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~ラストスカイ~  作者: たっくん
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第十三話「新たな一難」

次の日、いつも通り学校へ向かった。

学校の名前を記憶をなくしてから初めてちゃんと見た気がする。

大陽(たいよう)中学校』だった。

そして下駄箱で靴を上履きに履き替えて2年4組の教室へ向かった。

教室に向かうといつものメンバーが話していた。

ちなみにゆかは漢字では癒神(ゆか)って書くらしい。うん、珍しい。

「今日、帰ってから皆で単尾川の河川敷で遊ばない?」

美奈が笑顔で質問を投げかけた。

「おう、いいよ、遊ぼう。」

「僕もいいよ。」

正憲と僕が賛同する。

「あ、ごめん、私は行けないや。お母さんと行くとこあるんだ。」

「僕も塾で無理なので。」

癒神と龍哉は逆に断った。

「3人か〜。偶数が良いよね。あ、そうだ。雪娘ちゃん連れてきてよ!」

美奈は元気よく顔を僕に近づけてそう言ってきた。

「え、あー、いいけど。」

行けるかさえも聞いてないのに、とりあえず大丈夫だろうという思いをなぜだか持っていた。

まぁ、雪娘のことだから暇してるだろうなって考えはあった。

そして雪娘を屋上に呼び出し聞いた。

「まぁ、いいけど?丁度暇してたし。」

その予想は大当たり。心の中でガッツポーズを決めた。

「それに何かあったら助けてくれるんでしょ?」

そっと振り向いた雪娘の姿が少しだけ可愛く見えた。よく分からない感情。

「助けるよ、もちろん。」

屋上から降りようとした時、景許先生が上へと向かってくるのがわかった。

「まずい。」

体が反射的に逃げようとしたが逃げ場がない。

少し慌ててる僕に気づいた雪娘は屋上の手前にある隠し扉の中に僕を引き込んだ。

「ここでじっとしててね。」

…よく雪娘はこんなところ知ってたなと思う。下に少し隙間が空いてるのと、薄い半透明のガラスが顔の前にあった。

人一人しか入れないくらいで隠れても普段ならバレなさそうでかくれんぼには持ってこいだった。

しばらくして、景許先生の声がなくなり階段を降りていく音がした。

「もういいよ。」

すっと隠し扉を開けて雪娘が出してくれる。

「ありがと、助かったよ。」

「たまには私も助けないとね。」

そう言い顔は微笑んでいた。

そして放課後、単尾川の河川敷へ4人で向かっていた。

「にしてもまさか雪娘ちゃんが大金持ちとは…。」

「まぁね、でもやっぱお金よりは愛の方が大切よ。」

雪娘が含んだ笑みを浮かべてそう僕らに言った。

「まぁ、でも俺はお金も愛も今はいらねぇかなー。」

正憲がサッカーボールを1人でヘディングし続けながらそう言った。

「今はお前ら友達が居てくれるだけで俺は十分だ!」

ヘディングしてたボールを手に持ち、後ろを少し振り返って大きく笑った。

「そうね、私も同じかな。」

美奈も正憲の意見に賛同していた。

しばらく歩いていると子どもたちが河川敷で遊んでいた。

「あ、空いてないか。まぁ、橋の下なら空いてるだろ。」

河川敷には日当たりのいい場所と橋の下という選択肢があった。そして橋の下でやることにした。

「いくぞー!」

正憲が大きくボールを蹴る。しかし、橋に当たって地面に叩きつけられる。

「やっぱこの橋、邪魔だよな〜。」

そんなどうしようもない愚痴を言いつつもサッカーをする。

「へい!雪娘ちゃん!パス!」

正憲の的確な声と雪娘の意外な上手さに圧倒される。

美奈&僕はペースを飲まれてしまい、26:3で負けてしまった。

「はぁー、疲れたぁー。」

川辺に座って川の流れを見つめていた。橋の外の川には大きな赤い月が水面に綺麗に映っていた。そして子どもたちが赤く染まって

「もう帰る時間だな、帰るか!」

その子どもたちは帰って行った。

「じゃあ、そろそろ帰るか〜。」

正憲がボールを指でクルクルと回しながら僕らにそう言った。

「そうだね。もうそろそろ家に帰ろっか。多分帰ったら丁度7時くらいだと思うよ。」

河川敷を後にしてゆっくりと僕らは歩いて帰っていた。

「いやぁ、マジで雪娘ちゃん上手かったよな。サッカーの才能あるぜ?だって雄翔を抜いたんだから。」

正憲がまだボールをクルクルしながら雪娘に褒めていた。でも正直な話、抜かれたのは確かだった。

「ね、上手かったよ〜!やまとなしでこだね!」

「それを言うならやまとなでしこ、でしょ?」

美奈の天然な発言に対して雪娘は訂正のツッコミを入れた。

「日に日に上達してる俺たちもいつか雪娘ちゃんと対等に戦える日が来るといいなぁー!」

嬉しそうにボールを夕日に重ねて空を見上げた。それを僕らも見つめていた。

「もしかしたら雪娘ちゃん、このままプロサッカー選手まっしぐら!だったりして!」

美奈が雪娘の肩に手を置いてにっこり微笑んだ。

「雄翔くんもそう思わない?…ねえ!雄翔くん?!」

美奈の驚く声に反応して自分を見る。

なんと僕の体が薄くなって消えかかっていた。

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