表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~ラストスカイ~  作者: たっくん
5/30

第五話「休日」

『非通知』という文字を見て静かに息を飲む。

「…。」

少し躊躇ってから電話に出る。

「はい。」

「あ、大西先輩ですか?」

声だけで自然とわかった。あの女の子だ!無事だったんだ。

「あ、君…。あの時泣いてた子だよね?」

「いや、泣いてませんから。」

まだ意地を張るのか…と思いながら、ため息を吐こうとした時、ふとひとつの事に気づいた。

「ん?いや、なんで番号知ってるの?!」

驚いて身体が自然とベッドから立ち上がる。

「え、いや、教えてくれたじゃないですか。」

教えたんかい!っていうツッコミが入りそうになるが流石に堪えて、教えたなら番号登録くらいしろよと記憶のあった頃の僕に思った。

「…それで、なんで電話をこんな時間に?」

「実は、明日、付き合って欲しいことがあるんです。」

「え?何?」

明日は予定があるがとりあえず聞くことにする。

「明日一日、私を守って欲しいんです。」

「…。」

自然となんか分かっていた。なんで分かったかは分かんないけど、驚くことは無かった。

「驚かないんですね。」

不意にそう言われる。

「うん、まぁね。…って!明日は予定あるんだけど。」

「え、先に言ってくださいよ…。何があるんですか?」

「遊園地に友達と行くことになって…。」

しばらく沈黙してからその後輩は口を開いた。

「もしかしてエターナルランドですか?」

「…んー。」

少し口ごもってしまう。そりゃ皆で行くから大丈夫だと思ったらここで質問飛ぶんだもんなぁ。なんて思いながら言い訳を考えていた。

「まぁ、エターナルランドでしょう。まず先輩はホラーが大の苦手。なのにも関わらず、京楼遊園地なんてホラーが主な遊園地に行くはずありませんし、おそらく友達の1人はよくいる正憲先輩でしょう。流石にあの性格でセレブレリティパークに行ってるのは変ですから。」

つらつらと彼女の推理が流れていく。

それを聞いていて、この子の推理力を思い知らされる。何者なんだ?とか思うが当たってはいるだろうと自分の中でも完結したんだろう。

「正解…。」

ともう口に出して言っていた。

「では、私もそのグループに混じっていきます。問題ないですよね?」

「え、ん、どうだろ、皆に聞いてみたりしないと。」

彼女の声が聞こえるようにスピーカーに変えてスマホでチャットを開く。

どうやら何に乗るかなんて話をしてたらしく、そんな感じの文章が送られていた。

僕「みんな、1人、増えるのは大丈夫?」

なんとも迷惑な文章だろう…。なんて思いながら話を続ける。

「送ったよ。」

「ありがとうございます。」

やけに口調がしっかりしてるのが引っかかる。なんでだろう。初めて話すはずなのにな。

記憶とは別に身体、本能が自然と引っかかっているのは所々あって分かってはいるが、記憶が戻りはしなかった。

「あの。」

女の子は再び話しかけた。

「私の名前、確か苗字しか知らなかったですよね。フルネームは笹谷雪娘(ささたにゆきこ)です。ささはパンダの食べる笹。たには普通の谷。ゆきは空から降る雪。こは娘。」

それを聞いてすぐさまスマホで電話帳を開き、入力する。笹谷雪娘…。

かなり口調なり説明なりが丁寧なのがやっぱり引っかかるが、考えたって分かるはずもなく…。

ふと通知を見ると返信が来ていた。

みんな「大丈夫だよ」

似たような言葉で返信されていたがまとめるとこんな感じだった。

「大丈夫だってさ。明日、8時半に単尾駅集合だよ。」

「ありがとうございます。明日はぜひよろしくお願いします。」

なんだか全て任されるような言い方だったが、気にせずに適当に返事して電話を切った。

「…雪娘…か。」

なんでこんなに情報があるのにも関わらず記憶は戻らないんだろうか。

そしてなぜか気づいた時には朝だった。

「…?ん、?」

さっと携帯を掴む。見てみると8:10だった。

「…やべっ!」

単尾駅まで調べてみると徒歩15分。

大急ぎで用意して走って向かう。出た時刻は8:20。全力ダッシュすれば間に合うはずだ。そう思って家を出てからすぐに走り出した。

単尾駅。

「おーい!ごめん!遅れた!」

たどり着くとそこにはもう既に皆がいた。

「え?遅れてないよ?さ、行こ。」

時間を見ると8:27…。なんとか大丈夫だったようだ。

「今日はよろしくお願いします。先輩っ。」

雪娘が少しだけ微笑んで頭を下げた。

やっぱり何か凄く喉に小骨が刺さったように違和感があったが、思い出すことはもちろんなかった。

僕らは電車に乗ってそれぞれ席につく。

「ねえ、行ったらどこ行く?!」

ロングヘアの女の子。この子がゆかって女の子なのだと思った。

「そりゃジェットコースターだろ!」

正憲がハイテンションに答える。

「えー、まずはコーヒーカップじゃない?」

皆が色々案を出して長い会話が続いていた。

そして気がついた時には、エターナルランドにもう着いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