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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

復活の日2

作者: 平 一悟

 あれから俺は元気が無かった。


 この間の三日月家の兄との戦いで俺……八重樫連(やえがしれん)との対戦は飛ぶように映像ディスクが売れて未だに売れ行きが世界一だそうだ。


 その事で親父は大喜びで、結果として八重樫家の名家(みょうけ)としての収入も今年は世界で屈指の状態になった。


 それで種馬問題も終了。


 何しろ貧乏だった八重樫家に溢れるほど金が入ってきている。


 それで親父は寝たきりだったのが元気に遊びまくるようになった。


 俺は憂鬱だ。


 世界中で次の対戦を望む声が上がったが、それは俺の育て役の唯さんが俺の体調が芳しく無くて……と止めてくれた。


 親父は少し残念そうだったが、流石、唯さんだ。


 俺は俺の中にいる、この世界の俺と違って女性が好きだ。


 だから、唯さんに惚れているのかもしれない。


 だが、そんな唯さんへの隠れた愛も、その後に唯さんが親父に提案した話で破壊された。


 俺は対戦を断る代わりにエロ本みたいなエロエロの服装で半裸やらヌードに近い写真を撮らされて写真集を作らされた。


 これは無い。


 あんまりだ。


 これがまたバカ売れしたせいで親父は近々奥さんをもう一人増やすらしい。


 ふざけんな。


 それと憂鬱になっているのは最近、今度はフラッシュバックではなく、夢を見る。


 主に俺の中の俺の子供の時の夢だ。


 親父の前で唯さんにしごかれたり褒められたりと言うものだ。


 間違いなく、俺の中のこの世界の俺は唯さんに愛情を持っているはずだ。


 その夢の中で妙に胸が熱いような感じがするからだ。


 それなのに何故なんだろうか。


 ひょっとしたら、女性と言うものに何か抵抗感があるのだろうか。


 夢の中では俺の中の俺は唯さんを目で追っていたのに。


「あの……」


 いきなり声をかけられて自分がずっと布団の上で考え込んでいたのが分かって慌てた。


 それは唯さんだった。


 相変わらずの姉のような母のような優しさのある姿だった。


「どうしたんですか? 」


「その……あの対決の世界放送のコミッショナーが貴方に会いたいとおっしゃって……」


 唯さんの後ろにカイゼルひげの長身の外国人で三十後半くらいの歳のおじさんが立っていた。


「初めまして。私はこの世界デンジャラスマッチのコミッショナーのオットー=ウィルヘルムと申します。ウィルヘルムと呼んでくだされば結構です」


 そう、カイゼルひげのウィルヘルムは笑った。


「ああ、初めまして」


 俺がそうウィルヘルムの差しだした手をとって握手した。


「では、私は言われた通り下がりますので」

 

 唯さんがそう正座して頭を下げて、襖を閉めて部屋を出ていった。


 唯さんが居なくなっちゃうのが辛くて俺が目で追っていた。


「ふふふふふふ、やはぁり、貴方はホモではない」


「え? 」


 俺がウィルヘルムに言われてビビる。


「私は、相手に触るといろいろと相手の事が分かる接触テレパスの力を持ってまぁす」


「えええ? 」


「なるほど、向こうの世界からいらっしゃったのに、こちらの貴方とうまく融合出来ていないのですね」


 ウィルヘルムがにやりと笑った。


「向こうの世界? 」


「そうです。向こうの世界です。向こうの世界で追いやられたものが来るのがこの世界なのです。そう、セクシャルマイノリティの人間がこちらに来てそれを満喫するのです。だからこそ、貴方が普通の性癖を持っているのが信じられない。私も男性が好きです。貴方も男性が好きなはず。この世界に転生してくるのは男性だけで、それだけでなく男性が好きなものばかりなのです。それで、この世界はドンドン女性だらけになっているのです」


「待ってください! この世界にはホモは何百年もいないとか言われてて、それで腐女子が俺のせいで復活したとかで……」


「我々は密やかにこの世界で誰にもバレずに活動していたのですよ」


「えええええええええええ? 」


「驚く事はありません。この事を<真実(トゥルー)(ラブ)>と我々は呼んでおります。真実とは隠されるもの。だからこそ誰にも知られてきませんでした。ここはそんな密やかな男性が好きな男性のみが転生するまさに<真実(トゥルー)(ラブ)>の世界なのです。本当に貴方はおかしい。私の接触テレパスでも貴方が女性が好きだと言っている。これは困ったことになりました」


