59. リインフォース狂想曲2
お義母様が販売会をしましょうと発言してから、今日で四日。準備は着々と進んでいる。
私は数を作らなきゃと危惧していたんだけど、どら焼きと美容品に関しては販売用にストックしてあったものがあるので、あまり切羽詰まる必要はなかった。
だからここ数日はひたすらお肉を加工して、調味液につけ込む事をしていたよ。お義父様に言って、燻製小屋も魔術で作ってもらったから、漬け込みが終わったお肉から順次燻製を始めている所。
お姉ちゃんは美容品以外の調合で作製するもの。ヘアオイルとか、アロマオイルとかを作っている。
一体いくらになるんだか……。
それから、嬉しい誤算が一つ。昨日、東方からもち米が届いた。東方の商会とはウォーカー商会が既に契約を結んでいたので、ウォーカー商会が無事、全量購入出来た。昨日船が来てすぐに連絡が来たので、私もすぐに取りに行った。これで、お餅も販売出来る。
お餅は饅頭もいいかなって思ったんだけど、どら焼きとあんこがかぶるからお餅のまま販売しようと思う。
しかも、さらに嬉しい事に、粉が手に入った。怪しい粉じゃないよ。白玉粉と上新粉。白玉粉はもち米を粉にしたもので、上新粉はうるち米を粉にしたもの。うるち米はそのままのものも欲しかったんだけど、今回は粉に加工したものが入ってきた。もちろん全量購入。これで、お団子やういろうが作れる!
まずはういろうを作ってみようと思って、私は必死に地球にいた頃に読んだレシピを思い出す。
上新粉、薄力粉、砂糖を水を少しずつ加えながら混ぜて、型に入れる。で、それを蒸す。だったかな。粉の配分がわからないから、八対二くらいでいいか、それと同量の砂糖。
これを冷やせば出来上がり。あ、上にきな粉をかけてみよう。
……。
え、こんな簡単でいいの? それっぽいものが出来ちゃった。とりあえずビルさんと試食する。
「アオイ様、たったあれだけの手順でこんなおいしいお菓子が……しかし、東方のお菓子は食感が面白いものが多いですね」
「おいしい? よかった。作った事がなかったから、ちょっと不安だったんだよね」
でも、お手軽でいいかもしれない。薄力粉だけでも多分作れるけど、舌が肥えた人は上新粉と食感の違いがわかるはずだから、差別化も出来るね。
「あ! 蒼ちゃんがお菓子食べてる。それ、何?」
そこで大変タイミングよくやってくるお姉ちゃん。厨房に隠しカメラ無いよね?
「ういろうだよ。ちょっとアレンジになってるかもだけど、多分こんな感じだと思うんだよね」
私は一口大をお姉ちゃんの口に放り込む。
お姉ちゃんがそれを食べる。どうかな。
「うん、ういろうになってるわよ。もっちりして甘くておいしい」
「そう? 砂糖使いすぎてない?」
「大丈夫よぅ」
「よかった。混ぜて蒸すだけなんだよね。すごい簡単に作れたよ。あと、これは上新粉を使ったけど、薄力粉だけでも作れるかも。作り方を教えたら広められそう」
「広めるのもありね」
全ての食材が揃わないこの世界、代用でいけるならどんどんそうしていきたい所。
さて、違うお菓子も作れるかな……。
「あれ、また作るの?」
「もう一種、どうしても作りたいのがあるんだよね」
次に私が取り掛かるのは団子。
上新粉と白玉粉を水で混ぜてこねこねしていく、生地がボロボロにならず、綺麗にまとまったら、千切って団子の大きさに丸める。
お湯を沸かして、丸めた生地を茹でる。まず五分くらいだったかな。そして団子が浮いてきたら一分とかだった気がする。
茹で上がったらバットに取る。
これを串に打って弱火で焼く。
焼いてる間にビルさんにみたらしを用意してもらう。材料は醤油、砂糖、水、片栗粉。鍋に入れて混ぜ合わせて弱火から中火くらいで煮る。とろみが出てきたら弱火でさらにかき混ぜながら煮詰めると完成。
団子も焼き上がったので、お皿に取ってみたらしをたっぷりとかける。
くるくる回して全体にみたらしを付けるといいよね。
「はい、ビルさん。お姉ちゃん」
手伝ってくれたビルさんと、のんびりお茶を飲みながら見ていたお姉ちゃんに一本ずつ渡す。いただきます。
「焼いたお団子が香ばしい。さすがビルさん、みたらしもいい感じで出来たね。甘すぎない感じでどら焼きと棲み分け出来そう」
