表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

石の勇者の場合

勇者のみが引き抜くことのできる伝説の剣……、ありきたりな話よね。 

しかし、これはどういうことなんだろう……。 

 

「あ、貴女は……。」 

「石の勇者。国王の命により管理者のもとへ、参じました。」 

「……。」 

 

何か意味はあるのかしら。 

この儀式に。 


「ア、アナタニハ、コレヲ……。」 


私は森の中で目覚めた。 

そこは剣と、台座と、後は木漏れ日と木々だけがあった。 

どこにも人はいなかった。 

そして、国中の人がここにきて、私は国王のもとへと連れていかれた。 

 

ウォーカーが現れる。 

ついでに森の巨人も。 

そう、ここも森。 

瘴気の森だった。 

 

ウォーカーの攻撃 

石の勇者の剣は、反撃した。 

ウォーカー、森の巨人に800のダメージ 

石の勇者は戦闘に勝利した。 

石の勇者は経験値を得、レベルが上がった。 

 

「……。」 

 

生まれながらに持っているこの剣が、敵意を持つものを自動で挫く。 

私の存在意義は何?

つるぎを持つだけでやっとの筋力 

自力で敵を倒したことなどない。 

 

洞窟に着いた。 

反対側には平原が広がっていた。 

しかし、私が用があるのは洞穴のほうだ。 

かなり暗い。 

洞窟だから当然か。 

三叉路を右に。 

 

ひどい塩酸の匂い。 

動かない赤い水。 

近づけば飲み込まれる酸。 

ウォーカーのネームド、『レッドスライム』だ。 

 

遠慮もなく歩いていく。 

近づき、捕食される。 

しかし、私には効かない。 

 

何故だろう?

人間らしい感覚を全てどこかに置いてきたのだろうか。 

 

石の勇者の剣は反撃した。 

『レッドスライム』を倒した。 

 

私は、なぜここにいるのだろう?


洞窟から出ると、一人の伝令がいた。 

馬を引き連れて。 

 

「……国王から、これを。」

 

渡された紙には、次の目的地があった。 

 

「……それで、あんたはどうするの?」

「俺は伝令だ。まあ、ついて行ってもいいが……。」

「わかってるの? 命がけだよ。」 

「……まあな。」 


そういって、伝令は国へと帰った。 

私は渡された紙にある海へと行くことにした。 

 

「海か……、見たことないな……。」 

 

死の海 

 

レッドゼリー、目視できるほどのプランクトンで、物珍しさに近づいた旅人を猛毒で仕留める、か。 

 

「なんか、プルプルしたものとばかり戦ってるわね……。」 

 

仕方ないので今回もネームドを倒しに行く。 

 

 

 

緑の国にて。 

 

「こちらを、石の勇者へ……。」 

「……はい。」 

 

また、彼女に会いに行くのか……。 

 

 

 

『キメラアントフィッシュ』が現れた。 

 

「……。」 

 

我ながら無表情な女だと思う。 

 

『キメラアントフィッシュ』の攻撃。 

波起こし。 

意思の勇者に3のダメージ。 

 

「!?」

 

体が熱い。 

生まれて初めての感覚。 

これは……、ダメージを受けているっ?!

私は今までダメージを受けたことはなかった。 

切り付けられようが、酸の海に沈もうが。 

 

しかし、今はここの海水が染みる。 

何故だろうか。 

顔に笑みがこぼれるのは。 

 

「ゆうしゃあーーー!」


この声は……。 

伝令か。 

 

「これを君に……っ!」

「馬鹿っ、今は戦闘中よ!」


『キメラアントフィッシュ』の水圧切断。 

伝令と馬と指令書は飛んだ。 

 

「私はいい!」

「国王からの指令を見ろーっ!」

こんな時に何を伝えるんだ。 

伝令は叫び、馬を取りに行った。 

しょうがない、この痛む皮膚に免じて取りに行こう。 

 

『キメラアントフィッシュ』の攻撃。 

波起こし 

石の勇者に3のダメージ。 

 

痛い。 

熱い。 

 

でも、届いた。 

国王からの指令書だ。 

 

汝を石の勇者とし、ここに記す。 

 

「そういうことだったのね……。」 

 

私は一度も自力で敵を倒したことがない……。 

故に、レベルは1で、実は今はもう意識がなくなりそうだった。 

初めての痛み。 

そういえば、みんなは痛むとか、苦しいとか言ってたな……。 

これが、痛みか……。 

 

でも、本当に攻撃すべき相手は見つけた。 

これだ。 

 

何とか馬にはたどり着いたが……、どうする。 

やはり、自分の力ではこのネームドは……。 

勇者は国王の伝令は受け取ったようだ。 

ここまでなのだろうか。 

 

「伝令、本当に倒すべき相手がわかったぞ。」 

 

そう言うと彼女はひざまずき、自らの心臓にその剣を打ち立てた。 

閃光が目を貫き、何物も見動き出来ない。 

 

しかし、そこには日の光を受け笑みを浮かべる彼女の姿があった。 

血色はみなぎり、髪は金の光を発していた。 

海の日光を受け、辺りを反射で照らすほどだった。 

そして……。 

その剣を持って、敵意を滅ぼす。 

命を司る魔法剣、フォレスト・オブ・ザ・ムーンライト 

その刃を自らの肉体に納め、魔力をつるぎとなす。 

 

『キメラアントフィッシュ』を倒した。 

石の勇者はレベルが上がった!

石の勇者はレベルが上がった!

石の勇者はレベルが上がった!


「……一体、どういうことなんだ。」 

 

馬を連れてきた伝令が、質問する。 

 

「私は、どうやらこの剣の台座だったみたい。」 

「……。」 


否定するでもなく、伝令はただ話を聞いていた。 

 

「命を司る伝説の剣……、そこまでは聞いていた。」 

「この剣を引き抜いたものは勇者となる。」 

「剣の力が肉体に流れ込むから。」 

「でも、私は……。」 

 

国王からの話だった。 

人が一人もいない、そんな森の中に静かに眠る剣があると。 

 

「では、君は……。」 

「命を与えられた台座。それが私……。」 

 

もう迷いはない。 

 

「石の勇者。」 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