「困った事? 」


「そう、このままでは我々、男たちの楽園が壊れてしまう」


「いやいや、待ってください。女性が圧倒的に多いんですから。それこそ男達の楽園では? 」


「その考えがいけない」


「は? 」


「我々はそんな中で、密やかに男達の世界を構築してきました。そもそも、ジャパァンにも織田信長と森蘭丸、織田信長と前田利家、武田信玄と高坂昌信と男の愛が溢れていました。高潔な愛です。元々は僧侶の世界でお小姓さんがそういうのの処理をしてました。ジャパァンはそう言うのが盛んだと聞いているのですが……」


「いやいや、それはちょっと……」


「そして、貴方がいけないのは腐女子を復活させてしまいました。これは大問題でぇす」


 ウィルヘルムが独特のイントネーションで話し続ける。


「そんなのまで、俺の問題に? 」


「あんな穢れた連中を復活させるとはっ! <真実(トゥルー)(ラブ)>は男にしかわからない世界なんでぇす。私もコミッショナーとして貴方には罰を与えないといけません。そうこの戦いで貴方は<真実(トゥルー)(ラブ)>の意味を知るでしょう」


「だ、誰と対戦なんです? 」


「三日月兄弟の弟の三日月龍二さんです。憎しみは愛の裏返し。その憎しみが愛に変わる事で貴方が真の<真実(トゥルー)(ラブ)>に目覚めるのを楽しみにしてまぁす」


「いやいや、俺、そういうの無いから」


「この世界に来たものは、この百年間、貴方のような女性が好きなものはいないのです。だから、貴方も本当の愛に目覚めて、<真実(トゥルー)(ラブ)>を理解するべきなのです」


 そうウィルヘルムは笑うと部屋を出ていった。


「何ですと? 」


 俺が立ち眩みになりそうになってよろけた。




★★★★★★★★



 俺が慌てて、親父の部屋に行くと唯さんと親父が言い合いをしていた。


「おお! コミッショナーの話は聞いたか! 残念だが、コミッショナーには逆らえないからな! 対戦は決まった! 残念だ! 」


 親父は残念だと言いながら声が弾んでいた。


「ちょっと、大殿様。対戦を受けるのは良いとして、なんで勝負方法が<ガンファイト>なんですかっ! 」


「<ガンファイト>ってガンマンが向かい合い、合図で互いに銃を抜き合い、どっちが先に相手を撃てるかを勝負する奴? 」


 俺が唯さんの言葉に驚く。


 それだと、あっという間に終わってしまう。


 作戦もへちまも無い。


「いやいや、映像でコミッショナーに見せて貰ったが、前回の三日月兄との抜き撃ちの力があれば蓮の方が間違いなく強いぞ。これはガチガチのこちらが勝てる勝負だ」


 え、あの時の攻撃はやったのは俺でなくて俺の中の俺なんですけど……。


 親父の嬉しそうな声にドン引きしてしまう。


「でも、蓮様はいろいろと策を行って戦うのが得意なお方ですよ? 」


「大丈夫だ! 今回は大々的に世界でやるらしいからな! 大儲けだぞ! 」


 親父がそうやって弾んだ声で騒ぐ。


 しかも、布団の上で踊っていた。


 あんまりだ。


「……いつなんですか? 」


 こうなると少しでも抜き撃ちを練習するほかはない。


 そう諦めて聞いた。


「明日だ」


「「明日? 」」


 俺と唯さんが同時に叫んだ。


 

 ★★★★★★★★



 俺達が撮影場所の島に船で向かっていた。


 今回は親父もノリノリの参加だ。


「えーと、勝負方法は……両方で背中を合わせてから十歩歩いた場所でストップ。そして、コインが落ちると同時に抜き撃ちします。十歩歩くのは互いに距離をとるだけですから。歩いてから撃つ形よりは少しはお互い同時に拳銃を抜けると思います。さらに撃ち合いが始まれば移動は自由ですから」


 唯さんが必死にいろいろと説明してくれてる。


 有難い。


「大丈夫だろ。クィックドロウ式にガバメントを改造して貰ってるし、金はたっぷりかけた。元々、漣のが早いんだ。考えるまでも無い」


 そう親父は気楽に笑った。


 親父は酒まで飲んでいやがる。


「でも、三日月龍二は凄まじい憎悪で練習してると言ってましたが」


「心配ない心配ない」


 唯さんの言葉に親父が笑って手をひらひらさせた。


「いや、憎悪って……」


「お兄さんを蓮様が掘ったからです」


「そうか……」


 足が震える。


 俺の中の俺は出てくるだろうか?