「オダンゴとは、オモチみたいな食感ですね。さっきのウイロウと同じ粉を使っているはずなのに、もっちりしています。それに、ソースも甘辛くてよく合う……。オモチと似ていますが、オモチと違ったおいしさがありますね」
「お代わり!」
「無いよ!」
「そこにあるのは?」
「タルトや、みんなの分だよ」
「なら仕方ないわねぇ」
食い意地の張ったお姉ちゃんを抑えて、残りの団子を死守する。二人の反応はいい感じだし、どっちも販売会に出してみるかな。
私はこれらも販売する事に決めて、制作を始める。
さて、おいしいお団子も食べたし、雫も調合頑張ろうっと。
どら焼きもらいに行くつもりだったけど、思わぬ収穫だったわぁ。
雫はパーラーに戻って調合を再開する。
大鍋のおかげで、アロマオイルやヘアオイルを一気に作る事が出来たから、ストックも足りそうね。
そろそろ新しいものを作ってみようかしら。
雫は材料を取り出す。今まで作ってきた材料に加えて、魔力含有量が多い素材を鍋に投入する。
「雪解け水の薬草……ラベンダー……アルメインカモミール……こんなところかしら」
鍋に魔力を流して丁寧に撹拌していく、ある程度抽出したら、網を使って草のかけらを取り出して、さらに純度を上げる。
これで化粧水の魔力含有量が上がるから、相乗効果も期待出来るはず。
この世界、魔力保有量が体調とかで増減するのだけど、減っている時は体調も悪いしお肌の調子も悪いらしい。だから地球みたいに保湿のアプローチだけじゃなくて、魔力を補填するのも有効なのよね。
化粧水と乳液はこんなところかしら?
雫は次に魔力草と薬草、あらかじめ果物とかから抽出しておいたビタミンを混ぜて、水で薄めて栄養剤兼魔力ポーションを作る。
新しい化粧水と乳液、栄養剤などが出来たところで、タイミングよく蒼ちゃんがやってきた。
「あら、蒼ちゃん、休憩?」
「そう」
「休憩は大事です!」
「シズクお嬢様も、ちょうどお茶の時間ですし休憩をお取りください」
「あら、もうそんな時間なのねぇ」
作業に熱中してて気付かなかったわ。
雫はさっとテーブルの上を片付けてスペースを作る。マリーちゃんがお茶の準備をしてくれる。
「蒼ちゃん、新しい化粧水と乳液を作ったのだけれど、テストしてくれるかしら?」
「もちろん、いいよ」
「テストしたら二人も試してね」
「「ありがとうございます」」
雫は、自分の手と蒼ちゃんの手に化粧水を出す。手で広げてなじませて、顔にペタペタと付ける。軽く抑えて、水分を肌に吸わせる。
次に乳液を出して、これも同じように付けていく。
「痛みとかはないよ」
「よかったわぁ」
確認が済んだタイミングでマリーちゃんが紅茶のカップを雫の前に置いてくれる。いただきます。
雫は一口飲んでホッと息を吐く。蒼ちゃんじゃないけど、雫もちょっと必死だったみたい。
マリーちゃんの入れてくれる紅茶はとても香りがよくて、嫌な苦味がなくてとてもおいしい。
「マリーちゃん、リリムちゃん、試してくれる?」
「はい!」
「わかりました」
雫は快く受けてくれた二人の手に、化粧水を垂らす。付け方はもう覚えたみたいね。二人とも丁寧に肌に付けていく。蒼ちゃんと雫は、肌の不調なんてないから、テスト目的で付けるけど、二人はちゃんと効果が出ててよかったわ。
次に乳液を二人の手に出す。こっちも同じ様に顔につけていく二人。
二人のほっぺたをプニプニしたいわぁ。
「二人とも、つやつや……あれ?」
「アオイお嬢様、どうしました?」
「うん、確かに付けた直後特有のもっちり感はあるんだけど、あんまり変化が無い?」
「私もですか?」
「マリーさんもだね」
「それはその通りよぅ、前に二人に渡した方が質がいいもの」
「はわ?!」
「え……」
「お姉ちゃん、これ何入れたの?」
「魔力素材をふんだんに入れたわぁ」
「それ、すっごく高いのではないですか?!」
雫はちょっと考えて単価を計算する。そういえば販売価格を決めてなかったわね。後で蒼ちゃんと相談しましょう。
「原価は、今までの美容品の三倍ね」
「三倍……」
「シズクお嬢様、お言葉ですがその様な高価なものを使用人に渡すなど……」
「雫にとっては、この美容品を買いに来る貴族より、もっといいものを二人に使ってもらう方が有意義よ」
一緒にいる人が綺麗になった方が嬉しいじゃない?
