第二十四話「僕の友達」
景許先生がやって来てしまった。
「まずい…!」
「今、景許先生に見つかると厄介よ?」
雪娘がとても不安そうに僕の顔を見つめた。
そしてお兄さんも少しまずいという顔をしていた。
判断はしてられない。
「…場所を変えよう!!」
僕は急いで雪娘の手を掴んで反対にお兄さんの手を掴み、一瞬で石に祈って現代へと帰る。
「…あれ、確かここから声がしたと思ったんだが…。ったく、雄翔のやつ、どこいった。」
景許先生はドアを閉めてどこかへ行ってしまった。そして石を使って場所を変えた僕らは、現代の単尾川河川敷にたどり着いた。
「ここで決闘だ…!」
僕はお兄さんの手を離し、雪娘を後ろへ追いやって守る体制に入る。
「ふっ、おもしれぇ…。じゃあ…。」
お兄さんはすっと体を伸ばして構えた。
「改めて…俺の名前は笹谷幸輔だ。」
幸輔はそう言って手にナイフを持ち出した。
「欲深き者め!恥を知れ!!」
幸輔がナイフを持って突撃してくる。
とっさに上手くかわすことができた。
「っ!ぶねぇな…!」
もう一度、ナイフで突撃して来た。
ギリギリかわせたが服が少し破けてしまう。
「…これくらい…!」
でも、なんとかしてあの刃物を使うのをやめさせなければ勝てない事は分かっていた。
僕は右回転して右足で蹴り飛ばそうとするがバク転でかわされてしまう。
「…身体能力がハンパねぇ…!」
「俺は雪娘を守るために体操部に入ってんだ。これくらい軽いに決まってんだろ!!」
思い切りナイフを振り回して地面を蹴り飛んでくる。
「っ!!!!!」
ギリギリかわしきれなくて左腕を少し削られた。血が左腕から溢れてくる。
「大丈夫?!」
「…どうだ?痛いだろ?高級ナイフ…だと思うよな?これ実は少し錆びてんだ。…コレがもっと深く食らったらどうなるかな…?」
ニヤニヤと笑いながら幸輔はナイフをゆっくりと触る。
「趣味悪ぃな。」
確かに左腕に痛みがあるのは感じてたが、正直、今はそんなことを考える余裕なんてなかった。
「なぁ、雪娘、お前、待ってろよ?こうなるのは次はお前だからな。」
本当に兄なのかと思うほどに睨みつけた顔が酷く恐ろしかった。
「…あんな女を守ろうとする男も男だな…。最終的に何も出来ずに死んでいく…。」
奇妙な笑みを幸輔が浮かべながら刃物を持ち変える。
「二人ともあの世で後悔して暮らせよな…!!」
幸輔が素早く切り込みを入れてくる。
後ろに下がりながら上手く避ける。
「さっさとナイフの餌食になれよ…!!」
「嫌だ…!僕は勝って石のお守りを取り戻すんだ…!!」
僕がそう言いきった瞬間、
「…クソが。もう死んじまえよ…!!」
幸輔が構えてまたナイフを切りつけようとしたから、僕は後ろに下がろうとするが川だった。
「終わりだ!!」
その瞬間、横から素早く走ってきたアイツが幸輔を蹴り飛ばした。
「っ!誰だ…!」
「…俺の友達に好き勝手してくれんじゃねぇか!」
正憲だ。正憲と美奈が駆けつけてくれた。
「ま、正憲…!美奈!」
「大丈夫?ごめんね!遅れちゃって!私が雪娘ちゃんを守るから!」
美奈は走って雪娘のそばへと駆け寄っていった。
「なぁ、雄翔、駆けつけるの遅れたの、なんでか分かるか?お前が走り出した所が分からなすぎてあっちこっち行ってたんだぜ?」
「あ、ごめん、こっちも過去に行ったりして帰ってきたりしてたから…。」
正憲は呆れたようにため息をついて
「…コイツのせいだよな。とりあえずぶっ倒すぜ…。一緒にな!」
僕と正憲は二人で幸輔に構えをとった。
「…っ、どいつもこいつも…俺の邪魔をする…。許されることじゃねぇな…!」
「それはこっちのセリフでもあるぜ。」
幸輔を正憲が睨みつけてそう言った。
「は?何を言ってんだ?俺は許されないことはしてない。」
「…その石のお守りってのは雄翔の持ち物だったんだろ?じゃあ返さなきゃ許されることじゃねぇな?」
正憲が正論で上手く追い詰めていく。
「いいや、これは返さないね。こんな便利な物はもっと優秀な人が扱うべきだ。そんなクソ野郎みてぇなやつに扱わせてはならない…!!」
僕と正憲は声も出なかった。なぜなら完璧に幸輔のことを言ってるように感じたからだ。
「…それ、ブーメランすぎねぇか?」
「うるせぇな、屁理屈言ってんじゃねぇ!!」
「別に屁理屈じゃねぇよ、事実だよ。」
正憲が呆れてニヤつきながらそう言った。
「うるせぇ!うるせぇ!!」
「うるさいのはどっちだってのに…。」
どんどん幸輔の怒りが増していく。突然、幸輔が走り込んでナイフを切りつけようとしてきた。
「言っても聞く奴じゃねぇか…。」
僕が構えてから正憲は呆れた声でそう言ってからゆっくりと構えをとった。