 そうでないと勝てない。


 そうして船が島に近づいて桟橋を見て分かった。


 これはいけない。


 恨みに思うわけだ。


「なんじゃ、こりゃ」


 親父が横でドン引きしていた。


 そうあの無精ひげのハンサムだったがヤクザみたいな身長百八十センチの長身だった三日月龍一はワンピースを着た男の娘になって、頬を染めて俺を待っていた。


「ほんげぇぇぇぇぇぇぇ! 」


 俺が叫ぶ。


「凄いですね。人生を変えちゃったんですね」


 唯さんが横で信じられないと言う感じで呟いた。


 だが、それは嬉しそうだった。


 腐女子って男の娘は違うんじゃないのか?


「あ、その後ろで睨んでるのが三日月龍二ですよ」


 唯さんが指さした先に居た。


 身長百七十五センチくらいの無精ひげの凄まじく殺気立った男が。


 顔は以前の龍一に似ている。


「凄い恨んでるようだな」


 親父が横で呟いた。


 目の前の乙女になった兄を見て悔し泣きをしていた。


「これは荒れますね」


 そう唯さんが呟いたが目がキラキラしていた。


 勘弁してください。



★★★★★★★★



「早くやらせろ! 一撃で終わらせてやるっ! 」


 そうグロックG17のカスタムを持って三日月龍二が騒ぐ。


「まあまあ、落ち着いてください。勝負はすぐですかぁら」


 そうコミッショナーのウィルヘルムが宥めていた。


 今日は前回の数倍のカメラが回っている。


 実況アナウンサーもたくさんいて、マジで世界で注目されているらしい。


 泣きそう。


「ついに、勝負ですが、お気持ちは? 」


 そのうちの一人が声をかけてきた。


「いや、その何というか……ごめんなさい」


 目の前に必死に手を振る三日月龍一さんの男の娘が居て、俺が思わず頭を下げた。


「良いのよっ! 貴方には愛を貰ったからぁぁぁ! 」


 そう三日月龍一さんが笑顔で叫んだせいで三日月龍二がギリリと誰にも聞こえるくらいの歯ぎしりをした。


 こないだ、三日月龍一さんはあんなに泣いてたのに……。


「兄の仇と対戦です。どうか感想を……」


 聞かなくても良いのに実況アナウンサーが三日月龍二に聞いた。


「殺すぅぅぅ! 兄をよくもっ! 殺すぅぅぅ! 」


 半狂乱で三日月龍二が叫んだ。


 脂汗が出る。


 もう一人の俺が出てこない。


 非常にまずい。


 そうして、いよいよ背中合わせになった。


 これから十歩歩いて振り返ってからコイントスだ。


「頑張れよっ! 蓮っ! 」


 そう親父が俺の背後の少し離れた透明な防弾ガラスでガードされたところで唯さんと見守っていた。


 くくくっ、他人事だと思ってぇぇぇ。


「殺す! 嬲り殺しにしてやる! 」


 そう背中合わせで三日月龍二が叫んだ。


 勘弁してください。


 俺と三日月龍二が歩く。


「頑張ってハニー! 」


 そうやって三日月龍一が手を振って叫ぶたびに、三日月龍二は殺気だっていった。


 しゃれになんねぇ。


 そうして、十歩歩いて振り返って三日月龍二と対峙した。

 

