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~ラストスカイ~  作者: たっくん
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第十八話「ヒーロー」

三人は警察に見つからないように周りをよく確認しながらゆっくりと単尾倉庫へと向かっていた。

「大丈夫?いない??」

「…だい、じょうぶそう…!」

正憲が先陣を切って先を見てから安全であれば歩き出すという方法で向かっていた。

そして、単尾倉庫へたどり着くと倉庫の番号に1とついてあった。

その中を見てみると人は全くいなかった。

「え?もしかしてさ、この数字、いくつかあって、その中のどこかに居たりする?」

「…もしくはここじゃないのかも…。」

正憲が他のところも走って見に行く。

「…ダメだ!2もいない。…3も…いねぇ!」

結局、どこの倉庫にもいなかった。そもそも鍵をつけとけなんて思うが、今は気にせずにお母さんを探すことに集中した。

「どうする?いなかったよ?」

「また振り出し…だな。」

なんでなんだと正憲が頭を悩ませた。

雪娘はもう無理なのかなと思い、空を見上げる。

「…空、綺麗だな。」

もう気づいたら9時半だった。空は満天の星空だった。今の状態がヤバいという焦りが一瞬でも忘れられるほどの…。

「ねえ、このまま雄翔くんがいなくなったら、どうなるんだろう。」

ふと美奈が小さく呟いた。

「そりゃ多分…、俺たちの記憶からも消えるだろ。だって、話的に存在というそのもの自体が消えるんだから…。」

空を見上げた正憲が悲しい顔をして答えた。

「…嫌だよ。大切な記憶なのに、皆で楽しかった記憶なのに。」

美奈がそう言っていたが、雪娘は不思議な感情でいた。でも雪娘自身もいなくなって欲しくないと思っていた。

「…なぁ、まだ間に合うもんな。諦めないでいこうぜ…!」

正憲の元気な声に二人は頷く。そして雪娘が笑って口を開いた。

「もし、カメラマンなら何を撮りたいか考えたんだけど、この単尾倉庫方向で映える写真が撮れる場所は…。」

皆でゆっくりと首をその方向へ向けていく。

「あ!あれ!」

綺麗なネオンが大陽橋に光り輝いていた。なんで大陽橋と言われてるかは大陽川が流れているから。

単尾川よりも大陽川の方が大きく広い川だ。

「…でもいないよ?」

美奈が辺りを見渡して確認していく。

「え?じゃあどっか行っちまったってことか?!」

正憲がため息を大きくついて膝に手をついた。

「…もしかするとマズイかもしれない。」

雪娘の言葉を聞いて皆がどういうことか分からず近寄る。

「…コレ。」

それはカメラだった。まるっきりお母さんの持っていたカメラだった。

「…拐われた…ってこと?!」

「…多分。流石にコレを落として気づかないわけない。」

つまり、ここで誰かがやって来てお母さんは拐われた。そしてカメラを落としてしまい、ここにいないということ。

「でもどこに?!」

「…分からない。」

流石の雪娘もここまでだった。雪娘は申し訳なさそうな声で呟いた。

「…もし、拐ったとしたら…車だと暴れて逃げられる、徒歩でも逃げられる。逃げられない方法は近くの建物、もしくは人目につかない…。」

正憲が大陽橋の近くを眺めていると

「あそこかもしれない!」

指を差した方向は大陽川河川敷の橋の下だった。降りる方法は単尾倉庫から坂道になってるところを降りるだけで、三人は走っていく。

すると橋の下で何人かが女の人を囲んでいた。

「あれ…!お母さんじゃない?!」

やっと見つけることに成功した。

「見つけたけど、あのヤンキーたち…どうするの?」

でも、どうやって助け出すか悩んでいると、もう正憲が走り出していた。

「許せねぇ!おい!その人を離せ!!!」

思い切り蹴りを入れようとしたが手で軽々と受け止められてしまう。

「っ!」

「なんだ。雑魚。」

ヤンキーににやつかれて振り回され飛ばされてしまう。

「ぐっ!!」

「おいおい、ガキは帰れな?」

「にしても最高なバイトだな、この女殴るだけで大金が手に入るなんてな。」

そう言ってお母さんを殴りつけていた。

「や…やめろ…!!」

ゆっくりと正憲が立ち上がってまたヤンキーに立ち向かう。

腕から突進をしようとしたが、いとも簡単に受け止められ、ぐるっと回転させられ投げ飛ばされる。

「おーい、痛い思いしたくないだろ?やめておけってのに〜。」

「正憲!」

美奈が走って駆け寄ろうとした。

「来…るな!!はぁ…お前は雪娘ちゃんと雄翔を探しにいけ…!!」

正憲の顔は真剣で血が少し付いていた。

「…ほぉ、なんだ?カッコつけか?お?」

真っ直ぐ正憲はヤンキーに蹴り飛ばされてしまう。

「っぐぅ!…はぁ…はぁはぁ…っ。早く行け…!!」

雪娘と美奈は猛ダッシュで大陽川河川敷を後にした。

「…女の子を助けて、お前はヒーロー気取りか?なぁ?」

ヤンキーに言われるが正憲はゆっくり立ち上がって荒い息を抑えながら笑ってこう言った。

「助けることがヒーローなら誰でもヒーローになれるだろ。」

と。

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