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鏡の勇者の場合
自分が何者か、知っている人はいるの?
私にはわからない
私自身が、いったい何者なのか
『汝を、鏡の勇者として任命する。』
国王は気取りながらそう告げた。
私は自分の顔を知らない。
装備はこの剣のみ。
王から与えれられた唯一の装備。
どうしようもない。
持つので精いっぱいだ。
剣をふるう勇者、そんなものは物語の中だけなのだ。
私にはそんな膂力はない。
草原を体を左右に振りながら歩くしかないのだ。
鏡の勇者というけれど、私の装備にひかりを反射するものはない。
「影だけは一人前ね……。」
あまりにも熱く、フード越しに熱を感じる。