「お姉ちゃん、これ、販売価格どうするの?」
「今蒼ちゃんと相談しようと思ってたのよぅ」
「原価で今までの三倍でしょ……? 売れるの?」
「そうなのよねぇ……」
最初に作った美容品がそれぞれ銀貨十枚くらい。今回のは三十枚なのよね。
蒼ちゃんと雫の儲けなんていらないけど、ウォーカー商会や家族、使用人には相応の儲けを出してあげたいわねぇ……。どうしようかしら。
「今までのが小金貨一枚、新しい方を小金貨ニ枚にしなさい」
「お義母様?! それ、暴利では……」
ちょうどパーラーにやってきたママが妥当な額を教えてくれる。それにしたって高いわねぇ……。
「既に他の商会や調合屋が作った美容品以上に効果があると広まっています。他の商会の美容品ですら、銀貨数十枚で売っているのです。それに、硬貨のやりとりが少なくていいじゃないですか」
「じゃあそうしましょう」
「あ、ついでにお菓子も価格を決めたい。用意するのは、お餅、どら焼き、ういろう、みたらし団子だね」
「アオイちゃん、知らないお菓子があるのですが……」
「さっき作りました。どうぞ」
蒼ちゃんが『ストレージ』からういろうとみたらし団子をお皿に出してママとマリーちゃん、メアリーちゃんに渡す。
「オモチに似ていますね……いただきます」
「「いただきます」」
三人ともういろうから食べ始めるみたいね。
「ウイロウ、はお餅より歯切れがよくて食べやすいですね。それに甘みがあるのが手が進みます」
「オモチの様な……パンケーキのような……」
「ほのかな甘さがおいしいです」
次にお団子を食べる。
「こちらは香ばしいですね。焼いたのですか? それに、かかっているソースは初めて食べる味がします。どちらもとてもおいしいですね」
「もっちりしておいしいです! このソースも甘辛くてたくさん食べれちゃいそうです!」
「シロアンが至高と思っていましたが、このミタラシダンゴもおいしいです……甲乙つけられません」
三人とも好評そうでよかった。雫も食べたいなと、蒼ちゃんを見たらダメって指でバツを作られたわ。
残念。
さて、三人に試食用のお団子を食べてもらったし、価格を決めよう。貴族向けのカステラが銀貨四枚だったから、それより安くするのは絶対。出来たら貴族向けの販売品を庶民向けカステラと同等にしたい。
「どれも量を調整して、銀貨二枚になる様に出来ないかな」
「随分勝負に出るわねぇ」
「私たちの儲けはいらないでしょ? それより評判が欲しいから」
「確かにねぇ」
「原価は割れていませんね?」
「はい、お義母様」
「ならいいでしょう」
「反対しないんですか?」
「ふふ、反対される価格を提示したの? 義娘が作り出したものを義娘が商売するのです。私には口を挟む資格はありませんよ。もちろん、最低限のアドバイスはしますが」
「ありがとうございます」
量も大体一家五人で食べられるくらいの量にはなるかな。
さて、休憩もしたし、再びお菓子作りに戻りますかね。
販売会を明後日に控えた今日、お昼ご飯を食べていたらマークさんがウォーカー商会からの連絡を伝えてきた。なんでも報告したい事があるから来てほしいとの事。私とお姉ちゃんは、マリーさんとリリムちゃんを連れてご飯を食べてすぐに向かう。ちなみにタルトは今日も朝から冒険者ギルドに行っている。
ウォーカー商会までの道も慣れたもので、四人で雑談しながらでも間違える事はない。
と言うわけでウォーカー商会に到着。店員さんに迎えてもらい、応接間に通される。
椅子に座ったらすぐに、フランツさんがやってきた。
「本日はお呼び立てして大変申し訳ありません」
