剣の勇者の場合
これは、なかなかのことだ。
最悪のことだ。
「ウォーカーすら……、倒せねぇ……。」
「剣の勇者、汝を剣の勇者へと、任命する。」
あそこがケチのつきはじめだった。
国王なんざ無視して、どこかでひっそりと暮らすべきなのかもな……。
「よくよく考えたら、道を歩けば出てくる生き物が斬撃耐性持ってるのは、最悪だな……。」
俺の武器は剣なのだから。
ウォーカーの核まで武器が届かなければ、意味はない。
「物はいいはずなんだけどなぁ……。」
しばらく森にでもこもろうか。
相手を切り刻む練習をしなければいけない。
森籠り、一日目。
ウォーカーだ。
やはり、道を歩けば出てくる。
相手は俺を倒せない。
鎧を着ているからな。
しかし、こちらも、また……。
倒せるまで切り刻むしかないのか……?
二日目
食料を取りにいかねば……。
鳥やほかの魔物は倒せた。
やはりウォーカーだけが倒せない……。
武器を変えようにも、剣の勇者だからか、他の武器は扱えない。
三日目
今日はとにかくウォーカーと戦う。
斬りまくったが、あまり効果はないようだ。
四日目
獣を倒し、肉を手に入れた。
ウォーカーを恐らくは200回は斬った、しかし、あまり意味はなさそうだ。
森にこもるのもやめて、どこか遠くにでも行こうか。
五日目
今日も今日とて、ウォーカーを切り刻む。
斬ったところから、つながる。
普通の剣じゃないのか……、これ……?
六日目
よく見ると剣に水が纏っているのが見えた。
この剣は……?
七日目
食料が尽きる。
まずは狩りをしてから川で洗濯をしなければ……。
俺もすっかり森の住人だな。
剣を調べてみたが、やはりあれはウォーカーの体の一部が刃についている。
銛籠り、八日目。
「……朝か……。」
焚火をおこし、肉を焼く。
相変わらずウォーカーだけが倒せない。
なぜ俺がウォーカーを倒すことに躍起になっているのか。
それは、上位種の存在があげられる。
今はウォーカーは体当たりで攻撃するが、上位種ならば酸で鎧を溶かしてくるからだ。
つまり、こいつらの攻略は必須。
「この剣も……、プルプルになってきたな……。」
刃の周りを、ゼリー状のウォーカーの肉体が包んでいる。
もはや刃は届かないだろう。
この剣でどうしろと。
「……家に帰ろうかな……。」
もともと勇者というがらでもない。
しかし、今日は違ったのだ。
ウォーカーを倒せた。
「はぁ……、はぁ……。」
何故だ?
その場に飛び散った肉片を見ながら、座り込む。
なにが、いつもと違う……?
「そりゃあ、これだよな……。」
全てがセリー状のものに覆われた剣。
いまは恐らく、刃は通らず打撃として機能したのだろう。
ウォーカーの核を、突きではなく、潰したのだ。
まぁ、いいか……。
今回の森籠りはここまでで。
この剣について、いろいろと
調べなくちゃな……。