第二話「行動とお守り」
携帯が鳴り響き、スマホを見ると
『吉川 匠』と書かれていた。
とりあえずスマホをとり、耳に当てる。
「おう!出た出た!今さ、お前の家の前にいるんだけど、まだ帰ってないって言うから気になってさ。」
「ごめん、今、女の子をさらった車を追ってて見失っちゃって探してるとこなんだけど。」
「え、マジか?!どこら辺だ?」
「え?…。」
周りを見渡してバス停が近くにあった。駆け寄ると『単尾川』と書いてあった。
「単尾川のバス停だよ。」
「なるほどな。車の番号は?」
「それが見てないんだよね…。」
流石にやっぱり番号が分からないんじゃこうやって探し迷うこともなかったんだろうなと今となっては思う。
「じゃあ、車の種類は?」
「んー、黒い軽なのは分かったけどそれ以外は…。」
「…黒い軽自動車か。」
不意に背後から声がした。
「…もしかして、君たちの追ってるのはこんな車じゃないかい?」
背の高いスーツを着た男性が見せてきたのはあの女の子をさらった男たちの車だった。
「それです!」
「あ、そうだ、僕は刑事なんだけど、良かったら詳しく聞かせてくれないかな。」
どうやら刑事さんだったようだ。
「その車、実は番号が隠されてるんだ。そしてよく、ここら辺を行ったり来たりしてるんだ。」
そう言った瞬間、すぐ横を黒い軽自動車が通った。
「!あれ…!!」
正憲の言葉にすぐに便乗して3人は走り出した。
今度こそ絶対、助け出す。そう思って走っていたが、正憲が不意に段差につまづいて転んでしまった。
「っ!大丈夫か!」
僕が駆け寄ると正憲は膝を抑えつつ
「おう、なんとか、擦りむいたけど。」
少しだけ膝から血が出ていた。
「…あ!車は?!」
周りを見ると黒い車はなく、警察の人の姿もなかった。
「…警察の人が追ってくれてるから…大丈夫かな。」
とりあえず、正憲の膝の怪我を何とかするためにカバンを探る。
僕のカバンの中身はどうやらしっかりしており、救急箱セットのようなものが入っていた。
そこから絆創膏を取り出して正憲に手渡す。
「お、サンキューな。」
笑顔で絆創膏を膝に貼った。
そこまでは良かったが、また振り出しに戻った。
「んー、どうする?今から。」
携帯を取り出して時間を確認する。
2022年6月24日18:26…。あれからもうすぐ1時間程経つだろう。
「でもこれ以上、探すのはやめた方がいいと思う。親も心配するから。」
ということで僕らは帰ることにした。
僕は帰る場所が分からないからとりあえず歩幅を合わせつつ少し遅れて歩くようにしながら帰っていた。
「じゃぁな。」
と言われたが、まだ曲がり角ではない。右を見ると『大西』と表札があった。
どうやらこの家が自分の家らしい。
…これを見ても全く思い出せなくてもどかしい思いをしていたが、家へ入る。
「た、ただいま~…。」
「あ、お兄ちゃん!おかえり!」
ツインテールの女の子がお出迎えに来る。妹のようだ。
「あ、うん、ただいま。」
靴をそっと脱ぎ、妹の後ろからリビングへ向かおうとする。
「ん?お兄ちゃん、カバン置いてきたら?」
「え、あー、そうだな。ありがとう。」
また問題発生。どこが自分の部屋かなんて分からず、とりあえず一つずつ開けようとした。
「お兄ちゃん?部屋は2階だよ?」
まずい、怪しまれた。…?なんでそもそも隠そうとするんだ?記憶が無いことを言えばいいだけじゃないか?なんで今まで合わせるような行動ばかりとっていたんだ?と思い、言おうとすると
「あ、トイレ行きたかったのね。」
なんと開いたところがトイレだった。
「え、あー!そう、ずっと我慢しててさ。はは。」
そしてトイレに入る。便座に座って大きなため息を吐く。
言えばいいはずなのになぜか言えない。謎の羞恥心のようなものが働いてるのだろうか。
別に恥ずかしがることなんてないはずなのに。
「ん?」
今ふと気づいた。カバンの外側のポケットに何か入っていた。
見てみるとどうやら小さな箱のようでその箱には『2002年7月30日』と記入されていた。
「…2002年。今から20年も前じゃん…。」
気になって箱を開けてみると中には小さな貝殻のお守りのようなものが入っていた。
「腕に付けれるようになってるな…。」
今はいいやと思い、ポケットにしまった。
そしてトイレから出て2階へと向かう。
「…えっとー。」
2階には扉が4つもあったが、その扉にはしっかりとプレートがかけられていた。
『おとうさんとおかあさん』『おにいちゃん』『おねえちゃん』『みい』と書かれている。
どれも子どもが書いたように少し荒かった。
多分、おにいちゃんと書かれた部屋だと思い部屋を開ける。その部屋はとてもシンプルで何か強い印象は感じられなかった。
「…僕、こんな部屋に住んでたんだ。でもなんでだ?全く思い出せないのは…。」
そう思いながら僕はカバンを椅子の後ろにかけた。