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うちの娘は生まれてすぐ「マジありえなーい」などと喋りはじめ、未知の魔法や高度な算術も使いこなす天才児。でも問題児。  作者: 枝垂みかん
第四章

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亀の魔物を増やすには①

誤字報告ありがとうございます。

こんなにも誤字が多いとは……。


「じゃじゃーん。魔導四駆っ。最新型だし!」


 技術交流会から数日してベリルが自慢してきたのは、妙な荷車だった。

 箱の底に車輪をつけただけっつう見た目で、内側には前後左右合わせて四つ座席がある。


「ここ、ハンドルになってるし。っていっても握って車輪まわすだけなんだけどねー」

「取り回しはどうすんだ?」

「真っ直ぐしか進まなーい」


 なんだかよくわからんが、うちの者を引っぱり出してすでに試験済みとかなんとか。


「んで、わざわざ半端なモンを俺に見せて、どうしようってんだ?」

「ハンパなモンとか失礼しちゃうし。これはこれで完成なのっ。レールの上を走らせるんだから」

「その、レールとやらはどこだ?」

「まだ引いてないけど」


 んだよ。やっぱり半端じゃねぇか。


「いちお車輪ついてるから、そのまんまでも走れるし。つーわけで父ちゃん、あーしとドライブしよーぜーい」


 と、ベリルから試乗のお誘いだ。

 あと二人ばかり見繕って、禿山の天辺に向かいたいんだと。

 山登ってくぶんには危なくないだろう。亀の魔物には要注意だが。


「あーし声かけてくっから、父ちゃんはそこの荷物とか積んどいてー」


 言うだけ言って、ベリルはどっか行っちまった。


 とりあえず魔導ギアを着込み、回転槍も持っていく。

 あと荷物だったか……。

 念のため木箱のなかを検めると、


「なんだこれ」


 たぶんスッポンの餌にしてる草だ。根っこから土を落とした葉っぱがギッシリ詰まってた。それとシャベルとナイフもか。

 アイツ、なにするつもりだ?


「父ちゃんお待たせー!」


 疑問に思ったところへ、ベリルが戻ってきた。

 連れてくのはゴーブレとホーロー。よりにもよって、忙しそうなヤツらを選びやがって。


「おうオメェら、都合はいいんか?」

「へい旦那! 小悪魔殿から馬なしで進む荷車に乗せてくださるって話を聞いちゃあ、黙ってやれやせんぜ」

「オレもオレも! 広場で走ってるの見て、ずっと気になってたッス」


 コイツらが想像したモンとは違うんだがな。

 どうせベリル、魔導三輪車(トライク)に乗れるって勘違いさせたまま連れてきたんだろ。悪どいやつめ。


「いまから試乗してもらうのは、これだし」


 案の定、二人とも『これじゃねぇ』ってツラしてらぁ。しょぼくれたまま魔導ギアをノソノソ着込んでく。

 ベリルは赤い兜とグラサン、薄桃色のツナギなる服を着て、手足には革手袋とブーツっつう完全武装で再登場。


 それからようやく出発した。



 俺も見た目などに文句垂れたが、乗ってみるといやはや、こりゃあ面白ぇ!


 前の席には俺とベリル。


「こいつぁスゲェな。座ってるだけなのにグイグイ坂を登ってくぞ」

「でっしょー」


 後部の座席にはゴーブレとホーロー。


「なぁなぁ小悪魔っ。これ、注ぐ魔力の量とか考えなくていいのか?」

「アンタらが作ったんだし、わかりそーなのにー。前と後ろ別々だし、一本の軸を魔導歯車二個で回してっからヘーキじゃーん。たぶん車輪がバラバラに動いたりしないってー」

「そ、そうなのか。うん。そうなのかもな。言われたまんまに作ったから、不安でさ」


 え? 試験したんじゃねぇの? さっきそう言ってたよな。もしや平地でちょろっと転がしただけだったり……。


 なんにせよ、ホーローを乗せたのは正解だったのかもな。自分らがこさえたもんが、どう動くのか知らんのはよくないだろうしよ。


「小悪魔殿。たしかにこいつぁスゲェとは思いやすが、ワシらが引く方が数段速ぇですぜ」


 おいゴーブレ、いらんことを言うな。


「ふーん。なら、飛ばしちゃうし」

「まてまて待って小悪魔っ。前と後ろで回る速さが違うとおかしくならないか?」

「んっとー……、たぶんヘーキ。つーわけで、加速スイッチオーン!」


 などとほざき、ベリルはアホほど魔力を注ぎやがった。

 すると——


「おいバカバカバカこらベリル! 速いって、おい」

「きゃはははっ、うっはー! 速っ、めっちゃ速ーい」

「うぉ、な、なんだこれ! 小悪魔っ、これ大丈夫なんだよな⁉︎」

「ヘーキヘーキー。ほらー、みんな魔力もっともっとー」

「ここ、こ、小悪魔殿っ。座ってるせいか、じ、地面が迫ってくるように見えちまって」

「はあー? ゴーブレ怖いん?」

「んんん、んなたぁありやせんぜい!」

「だったら、もっと飛ばすねー」


「「「——ひぃ!」」」


 全力疾走よりも遥かに速い。

 だがなにより不安にさせられるのは、視線が違うとこ。さっきゴーブレが言ったとおり地面スレスレと錯覚させられちまって、えも知れん恐怖に晒される。


 それにギュンギュン加速していくと、小石に乗りあげただけでもバカみたいに揺れて、そのたんび尻が痛ぇ。


 だってのにベリルは平気なツラ——あっ! コイツきったねっ。一人だけモコモコした詰め物をケツの下に敷いてやがる。


「ベリル! テメェ、なに一人だけ具合よさそうなモン用意してんだ。俺らのぶんは!」

「なーい。あーしのプリチーなお尻に合わせて作ったクッションだもーん」

「こんのや——あぐっ」


 くっそ。舌噛んじまったぜ。


 にしても……。

 後部座席がやたら静かだ。振り返ると、二人して小さく縮こまり荷車のヘリにしがみついてる。

 アイツらがブレて見えるのは、車体の揺れってことにしといてやろう。


 なんとなく気にはなってたんだが、だんだんと斜めに進みはじめてて、頂上に向けて渦を巻くように登ってくんだ。

 それが余計に左右への揺れを招いて、気持ち悪ぃのなんの。

 視界もグラグラ揺れるしよ。

 目に風が刺してきて開けてんの一苦労だ。


 ちなみにベリルは余裕かましてる。ケラケラ笑ってますます加速させてく。

 

 頂上についたとき、俺らは強張った身体を解すのにスンゲェ苦労した。


 結論。こいつの乗り心地は『最悪』この一言に尽きる。

 最新話までお読みくださいまして、ありがとうございます。

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