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~ラストスカイ~  作者: たっくん
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第十話「満身創痍」

2人で次は追いかける前の夜まで戻った。

チラシを手にしたところまで戻った。

「とりあえず、まずはもう少しだけこの部屋を探ってみるのもありだね。」

「そうね。」

千切られた紙もどこにあるのか分からずに探していると萌守のポケットからクシャと紙の音がした。

「あ、これって…。」

ポケットから取り出すと机の上の千切られたノートの紙だった。中身は

「…えっと…ケーキ、プレゼント、装飾品、計5000円以内…。」

「なんとなく分かったわ。」

雪娘がニヤリと笑いながらそう言った。

「分かった?」

「ええ。おそらく、この子は誕生日、誰かのお祝いのために朝早くから仕込もうとしてたのよ。」

確かに辻褄は全てが合う。

「…誰の誕生日なのかは分からないけど。」

雪娘の言う通り。誰の誕生日なのか分からない。でも分からなくても問題はないのではないかと僕は思った。

…ふと萌守の顔を見つめる。可愛い寝顔だなと思った。やっぱり死なせたくない。そう思う感情が強く芽生えた。だからあまり死なせないように助け出したい。

朝になる前に僕らは一度部屋に戻った。千切られたノートの紙やチラシはしっかり元に戻して。唯一戻してないのは5000円だけ。

「あ、部屋を出たよ。」

僕らは家を出ようとする萌守に話しかけ一緒に行くことにした。

「萌守。どっこいっくの?」

「あ、お兄ちゃんと…彼女さん。」

「だから違うって…。」

僕は呆れたように言うが雪娘は満更ではなさそうな顔をしていた。

「雪娘お姉ちゃんでいいよ。」

雪娘は優しそうに微笑んでそう言った。

「分かった!雪娘お姉ちゃんっ!」

その可愛い微笑みに雪娘は胸を撃たれていた。

「それで、どこ行くか分からないけど一緒についていってもいい?」

「いいよ?」

萌守はあっさりOKしてくれた。ここから分かることは僕の誕生日のためでは無いということ。

とりあえず家を出発し、歩いて向かっていた。

「にしてもお兄ちゃんが女の人を連れてくることなんてなかったからビックリしちゃったや。」

「ごめんね?」

雪娘が少し申し訳なさそうに謝る。

「「謝る必要ないよ!」」

僕と萌守が同時に同じ言葉を放った。

「「あ。」」

それを見て雪娘は笑いを堪えて吹き出しそうになっていた。

しばらくして沢山色んな話をしていた。主に恋愛とか多かったけど。話していた時だった。

「わっ!」

萌守が転びそうになった。すぐさま雪娘が抱きしめ支えた。

「大丈夫?」

「ありがとう!」

萌守は感謝してお礼を言ってお辞儀をした。

「ううん、無事でよかった。」

「雪娘お姉ちゃん優しいから好き!」

その萌守の言葉を聞いて雪娘は嬉しそうな微笑みを浮かべた。

ルンルンに萌守が歩みを前に進める。

「…守りたいね、この子。」

小さな声で雪娘が呟いた。

「そうだな。」

同様に小さく呟いて萌守に歩幅を合わせに行く。

「2人は付き合わないの?」

唐突に萌守が質問を投げかけた。

「え?何だよ急に。」

僕がそう言うと、反対に雪娘は

「雄翔くんから告白して来たらいいかもなぁ〜。」

なんてことを言った。そりゃそれを聞いた萌守はもちろん…。

「お兄ちゃん!良かったね!」

という笑顔で微笑んで言ってくる。

実際のところ、好き、みたいな感情はあまりない。…けど、ちょっと今の返答で変わり始めかけていた。

やっぱ、男子ってチョロいんだろうなって自分の中でも思えた。

「お兄ちゃん!」

不意に後ろを振り返ってきた。

「今、告っちゃいなよ。」

萌守が小声でそう呟いてきた。

ふと雪娘を見ると「?」の顔をしていた。もちろん、口元を見ると期待してそうな微笑み方をしていた。

でも記憶を持っている時の自分は美奈という子が好きだから記憶を取り戻した瞬間に、雪娘を好きでいるかというと、それも分からない。

「考えとくね。」

萌守にそう呟き返すとちょっとだけ不満そうな顔をした後に

「絶対告白しなよ?後悔しちゃダメだよ。」

そう呟き返して萌守は雪娘と手を繋ぎ始めた。

僕は心の中で別のことを考えていた。「後悔しちゃダメ」という言葉に重みを感じていた。

でも今回は割とゆっくり歩いて行っているからトラックが来ることもないだろうと安心していたが、交差点に入った途端、大きなクラクションの音が鳴り響いた。

「え?!」

僕が驚いた瞬間、思い切り雪娘が萌守を抱きしめて庇おうとした。しかし、2人をトラックは思い切り轢いていった。

―そう、この作戦が失敗したのだ。

そして萌守、に加え、雪娘まで死亡してしまった。

おかしい、あんなに止まって話したりしていたのにトラックが来た意味が…。普通はもうトラックは過ぎ去っているはずなのに…。

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