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~ラストスカイ~  作者: たっくん
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第十二話「改変」

気がつくと僕らは萌守をこっそり追いかける世界線へと向かっていた。

「…今回は多分きっと変わってるはずだ。」

僕はそう言って雪娘の心を和らげようとする。

「そうなのかな。…そうならいいんだけどさ。」

雪娘は影から心配そうに萌守を見つめていた。

…やっぱり死なせたくない気持ちは変わらないんだな。

そう思って萌守を見ている。そして萌守が交差点に入る。

しかし、トラックがやってきて萌守を追突して交通事故が起きてしまった。

「え?!変わんないよ?!石がなくなっても死んでるじゃん!」

雪娘が僕の服を引っ張りながら大声で叫ぶ。

「…なんで?なんでなんだ?!」

考えろ考えろ…考えろ…考えろ!!

そしてハッとして僕はやっと理解した。

「分かった。足りなかったんだ…。」

僕は雪娘を抱き寄せ石に祈って後を付けるところまで戻ってきた。

「足りないってどういうことだったの?」

「ま、見ててよ。」

そう言って僕は陰からさっと出ていく。

「萌守〜!」

事故の起きる交差点の手前で僕が呼んで止めた。

「あ、お兄ちゃん…。」

その瞬間、交差点を素早く横切るトラックを見た。

「はい、これ、落ちてたぞ?」

僕はベッドで拾った5000円を手渡した。

「あっ?!…ありがと。」

にっこり萌守は微笑んだ。

「てか、何に使うんだ?その5000円。」

「え、忘れたの?!26日はお姉ちゃんの誕生日だよ?」

「あ…。」

今、本能の記憶が思い出した。

「そうだったなぁ、忘れてたや、あはは…。」

なんとか笑って誤魔化していた。

「でもありがと!あ、そうだ、みんなで行こーよ!」

「いや、大丈夫、家で待ってるよ。」

そう言うと萌守は頬を少し膨らませたがすぐ笑って

「分かった、行ってくる!」

そう言って萌守は背を向けて歩き始めた。

そして僕も振り向いて帰ろうとし始めた。

「え、このまま行かせたらまたトラック来るかもしれないよ?!」

「大丈夫、多分、石が2つあったから2回トラックが来て確実になっていたんだよ。」

雪娘が心配そうに萌守を見つめると、萌守は問題なく交差点を突き抜けて行った。

「…ホントだ…。」

「ね。」

正直、僕の中でも確信ではなかったが、恐らくそうだろうと思い言い切った。

「足りないっていうのは僕たちの改変のことで、この追いかけてる時は改変をしてなかったんだ。改変をしたことによって、今の萌守は生き延びることができたんだ。」

思ったよりも多く死なせてしまって戸惑ってはいたが結果、生き延びれたのなら仕方ないかなと思い始めてもいた。

家に帰宅してから僕らは萌守の帰りを待っていた。

「でも石、あんな川なんかに放り投げて大丈夫だったのかな?」

雪娘がベッドに座りながら足をブラつかせてそう言った。

「大丈夫だと思うけど、なんか心配?」

僕がベッドに寝転んで携帯を持ちながらそう言った。

「心配…というか…。」

言葉をゆっくり選んで話そうとはしていたが結局、詰まるに詰まって話すことはなく、次の会話が展開され始めた。

「…このループさ、私たちだけなのかな。…しかも身の回りの人達が死んでいくのを何度も見なきゃいけないのかな…。」

俯いて雪娘は両手を祈るようにして握りながら、小さく呟いた。

「…分からない。僕らが記憶のない理由と関係があるのかすらも分からないから、何とも言えない…。」

雪娘の言いたいことは痛いほど分かる。美奈が死んだ時、萌守が死んだ時、記憶のない僕は関わりが深い訳では無いが、記憶のある頃の僕の関わりが深いせいで心の痛みが強い。

「その石、これからは雄翔くんだけが使えるんだよね。」

「え、あー、うん。」

石に顔を覗かせながら頷く。

「じゃあさ、雄翔くんが死んじゃったら…どうなるの。 」

雪娘が言おうとしてることは分かるが普通の人が聞いたら不快に思う人もいるだろうなと思った。

「死んだら…か。」

正直言って考えたこともなかった。実際、雪娘は石を持っていても遊園地で一度死んでいる。そして始めの誘拐された時も死んでいる。

この石が命を守ってくれるという保証はない。

つまり、僕が死ねばこの石は受け継げる人は警察…になるのか?それとも雪娘がそばに居てくれたら雪娘が僕の死なない世界線へ戻ってくれたりするのか?

なんて思ってはいたけど口にはしなかった。

「…ただいまー!」

玄関から陽気な声がした。萌守だ。

「おかえり。」

そして僕らはお姉ちゃんの誕生日の準備をした。飾り付けや盛り付けなど。

少ししてからお姉ちゃんが帰宅してくる。

「ただいま〜。」

「「おかえりー!お姉ちゃん!誕生日!おめでとう!」」

「わー、ありがとう〜!!」

雪娘はもちろん2階の僕の部屋でワイワイする声を聞いてるだけだった。

「…本当に雄翔くんに何かあったら…。」

まだ雪娘の中の不安は取り除けないでいた。

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