「大丈夫よぅ」
「商会の方が都合がいいって事ですよね。気にしないでください」
「ありがとうございます」
フランツさんが私とお姉ちゃんの間に、一通の手紙を置く。
「これは……?」
「アンナ義従姉さんから、お二人宛の手紙です」
私とお姉ちゃんは驚いて目を見開いてしまう。そしてその手紙をお姉ちゃんが手にとって、二人でまじまじと読む。お姉ちゃんが開いて、私はお姉ちゃんの横でくっついて読む。手紙には柔らかい綺麗な文字でこう書いてあった。
『シズクさん。アオイさん。お久しぶりです。お変わりありませんか?
お二人とディオンの町で別れてから、もう暫く会っていないはずなのですが、毎日会っている様に感じています。それも、各地の商会支店から来る報告に、お二人に関する様々な出来事が書いてあるからでしょう。
こちらは徐々にお腹が大きくなってきて、子供が動く様になってきました。性別はわからないのですが、元気なので男の子ではないかと、主人と話しています。お二人やタルトさんにも是非会っていただきたいです。
さて、お菓子を作っている事、フランツより手紙をもらっています。
商会でお菓子を売る場合は今後、私が責任者とさせていただく事となりました。それに際して、先行販売を行う王都にて、まずはお菓子に合うであろう紅茶を運んでもらいました。販売に役立ちそうなら、活用してください。
また、それとは別に東方より入荷しました珍しい茶葉をこの手紙と一緒に輸送してもらうので、是非お二人で飲んでみてください。
それではまた、お会いできる日を願いまして』
「アンナさんも元気そうだね」
「そうねぇ。ところで茶葉って何かしら?」
「こちらです」
フランツさんが私とお姉ちゃんの前に茶筒缶を置く。お姉ちゃんが開いて中を見る。私にも中身がわかった。抹茶の匂いだ。
「緑茶!」
「緑茶ねぇ」
「さすが、よくご存知ですね。私もアンナ義従姉さんの手紙で初めて知った茶葉なんですよ」
「紅茶とは違うのですか?」
「元は同じ茶葉なんだけど、お茶にするための加工方法が違うんだ」
「お茶にも種類があるんですね」
「そうだね、飲んでみようか」
私は『ストレージ』からティーポットとカップを取り出す。カップに『ウォーター』と『ヒート』で沸騰させたお湯を入れる。それからティーポットに茶葉を入れて、カップに注いだお湯を、直接丁寧にティーポットに注ぐ。一分くらい待ってから、各カップに少しずつ、均等に注ぎ分けていく。最後の一滴まで絞り切るのは紅茶と一緒かな。
そしてカップをみんなに渡す。
「私もいいんですか?」
「もちろんですよ」
当然、フランツさんにも渡すよね。いただきます。
抹茶の香りが広がる。って、これだけじゃ意味ないじゃん。
私は追加で『ストレージ』からみたらし団子を取り出してみんなに配る。
これでよし。
「やっぱり緑茶との相性がいいわねぇ」
「これ、新しいお菓子ですか? 一体アオイ様は何種類お作りに……」
「お団子、私大好きですぅ!」
「紅茶と淹れ方、味、香り、どれを取っても全く違いますね……おいしいです」
おいしく食べて飲んでもらえるなら何より。
私も一口食べる。そしてみたらしで甘辛になった口の中を緑茶の渋みでさっぱりさせる。また食べる……、おいしい……。緑茶の香りがとてもいいね。これ、かなりいい茶葉なんじゃ……。
ジャグにさっきと同じように沸騰させたお湯を出して、ポットに注ぐ。
「お茶お代わりいる人?」
「雫はお代わり!」
「私もほしいです!」
「茶葉を入れ替えないんですか?」
「うん、緑茶は二煎、三煎も茶葉によっては出来るんだ」
