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~ラストスカイ~  作者: たっくん
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第十五話「出会い」

僕らはお母さんを見つけ出した。

「あれがお母さんなんだ。」

お母さんは写真を撮っていてこっちには気づいてないようだった。

「…確か、お母さんとお父さんの出会いは…。ここの川と木を何回も撮って中々いい画が撮れなくて困ってたけどなんとか頑張って撮れてから、次に公園の写真、子どもたちの写真を撮ろうとした時に、子どもが転んでしまったところを助けてあげて…。そこからお父さんが駆けつけて絆創膏を渡してあげて、子どもが笑顔で帰っていくのを見送ったあとからいい感じになっていった…って話だったよ。」

僕がツラツラと長く出会いの話を話した。

「なんか、いい出会いだな。それ。」

「いいなぁ、憧れちゃうなぁ。」

「あ、本当だ。写真で苦戦して首傾げてる。」

雪娘がお母さんの方を指差して注目させる。

お母さんは困ったような顔をしてうーんと言うばかりだった。

全くこっちに気づく様子すらない。なんなら話しかけても気づかないくらいに真剣だった。

「雄翔くんのお母さんカッコイイね。」

僕に向かって美奈がにっこりと微笑んでいた。

「そういや、最近、雄翔のお母さん見てないな。」

正憲がそう言った後に僕は小さな声で答えた。

「お母さんは…亡くなったんだよ。5年前に自分の好きな仕事を始めて、そのすぐあとに…。」

「…ぁ。すまん、思い出させて。」

正憲がすぐさま頭を下げて謝った。

「…ねえ、お母さんの仕事、何をしてたの?」

雪娘が隣から顔を出して聞いてきた。

「…幼稚園の先生だよ。幼稚園の先生になってすぐの時に、子どもたちとお散歩してる時に、小学生くらいの女の子が横断しようとしたんだけど、転んでしまって横から来る大型トラックに轢かれそうになったところを守ろうとして…。」

周りが一気に静まり返って悲しげな顔をしていた。

「あ、もう次の場所に行くみたいだよ。」

雪娘の合図で皆、気持ちを切り替えてお母さんの方に注目する。

お母さんは真っ直ぐ歩き出して旧単尾川公園の方へ向かっていた。

「ところで今は何時?」

スマホを取り出すが圏外となっていた。まぁ、それはそうか。そう思って腕時計を見る。

「午後6時だよ。」

もうすぐ夜になる。流石に暗くなりすぎると警察に保護されてしまい、全て無くなってしまう可能性があるから、それを十分注意してはいた。

お母さんは途中でコンビニに入っていった。

「待つ?」

「中に入る方がいいのかな。」

とりあえず入ることにしてすーっと雑誌コーナーへと向かう。

「…何買ってる?」

「……んー、あれは…水。」

「水??なんで?」

「さぁ、なんでかなんて知らないよ。」

「よく水飲んでたような…。」

そしてコンビニをお母さんは去っていった。

僕らはそれを見てからすぐ後をすっと追いかけた。

もうすぐ旧単尾川公園に着こうとしていた。

「…もうすぐだね、この後から会ってないんだよね?」

「うん、どこかで歯車が狂っちゃってるんだ。」

美奈の質問に正憲が答えてお母さんの方を凝視する。するとお母さんは立ち止まってからカバンから何か取り出した。

「…え?」

取り出した物は薬だった。

「…病院の薬、大丈夫、問題は無い。」

「いや、どこに注目してんだよ。」

雪娘の言葉に対して僕は笑いつつツッコミを入れた。

「あ、水ってコレに使うんだ。」

お母さんは水の蓋を開け、薬を口に入れようとした。

その瞬間、曲がり角から帽子とヘッドホンとマスク付けた若いお兄さんのような人がお母さんにぶつかり、薬が落ちてしまった。

「すみません。」

謎のお兄さんはそう行ってお母さんの前から立ち去っていく。突然、急に走り出した。もちろん、僕らの方に気づかないでいるからぶつかった。

「い…てて。」

「大丈夫?ごめんね。」

そう言っただけでお兄さんはすぐさま立ち去っていった。

そして、お母さんの落ちた薬はコロコロと溝へ入っていってしまった。

「あ。…コレかな?ここが変わった部分?」

「…だとしたらあの人が変えた人?」

皆がすっとお兄さんの後ろ姿を見る。

「見覚えある?」

「ない。」

「ないなぁ。」

「ないよね?」

「うん。」

もちろんのこと、全員ないと答えた。

「じゃあ違うのかな?」

「え、てことは問題なく出会えるんじゃない?」

そして僕らはもう一度体を向き直してから旧単尾川公園に入ったお母さんを見る。

お母さんの目の前で子どもが転けそうになる。

「よっと。大丈夫か?」

ギリギリで助けたのはなんとお父さんだった。

…ここで全て変わっている。話の内容であればお父さんは間に合わずにお母さんが先で後からお父さんが絆創膏…のはず。

完璧にここでもう変わっていた。お母さん…じゃなく、お父さんが変わっている?

「まずい、お母さんの方を止めよう!」

「うん!」

正憲と美奈は事の重大さに気づいて走り出そうとした。

「待って。大丈夫だよ。」

僕はポケットに入れてた石のお守りに手を当てようとした。…しかし、無かった。

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