 半端じゃない殺気だ。


 びびって、つい後ろの観客席を見たら、親父はともかく唯さんが目をキラキラさせてるのが凄く辛い。


 何にも、起きないのに。


 そう思った途端、ピーンとコインが弾かれて飛んだ。


 あれから、実は調子が悪い振りをして、内緒で随分抜き撃ちとか練習した。


 だから、遥かに昔より速くなってるが、残念ながら、もう一人の俺ほど神速ではない。


 さらに、憎悪が化けさせたのか三日月龍二は速かった。


 だが、現実の恐ろしさと言うか、実際は拳銃なんてそう当たるもんでもない。


 お互い撃ちながら移動してるんで余計にだ。


 足を止めて撃ちあう方式で無かったのが救いだ。


 だが、親父が馬鹿なせいか、何でガバメントにしたのか。


 大口径は良いけど当たらない。


 向こうは9ミリパラベラムのせいで反動が少ない。


 唯さんに相手の拳銃に当たりにくくする動きとか習って無かったら、食らっていただろう。


 そして、最悪な状況になった。


 持っていたガバメントに当たったのだ。


 俺のガバメントは変形してるし、流石に撃てない。


 そして、もう一つ、その時に撥ねた弾が親父と唯さんのいるあたりの透明な防弾ガラスに当たった。


 そのせいで透明な防弾ガラスにひびが入る。


「よっしゃ! 拳銃が壊れたっ! これで俺の勝ちだ! 」


 嬉しそうに三日月龍二が笑った。


 だが、それは間違いだった。


 唯さんのいるあたりに弾が当たったせいか、俺の中の俺が覚醒した。


 一気に俺のズボンが裂けてあの三十センチ砲が屹立して飛び出した。


「あああああああああああああああああ! 」


 今まで殺気立っていた三日月龍二の表情が屹立した俺の大砲を見て動揺している。


 そしたら、三日月龍二の撃つ弾が動揺したせいからか当たらなくなった。


 それと同時に信じがたい動きで俺の中の俺は、壊れたカバメントを三日月龍二の持っているグロックに投げつけて手から落とさせた。


「く、糞ッ! 」


 小型の拳銃を三日月龍二が足首に隠し持ってるらしくて、その場でしゃがんだのが悪かった。


 俺の中の俺は一瞬にして三日月龍二の背後に回ると、三十センチ砲でお尻を貫いた。


「ほげぇぇぇぇぇぇぇ! 」


 三日月龍二はズボンを履いているから脱がさなければ大丈夫と思ってた俺が甘かった。


 ガバメントの破片を小刀のように使って一瞬にして尻を出させたのだ。


「よせぇぇぇぇ! 」


 俺が叫ぶが止まらない。


 そして、何と言う事だろう。


 周りの女性はほぅと熱いため息をつき。


 唯さんまでそれを見て微笑んでいた。


 そして、<真実(トゥルー)(ラブ)>の面子がいるのか、皆、男はそれを好意的に見ていた。

 

 あのウィルヘルムですらだ。


 そして、親父はこれで映像ディスクが売れると喜んでいた。


 くそったれが!


 だが、いつもの相手への連続発射の最中で俺は抵抗した。


 俺の中の俺の夢だろうと思うが、いつも唯さんと一緒に居たはずなんだ。


 ウィルヘルムは俺が男の事を好きなはずだと言ったが違うのだ。


 俺はそれを証明して見せる。


「思い出せぇぇぇ! お前の夢を! いつも、お前を見守ってくれた本当に愛する人を! 」


 俺が俺の中の俺へ絶叫した。


 そうしたら、俺の中の俺が止まった。


 そして、防弾ガラスの向こうの唯さんを見た。


 皆がざわめいた。


 そうだ。


 お前がいつも見ていたのは唯さんだったはず。


 俺の中の俺が動き出した。


 あ、でも、考えたら、唯さんを皆の前で襲ってしまう。


 俺がそれで慌てた。


 だが、それは杞憂だった。

 

 異常な動きで防弾ガラスを粉砕した俺の中の俺は親父に襲い掛かった。


「ちょ、待てよ! 」


 親父の誰ぞに似た叫びが続く。


 腐っても名家(みょうけ)


 みっともない行動が出来ないんだろう。


 そうして、三十センチ砲は親父を貫いた。


 なんでぇぇぇぇぇ?


 良く考えたら夢の中の唯さんの横に親父が居たよ!


「だ、駄目だ! 親父なんて近親相姦だぁぁぁぁ! 」


 絶叫するが機関車のようなピストンは止まらなかった。


「尊い」


 唯さんが手を合わせてうっとりと呟いた、その言葉は次々と拡がりらその場にいた女性が一斉に呟き始めた。


「「「「「尊い」」」」」


 ウィルヘルムさんに止めて貰おうとしたら、ウィルヘルムさんも手を合わせていた。


「尊い」


「尊い」


 女性だけでなく、男達まで手を合わせていた。


 全部終わって聞いた話によると近親相姦はまだ世界で未知の分野で、さらに名家(みょうけ)の大殿と言う権力者が皆の前で掘られると言うのはこの世界の特殊な性癖を凄く刺激したらしい。


 この世界で今回に上映された対戦は信じがたい収益を上げて、映像ディスクも売れまくった。


 

★★★★★★★★




 だが、親父はその日を境に俺に会ってくれなくなった。

   

 何でしょうか、この罰ゲーム。


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