世界の過ち
この世界は神によって造られた。
天之御中主神という一人の神がこの世界を造った。その神はこの世界に法律を作り、世界を三つの層に分けた。
三つの層の内一つは物体が独立する層。この層によって物や生き物は形を保つ事が出来る。もう一つは力のベクトルが行き交う層。この層は何億もの見えない線がある。それは現に言う“力”というもの。その線には幾方向ともになるベクトルが流れ、それは物が落ちる、物を押し物が横に動く、あるいは生き物の立つ、歩くなど、この世界の絶対的物理法則である。そして最後の一つの層、それは精神の層である。生き物全ての魂がここに宿る。そしてこの層では魂があるべき形に、そして還るべきところへ還る為の補佐をする者達がいる。その者達は“死神”と呼ばれ、精神の層、並びに魂の輪廻を司る伊邪那美命という神の指揮下で動く。
そしてこの世界ができてから何億年という年月が経ち、多種多様な生き物が地を歩き、支配し、絶えてを繰り返した後この世界の支配序列の頂点に人が君臨した、そんな頃…ある一人の人間が世界の仕組みを知り、壊そうとした。その男の名はギルガメシュ。半神半人の王であり、彼はこの世の全てを己の支配下に置こうと冥界にまでも手を出し不死身を手に入れようとした。彼の人知を超えた力に神は恐れ天災によって彼を滅ぼそうとし、結果彼は息を絶やしたが冥界の秩序は崩壊し、死神は消え、魂は輪廻から外れ全てが一つの元へ、神である天之御中主神の元へ還るようになってしまった。これにより魂全てが完全に自由を無くし、一人の神の思うままに形を変えてしまった。世の中の事象全てが偶然ではなく必然になった、“運命”になってしまった。
「………で!……えで!…かえで!起きなさい!」
「んん…わかった、わかったから、……今起きるよ」
「朝ごはんできてるからね、顔洗って下に降りてらっしゃい。」
眠い、今にも二度寝してしまいそうだ。重い瞼を擦って枕元のスマホを見る。母は決まって7時半に起こしにくる、もう中学生だというのに母親に起こしてもらうのは情けない気もするがだからと言って自分で起きるのは面倒臭いし起きれる自信もないのでやめるつもりはない。
洗面台に行って顔を洗い、階段を降りてリビングに行く。戸を開ければキッチンで僕の弁当を作る母と朝食のロールパン2つと卵焼きが目に映る。いつも通りテーブルへ行き朝食を食べるが、近くにいる母と話すこともなければテレビを見る訳でもなくただ黙々と食べ進める。正直このパンも飽きた、本当はフルーツとかヨーグルトとか、もっと食べやすいものを食べたい。が、僕は母に一つも文句は言えない。いや、言いたくないんだ。残された時間を……大切に、無駄にすること無く過ごしたいから。
「いってらっしゃい!気をつけてね〜!」
僕は小さく手を振り返して家を出る。学校まではそう遠くない、短くも長くもない道のりを歩く。
「あ…………………………」
マンションの下に救急車が停まっていた。女の人の泣く声が聞こえて、隊員の人が担架で運んで来たおじいさんが苦しそうに咳き込んでいる。あのおじいさんはもう……
生きれない。今日死ぬ。
そう。僕には運命が見えるんだ。