「そうなんですね」
「味が変わるから飲んでみる?」
「是非」
三人と、無言で楽しんでいたフランツさんにも注いであげる。
二煎目は渋みが減って飲みやすくなるよね。ごちそうさまでした。
「紅茶なんですけど、私じゃ把握出来ないのでフランツさんに売るのをお願いしていいですか? 価格も任せます」
「かしこまりました」
「せっかくきたから少し打ち合わせもしましょうか」
「そうですね」
「報告する事といえば、まず価格かな」
「そうねぇ。美容品とお菓子の販売価格を決めたわぁ。美容品が、ここでも作る予定のグレードが三本セットで小金貨一枚。それから、もう一段高級なグレードが、化粧水と乳液のセットで小金貨二枚を考えているわ。他にアロマオイルやヘアオイルも作ったわ。原価表を作ってきたから見てちょうだい」
お姉ちゃんが『ストレージ』から紙を取り出して、フランツさんに渡す。
それを読むフランツさん。
「なるほど、貴族相手でしたらちょうどいいでしょう。高級グレードの方はうちで量産出来ますか?」
「中級調合と通常以上の魔力が必要ね。ティナさんが覚えたら調合方法を教えるわ」
「ありがとうございます」
「それからお菓子ですが、銀貨二枚を考えています。量は一家で一つずつ食べられるくらい。どら焼きやお団子なら五個で、ういろうは型取りで一個です。それからあんこはバット販売も考えています。これが原価表です」
私もフランツさんにお菓子の原価表を渡す。
「少々安い様ですが何かお考えが?」
「庶民含めて広めたいだけです」
「今回は貴族向けの先行販売ですし、貴族向けカステラと同じ銀貨四枚はいかがでしょう? 庶民向けは別途値段を下げたいという考えには賛同しますが……」
「何か問題がありますか?」
「厄介なもので、貴族には安すぎても売れないのです。量は今のままでいいと思います」
「わかりました。そうします」
私はフランツさんから紙を戻してもらって販売価格にペンで修正を入れる。
「最後に魔物肉です。用意している魔物の種類はこの紙に」
私は違う紙をフランツさんに渡す。
「はは……、これはすごいですね……見た事のないお肉ばかりです」
「何かほしい? おすすめはクルーエルグリズリーとブラックタイラントバッファローよぅ」
「どちらも伝説上の生物では?」
「どっちもリインフォース領に普通にいる魔物ですね。狩るのはとても大変ですが」
「「え?」」
なんか背後から疑問に満ちた声が聞こえたけど、私とお姉ちゃんは無視する。
「アオイ様。単価が書いていない様ですが」
「あ、値段つけられないので、オークションにしようと思っています」
「オークションですか」
「雫が担当するのよぅ」
そう、なぜかオークションを相談したら必死に立候補していた。
「落札した時に鳴らすハンマーを叩きたいのよぅ」
「そんな理由だったの?! まぁいいけど……。貴族ばかりなんだし、お義父様かお義母様を補助につけてよね」
「わかってるわよぅ」
「商会からもオークショニアを出します。幸い先日お話しした礼儀作法を身につけた店員が経験者ですので」
「助かるわぁ」
後はあったかな……? ちょっと考えて細かい事を思い出す。
「搬入は私とお姉ちゃんがストレージでやります。それから、会計用の釣り銭の用意をお願い出来ますか?」
「かしこまりました」
以上かな、お姉ちゃんと確認して大丈夫と互いに頷き合う。
私たちはウォーカー商会を後にして、当日までの最後の仕上げを行うのだった。
評価、ブクマ、いいね、誤字報告いつもありがとうございます。
今回も楽しんでいただけたら幸いです。




