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~ラストスカイ~  作者: たっくん
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第二十五話「決戦」

幸輔のナイフを僕と正憲は上手くかわすことができた。

「しかもそのナイフ錆びてんじゃねぇか…!」

正憲が少し怒りながら睨みつけた。

「あぁ、そうさ、痛みだけじゃなく…にひ、にひひひ。」

「気味悪ぃな。」

正憲が少し後ずさりしてそう言った。

「…とにかく、美奈と雪娘のとこには行かせないようにしよう。」

僕は正憲に指示して再び構えをとる。

「…最初から行かせるわけないさ。」

「おうおう、強がっちゃって〜。ホントに反吐が出そうだ…。クソガキ…。」

オーラのような物がまとまり始める…。

「…なんだ、アイツの黒に近いようなオーラ…。」

「あんなのアニメとかでしか見たことねぇよ?」

僕達は身構えつつ、観察していた。

「…お前らを俺は…許さない!!」

素早いスピードで切り込んでくる。

「尋常じゃねぇ!」

僕と正憲はギリギリ綺麗にかわした。

「マジであの刃物を奪い取るかなんかしねぇと、このままじゃ体力的に避けきれなくなるぞ。」

正憲の言う通りだ。確かに避けてばかりでは勝てるわけが無い。

「どいつも…こいつも…。この世が滅べばいいんだ…。」

さっきと言ってることが変わってきている。やっぱり、この黒いオーラ…、何かある。

「死ねぇ!!!!」

思い切りまた切り込んできた。

超絶ギリギリで避けることに成功した。

「っ!」

しかし、避けたのは良かったが、美奈と雪娘との距離が離れていた。

「まずい!」

正憲も気づいたようで二人同時に走り出す。

しかし、あの黒いオーラが肉体強化してるのかさっきよりスピードが上がる。

「落ちろぉ…!!」

物凄いスピードでナイフを振り下ろした。

雪娘は怖くなって目を閉じてしまう。

「…?」

次の瞬間、雪娘が目を開けると、目の前に美奈が立っていた。

「…っはっ…ぐ…。」

幸輔がナイフを抜き、そのまま美奈が倒れ込んだ。

「美奈!!」

僕と正憲が走って美奈の元へ向かう。

「どけ!!」

正憲が走ってる勢いのまま幸輔を後ろへ蹴り飛ばした。

美奈は胸を深く刺されたようでもう息が出来なくなりかけていた。

「…ごめん…。もぅ、こぇ、出なぃゃ…。」

僕らはただ見つめるしか出来なかった。悲しい思いが込み上げては来るが、今はそれどころではない。

コイツを…殺人者を怒りで逆に殺したくなっていた。

「…待て、雄翔。」

正憲がゆっくりと動く僕の体を止めるために左手を掴む。

「…正憲…、止めないでくれ…。体が許してくれないんだ。」

「分かってる、俺もそうだ…!けど…、今すべきことはなんだ?!」

ふと言われて思い出した。

「…石を取り戻して…捨てた石を…捨てないようにする…。」

「だろ?!…頼む、今だけは我慢してくれ。また過去に戻ってこの事件が無かったことになれば…美奈は生き返る。逆に俺と美奈は石の存在を知らないことになるだろうけど…。」

それを言っていた正憲の目はとても悲しそうだった。

「…分かった、ただ、殺さないようにはする。重症になるかもだけど。」

「…それでいい。」

正憲は手を放して僕の隣で構えをとる。

「…美奈、俺らは勝つからな。」

後ろの方で美奈が目を閉じていた。…もう、引き取ったんだろう…。

雪娘が泣いてるのも、なんとなく察すことが出来たから…。おそらく…。

「ふぅうぅ…。」

大きな黒い息が幸輔の口から吹き出る。

「気味悪いぜ、ホント。」

「僕は胸糞悪いけど。」

思い切り僕らは幸輔に向かっていく。

ここまで来れば…ある意味ヤケだ。

ナイフを取り上げようとしたが、ギリギリで幸輔は空へナイフを投げ出した。

「なっ…?!」

クルクルと回るナイフがすぐに帰ってくる。

それをすぐさまキャッチして僕と正憲に切り裂いた。

「っ!」

上手い具合に避けることに成功したけど正憲は右腕を切り込まれた。

「…はぁ…っ、い、てぇ…。」

かなりの血が流れ出している。

正憲は右腕、僕は左腕…。

「…次は…、お前だ…。」

そう言ってナイフを雪娘の方へと向けた。

「…!絶対、雪娘ちゃんだけでも守るぞ。」

すっと正憲が構えをとる。

「そうだな、せめて…な。」

僕らの中で答えは決まっていた。皆で帰る。

確かに、この戦いが終わるまでは帰れない。

そして、この戦いが終わる頃に僕や正憲、雪娘が立っているという確信なんてない。単なる可能性でしかない。

「…絶対、生き返らせるからな。」

美奈の死体を正憲が見つめて右手拳を強く握りしめた。

「…にひひひひひひひひひひ!!」

奇妙な笑い方をする幸輔を見て、一段と苛立ちが増していく。

「…もし、ナイフを手に取ったら刺してしまうかもしれないけど、その時はごめん。」

僕がそっと正憲にそう言うと

「…いいや、多分、俺も同じだと思う。」

その返答があって少しだけ安心した。

…しかし、ここからがもっと壮絶な戦いになるのをまだ知らなかった。

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