様子見てポカーンとしてらぁ。


 ここで客観的に己を省みると、納得だ。

 街道沿いに一面が焼け焦げた街。ただポツンと教会だけが残ってるだけ。

 その隣では、ダークエルフたちがお茶会の如くキャイキャイ盛り上がり、大鬼たちがワイワイとスモウとって野蛮な煽りをくれあってんだ。


 なにも知らなけりゃあ、この絵図、俺らが滅ぼしたように映っちまうかもな。


「トルトゥーガ殿。これはいったい……?」

「お待ちしてましたポルタシオ将軍閣下。おうオメェらいつまで遊んでやがる! 将軍閣下のお見えだぞ。ビシッとしやがれ!」


 スッとヒスイが俺の隣に立ち、その後ろにはダークエルフたちと大鬼たちが並んだ。

 んで、ベリルは俺らの足元をチョロチョロしてる。


「いぇーい! 将軍さま、おっひさー」

「お、おお。ベリル嬢までおったのか」

「おったし。つーかめちゃ大変だったんだからー。ゾンビめちゃいっぱいでさー、ぜーんぶママがやっつけたの。マジでヤベー魔法だったし」

「それは見たら、のぉ……」


 たしかに、のぉ……ってなるよな。

 俺がそっちの立場ならおんなじ感想を抱くに違ぇねぇ。


「将軍閣下。さっそく報告から——」


 はじめさせてもらいてぇって切り出そうとしたら、


「どどど、どういうことかね‼︎ 私の領地が、街がっ。説明したまえ!」


 ラベリント伯爵が怒鳴り声あげてシャシャリ出てきた。

 つうか居たのかよ。そういや、たしか同行してるって話だったか。


 気持ちはわからなくはねぇが、迷惑(こうむ)ったのはこっちだからな。ちったぁ冷静に考えやがれ。

 ほれみろ。うちの連中がピリついちまったぞ。ダークエルフらも『コレ処分していいですか?』って冷めた目ぇ向けてるしよ。


 肝心のラベリント伯爵は鈍感なのか、不穏な空気に察してねぇときた。チッ。


「——まてまて待つのだ。落ち着かんか!」


 慌ててポルタシオ将軍が割って入ってくれたからいいもんを、ちぃとでも俺を小突くようなマネしたら止めようなかったぞ。


「フンッ! ではさっさと申し開きを聞かせてもらおうか」


「「「おうゴラ!」」


 バカたれどもが。

 ったく。ラベリント伯爵も煽ってくんなっての。

 テメェらもこの程度でいちいち苛立つなや。


 俺はスッと手を挙げて、両者を黙らせた。


「とりあえず、俺らで厄介事の元凶らしきアンデッドは対処しました。方々へ散ってったアンデッドに関しては不明です」

「とりあえずとはなんだね! そのような言い草——」

「いいからテメェは黙ってろや。ラベリント伯爵、アンタからはあとでキッチリケジメとってやっからよぉ。いい加減こっちもヤベェ思いさせられてイラついてんだ。わかれよ。なっ」

「……ッ。そ、そそ、そのような横暴が、まかり通るものかっ」


 俺だってこんな言い方したかぁねぇんだ。

 うちの者らに示しがつかんのもあるけど、そんなんよりも抑えが利かなくなっちまうだろうが。

 こっちはオメェの身の安全のためにやってんだぞ。その程度わかれよな。


「ふむ。つまり喫緊の大きな脅威は去ったと。またアンデッドの残党がいる可能性は未だあり、かの」

「そうなります。ただいまよりトルトゥーガ竜騎士団はポルタシオ将軍閣下の指揮下に入りますので、以降のご指示を」

「うむ。協力に感謝する」


 後片付けなんて放って帰っちまいたいところだが、そうも言ってられん。

 なるべく早く済ますため、上手いこと使ってもらおうと指揮権を将軍閣下に渡した。


 そしたら次は、


「ポルタシオ様、私たちはいかがしましょう?」


 ヒスイが協力を申し出る。もちろん配下のダークエルフ一党も含めてだ。


「街道沿いや拓けた場所でなら、皆様方で充分でしょうけれど、山狩りなどなさるのなら私どものチカラがお役に立つのではないかと存じます」

「申し出、かたじけない。では大魔導殿にも協力を頼むとしよう。範囲に関してはこれから詰めるとするとして、まずは野営地からかの」

「閣下、あたりへの報せはどうなっておりますか?」

「もう済んでいるころであろう。トルトゥーガの者たちが触れまわってくれたのが幸いした。周辺領主はそれぞれ自警をはじめておるぞ」


 なら、滅多なことにはならねぇだろう。


 まずはいったん関係各位だけの報告会からか。

 さっさと手をつけちまいてぇところだが、闇雲に兵を動かしても徒労に終わっちまうもんな。

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