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見えない君を見える僕が守るから。  作者: 藤堂千詠
第一章 強さ
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見えた





見える。





あの人は長生きだな、老衰で死ぬのは一番のハッピーエンドだと思う。それに比べてあそこでタバコを吸ってる人は肺癌になって全身転移で病死。あの母親と歩く子供は再来年か…子供は事故死で母親は後追い自殺。暗いな。

通りすがりの人の運命の最果てが見えてしまう。僕に見る気がなくても見えてしまうのだから、迷惑極まりない。

見えたところでその人は助けられない。僕が助けに行こうとしてもそれもまた運命だから。何も変わらないしこの世に変えられるものなんて一つもない。全てが“必然的に”起こることだから。





















「おはよ〜」

「おはよ!ねぇ聞いてよ!昨日さぁ〜」


「はよ〜」

「うぃ〜〜ちょ、プリントやってきた?写させて」

「まった俺も見るっ!!!!」




朝から教室は賑やかだ。きちっとした身なりの奴もいれば寝癖が残ってるやつもいる。それぞれがそれぞれのグループで集まって話す。昨日の自慢話から入るやつもいれば来て早々いじられるやつとか、前髪整え始める女子とか、色々いる。

勿論僕のとこには誰も来ない。僕には友達と呼べるやつは一人もいない。小学生の時からそうだ。皆僕を避けてる。中学校に入ってからは僕は特に何もしてないが、小学校から同じやつらがたてた噂が僕の印象の全てとなった。

事は何年か前、僕が幼稚園に通ってた時からだ。





























「は〜い、みんな〜まずは足から入ろうね〜」



プールの時間だった。プールは園の一番端にある、そこからはフェンス越しに車も歩行者もよく行き交う通りが見えた。ある日、僕がフェンスの外を見た時、一人のお婆さんが買い物袋を持って歩いてるのが見えて、同時にお婆さんが3秒後に死ぬことも分かった。



「あのおばあさんしんじゃう…!」



僕がそういった時その場にいた誰もが僕と同じ方向を見た。そして間も無くお婆さんのところにトラックが突っ込んできてお婆さんは見るに耐えないような姿となって死んだ。

その時は、僕がまだ幼かったというのと、あれが事故だったのでトラックがこちらに来ていたのが見えていたのだろうと周りは僕のことを少しも気味悪がったりはしなかった。



しかし、その四年後、僕が小学二年生になった八月。

ある日、近所のよくしてくれるおばさんに会った。買い物帰りに会えばお菓子をくれるし、暑い日にはジュースをくれる。僕はそのおばさんが好きで、会ったら元気よく挨拶をしていた。子供ながらの無邪気さ、というものだ。

だからこそ、言ってしまった。おばさんが元気になれば、と。悪気もなく…



「おばさん、病気になっちゃうの?」

「え…?そんな事ないわよ、おばさんはいっつも元気よ〜」



子供の戯言だろうとおばさんは真に受けなかった。当たり前だ、そんなもの信じる人なんていない。

しかし、その二週間後、おばさんはくも膜下出血で死んだ。

僕はあまりに悲しさに泣いてしまい、それから僕の周りの大人たちは僕に話を聞いてきた。



「何があったの?」

「誰かに意地悪されたの?」



子供だった僕は話してしまった。母や学校の先生、一緒に遊んでいる子のお母さんにまでも…

そうすると大人は気味悪がった。僕が二度も人が死ぬという未来を言い当て、後者は目に見えないはずのものまで言い当ててしまっているからだ。

それから僕の周りから人がいなくなるまではそうかからなかった。皆僕を避ける、学校の先生すらも。

ずっと僕の周りにいてくれるのは家族だけだった。おじいちゃんもおばあちゃんも変わらず遊びに行けば僕を優しく迎え入れてくれるし、距離を取ることもなく今まで通りだった。





















今となっては辛くも苦しくも何ともないが当時はものすごく辛くて部屋から出たくないと泣きじゃくった日もあった。近所の人からは「呪いの子だ」「化け物だ」と野次を飛ばされていた。それを分かっていたからか、母は



「無理して買い物について来なくてもいいんだよ?お母さんは〜かえでが一緒に来てくれた方が嬉しいし寂しくないけど、無理はしなくていいからね。」

「……行く、買い物一緒に行く。」

「うん!!一緒に行こっか!」



僕を無理に外に出させようとはしなかったし、だからと言って閉じ込めようともせず、ただただ優しい言葉をかけてくれた。むしろ、僕がついて行くと言った時はすごく嬉しそうな顔で頷いてくれる。

こんなにも優しい母親の元に生まれてよかった、幸せだと心の底から思えた。だからこそ、





母の運命だけは見たくなかった。





人選ができるはずもなく、母の運命も勿論見えた。唯一の救いは母の死因は長生きで病に犯されることもなく老衰で亡くなる事だった。






















自分はどう死ぬのだろうか、そう思って鏡を見てみるがわからない。鏡に映る自分はあくまで自分の容姿の反射であって鏡に映る僕は精神層にはいないし魂すら無いのだから当たり前だ。

なら僕はいつ死ぬのだろう、なぜ僕だけ見えないのだろう。そんなことをいつも考えている。机に肘をついて窓の方を見る。グラウンドでは30人程の生徒が体育の授業を受けている。あの人達のあの行動も全て誰か一人の操り人形なのだと言う、すごく残酷なものだ。





「ねぇ、九条くん。九条くん!」

「えっ…なに、」

「ほら、前見て。九条くん当てられてるよ。」




いつぶりだろう、親や先生以外の人に話しかけられたのは。なぜこの人は僕に話しかけたのだろう、まさか噂を知らないのか。いやそんなはずは無いだろう、だとしたら…そう考えていたのも束の間、僕に頭は一瞬で真っ白になる。






































この人……あと__日しか生きられない。


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