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~ラストスカイ~  作者: たっくん
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第二十八話「祈り」

黒いオーラに当たった幸輔は腐る…のではなく、まさかの凶暴化した。

そう、黒いオーラが体の内部、外部、どちらも乗っ取ったということだろう。

「お前、名前…なんて言うんだ…。」

聞いたこともないような低いのか高いのか分からない声で話しかけてくる。

「…名前を聞くんなら、まず、自分で名乗れ!」

「雄翔くん?さっき言われたよ?幸輔って。」

「そうだよ、言っただろ。」

見た感じわかる通り、幸輔という人物の体が動いてるのではなく、その周りの黒いオーラが動いて話していた。

「幸輔…って人の方じゃなく、それを乗っ取ってる黒いオーラの方に聞いてんだよ!」

僕は黒いオーラにビシッと指を差した。

「…くくく。なんだと思う?」

笑いながらこっちを見てくるが、僕は答える気がない。すると向こうから言ってくれた。

黒煙(こくえん)だ…。まだお前はこの領域に入るべきではなかった。そして…元はお前じゃない、別のやつとオレは戦っていたんだ。」

その言葉に少し違和感を覚える。別のやつ…つまり、他にもこのループを使えるやつがいて、ループを使う事にこの黒煙が現れて対決をしていたってことか?

考えてる余裕なんてあるはずがない。また考えるのは後にするべきか。そう思った。

「さぁ、最終決戦を始めようか。なんせ、久々のバトルだからなぁ…。」

黒煙が幸輔を操りながら動かし始める。まるで操り人形のように…。変な動きをしながら。

変な動きをしていても意外と油断出来なかった。なぜなら急に綺麗に攻撃してきたからだ。

「っぶね…!」

僕はギリギリで幸輔の左拳を転がり込んで避ける。

「おう〜、自分でやるのは久々だけど今のを避けるとは…やるねぇ、雄翔くん?」

「な、僕の名前?」

「そこのお嬢ちゃんが呼んでたしな。」

黒煙は幸輔の口角を無理やり上にあげて、あたかも自分が笑ってるように見せた。

「…お前に雄翔くんなんて呼ばれたくねぇよ!」

素早く走り出し幸輔を上に蹴りあげる。

「ダメダメ〜。オレを狙わないと終わらないぜ?戦いは〜。」

確かにそれもそうだと思った。幸輔をやり過ぎたとしても体さえ残れば、アイツの、黒煙の操り人形となるだけ。

やっぱりどうしても本体を狙わないことには意味が無いと理解した。

「でもオレを倒そうとすればオレは最後の切り札を使うからな〜?」

また幸輔の口角を無理やり動かし笑ってるように見せた。

「どうする、どうすればアイツに攻撃を当てられる…?」

よくよく観察してみると、黒煙は幸輔の肌に触れていないことに気づいた。

「まさか…。」

僕は過去にあった出来事を思い出す。

それはさっきの事。僕が透けている時だ。皆に触れようとしても触れることが出来なかったが、物には触れることが出来た。…この原理でいけば、アイツも同じ…。服や靴などに触れることが出来るから動かせているだけで、本体に物は触れさせられる…。

僕はそれに賭けるしかなくなった。河川敷にはボールがあったからそれを使って思い切り蹴る。そう、いくつも。

上手く避けれてはいたけど流石の操り人形、全部かわすことなんて出来ずに何個か直撃してしまう。それも操り人形の方ではなく本体に。

「まぐれだな…。正憲より下手で良かったのかもしれない…。」

なんて思いながら僕は黒煙と幸輔に近づいた。

「返してもらうよ。この石は。」

黒煙のそばの幸輔の手から石を奪い取り、去ろうとする。

「…言った…ろ。はぁ…最期の…切り…札は…残して…るっ…てな…はぁ。」

血が大量に流れながら幸輔は口からものすごく大きな黒煙が飛び出してきた。

「危ない!」

目の前に雪娘が割り込んだ。そして幸輔の顔が真っ青になり倒れるのと同時に雪娘も倒れ込んだ。そして黒煙も空へと消えていった。

「雪娘!!」

僕は雪娘に慌てて駆け寄った。逆に幸輔は地面に倒れてそのまま亡くなった。

雪娘の体が段々と腐っていくのが分かる。

「雄翔…くん、聞い…て。」

僕はそう言った雪娘の口元に耳を近づける。

…小さな声である事を告げられた。それはとても重要なことだった。

「ご…めんね…。まか…せたよ?…大好き…。」

そう言った雪娘は泣きながら二度と口を開くことは無かった。

泣きたかった、泣きたかったけど、泣く訳にはいかなかった。

なぜなら、雪娘から任されたのだから…。

でも、本当に石を取り戻すのでいいんだろうか。

無かったことにするのはこの場所だけで良いんだろうか。

そして、思考を巡らせた僕は一つの結論にたどり着いた。

過去に僕が死んだ世界線があって、それはまさに雪娘が過去に来ることに繋がった世界線。

そして最期に教えてくれたその世界線。それは未来のこと。未来の自分という犠牲者を救うためにその世界線の未来へ祈ったとしたら…。

僕は迷わずに石のお守りを手に握りしめ祈っていた。

…この記憶のなかった物語を全てを終わらせに。

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