第十四話「変えられた歴史」
なぜか僕の体は透け始めていた。
「どう…して…?!…はぁ…皆…!」
焦って皆に触れようとするが触れることは出来ずにいた。
「…雄翔くん…。」
皆が心配そうに見つめる中、雪娘が先陣切って口を開いた。
「多分、過去よ。過去になんらかしら雄翔くんに危害が加わった。そして今の雄翔くんの存在が消えようとしてるのよ。やっぱりあの時川に投げ捨てたのが誰かに拾われて…。」
やはりずっと心配していたのか辻褄の合う口ぶりで言った。
「でもさ、もし危害が加わって僕が死んだとしたらすぐ消えるんじゃねぇか?」
「…それもそっか…。」
僕の言葉を聞いてから雪娘は考え直し始める。
「何の話をしてるか理解できないんだけど、過去?過去に行くとかどうこう…。」
正憲が近寄って事情を説明しろと言わんばかりの顔をした。
そして僕らは全て話した。あったこと全てを…。
「過去に行き来できる石…か。それがもう一つあって、それを別の世界線で川に投げ捨てたと…。そしてそれを取られて雄翔になんらかの問題があったのではないかってことか。」
正憲は納得したように頷いていた。
「…それで全部消えてない理由だろ?多分だけど、雄翔自身には危害は来てないんじゃないか?」
「…え?そうなの?」
正憲の発言に対して僕は質問で返す。
「てことはだ。恐らくだけど雄翔の生まれる前から変わったんじゃないかってこと。つまり、多分だけど、妹さんやお姉さんも…。」
それを思い出して皆が僕の家へと猛ダッシュし始める。
そして家に着いた途端、僕は大急ぎで中に駆け込んだ。
すると、萌守もお姉ちゃんも薄くなっていて2人ともソファに座り悩んでいた。
「あ、雄翔!…雄翔もなのね…。」
お姉ちゃんがそっと僕の肩に手を置いた。
「…お邪魔します…。」
正憲たちが部屋に入ってくる。
「いらっしゃい、とは言っても今は薄いことが気になりすぎてるんだけど…。なんか知らない?」
「あ…それは…。」
正憲がすっと口に出そうとした瞬間、僕は取り押さえて
「いや、分かんないんだ。でもきっと、大丈夫だから。」
「お兄ちゃん、本当に?」
萌守が近づいて泣きそうな顔で見つめてくる。
「…大丈夫だよ、絶対。」
そう言い僕は階段をのぼり、部屋へと駆け込んだ。後から皆が着いてきて部屋に入ってくる。
「何してるの?」
僕は慌てて自分の物を置いてる押し入れからアルバムを取り出す。
「多分、お父さんとお母さんの運命が変わったんだ。だから僕らの身体が透け始めてたんだよ。」
僕はアルバムの中からお母さんとお父さんの思い出の部分を開く。
すると写真もたくさん消えかかっていることが分かった。
「一番…消えてないところは…。あった。これだ!」
それは元写真家だったお母さんのお父さんと出会う前の一枚。綺麗な川の写真だった。
「日付は…。2002年7月30日…!単尾川での写真だよ!」
そう言って僕は石を手に取り一人で向かおうとした。しかし、雪娘が手を繋いだ。
「一人で行くのは、ちょっと酷いんじゃない?」
「手伝わさせろよ。」
「友達でしょ?」
三人が手を繋いで一つになっていた。
「…みんな…。うん!よし、じゃあ、行こう!!」
そんな過去まで行けるかは分からない。でもやってみるしかない。そう思いながら祈りを心の中で叫んだ。
そして僕らは気がつくと空き地の真ん中で寝転んでいた。
「あれ…。俺たち…。」
「そうだ、過去に来たんだよね?」
美奈と正憲は初めてのことで周りをキョロキョロしていた。
「…出会った場所の写真…。お父さんの顔写真…。お母さんの顔写真…っと。」
僕は分かるように皆に手渡した。
「多分、誰か他の人が運命を変えたと思うけど、それが誰だか検討はつかないからそれは後回しで、とりあえずお父さんとお母さんをくっつけよう!」
「「「おー!」」」
僕の合図で三人は一緒に歩いて探し回る。
「でも単尾川は最後の写真だよね?単尾川って結構長いよ?」
「…それもそうだけど…。」
美奈の言う通りではあった。写真一枚だけでそこにたどり着けるかと言われると地元民でも難しい。
「…手がかりはお母さんやお父さんの写真か〜。」
正憲が空にすっとかざして見つめる。
「いや、空にかざしても分からないでしょ〜。」
美奈が正憲にツッコミを自然と入れる。これがいつも通りだ。…これをもう見れないのかとふと思い寂しく感じてしまう。
「うーん、もう少し手がかりがあればいいんだけどね〜。」
美奈がそう言うと雪娘がやっと口を開いた。
「手がかりなら多分あるよ。この写真を見る限り、お母さんは写真家って言ったでしょ?それ通りに行けばお母さんはカメラを持ってるはず。」
「つまり、この顔の人でカメラ持ってたら…。」
皆が段々テンションが上がってくる。
「そう、ほらあの人とか持ってるじゃん。」
美奈が笑って指を差す方向にはポニーテールの女の人がカメラを持っていた。
「…あの人じゃん!!」
僕達はお母さんを見つけ出したのだ。




