52. 素材を集めよう1
「お二人があの! 『双麗の魔術師』なんですね!」
何だって?
美容品の材料を集めるため、まずは冒険者ギルドに行く事になって、タルトの冒険者登録を始めたら、案の定呼ばれるよね。ギルマスに。
それで私たちの情報をギルドカードから参照してもらったら、よく分からない呼び名が付いているみたい。
「何ですか? その呼び名」
「ねぇねぇ蒼ちゃん、もしかして二つ名ってやつじゃない?!」
「えぇ……いらないよ……」
「各地からの情報が集まって、この呼び名に集約されたみたいでですね。薬草市場を変える程の納品。公になっていませんが上位魔族討伐。ドラゴンスレイヤー。ゴブリンチャンピオンの討伐。下級冒険者の育成。これらをこなす双子の貴族令嬢。以上が、各地の冒険者同士で噂と情報としてやり取りされて、『双麗の魔術師』と呼ばれる様になったみたいですよ。名誉な事かと思います」
「麗しいって言われてるわよ。嬉しいわねぇ」
「そこなの……? ひっそりとしていたかったのに……」
「そうねぇ……。自由にやり辛くなったら嫌ねぇ」
「お姉ちゃんがそんな心配するなんて……」
「雫だって自分のこれからの心配をするわよぅ」
「それは、普段の行動をもっと常識的に……」
「あー、そろそろいいか?」
お姉ちゃんとの会話が白熱してしまった。ギルマスのイアンさんに止められてしまった。恥ずかしい。
「お前らの事はギルドでも把握している。このギルドでお前らの詳細を知っているのは……」
「ギルマス……、発言が不敬ですよ」
「「え?」」
「え?」
「もともと庶民だろう。問題になるならリインフォース領で既になっている」
「全く気にしないから、シルキーちゃんも普通でいいわよぅ」
「わ、分かりました……」
「話を戻すぞ。二人の詳細を知っているのは、今いないが、副ギルマスと俺、それから運よく話を聞いたシルキーだな」
「私、そんな大変な事を聞いてしまっていいんですか?!」
「もう聞いているだろうが。ちなみに逃げられないからな。さて、今回はそこのタルト嬢の冒険者登ろ……、待て」
タルトを見ながら考えに耽るイアンさん。そして纏まったのか、再び話し始める。
「お前、従魔になったって言うドラゴンか。それならステータスも納得だな」
「そう。僕はドラゴン。人型じゃないとこの町を歩く許可が出ないから変身しているだけ」
「なるほどな。油断を誘うために少女の格好をしているのか」
「それはお義母様の趣味」
「それはママの趣味よぅ」
「そうか……大変だな……」
「後の二人は護衛か。登録はいいのか?」
「はい。お嬢様に頼まれた際に狩りをするだけですので。冒険者の名誉に興味はありません」
「私は転職する時の候補でいいです」
「五人で冒険者パーティっていうのも楽しそうよねぇ」
「前後衛のバランスもいいしね」
「今、冒険者になったらメリットってありますか?」
「依頼をこなすか、あるいは素材を精算するとお金が貰えるな。貴族のメイドの給料は知らないが、小遣い稼ぎには丁度いいんじゃないか?」
「大抵、うちから与えているし」
「むしろ、欲しい物があるなら買ってあげたいけど」
「好きにするといいわぁ」
「好きにするといいよ」
今はしないと答えた二人だったが、やっぱり登録するみたい。どうやら、五人でパーティというのに惹かれたらしい。
マリーさんとリリムちゃんが、シルキーさんが持ってきた書類に必要事項を、石板にスキルを登録する。せっかくだし、二人のスキルを見せてもらおう。
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マリー 侍女
【スキル】
上級剣術
上級家政術
中級体術
中級水属性魔術
中級魔力操作
中級魔力感知
上級気配遮断
中級諜報術
中級調理
身体強化:弱
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なるほど。さすがメイド。家政術が上級だ。それと諜報術? スパイ活動って事かな?
後、他のスキルが戦闘寄りなのは気にしないでおこう……。
さて、お次はリリムちゃん。こっちもマリーさんと同じく、石板が光ってステータスを映し出す。どれどれ……。
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リリム 侍女
【スキル】
上級短剣術
上級双剣術
上級家政術
中級体術
中級風属性魔術
中級魔力操作
中級魔力感知
上級気配遮断
下級諜報術
中級調理
敏捷性強化:弱
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こっちもメイドスキルは持っている感じだね。ところで気配遮断ってメイドのたしなみなの? 二人とも上級だけど……。
双剣術は短剣術からの派生なのかな、リリムちゃんが片手で戦っている所は見た事がないけど、両手が使えるから片手も使えるのかな。
後は、マリーさんが身体強化なのに対して、リリムちゃんは敏捷性強化、二人の戦闘スタイルの差かな。
私とお姉ちゃんに出来る事は、二人の魔力操作と魔力感知を上級に上げてあげる事位かなぁ。
「二人とも、色々なスキルを持ってるわねぇ」
「恐らくお嬢様方程では無いと思います」
「見た事ありませんけど、お嬢様たちの方がすごいと思います!」
「私たち、神様に貰っただけだからあんまり実感ないんだよね。だから、実力でスキルを持ってる二人を尊敬するよ」
マリーさんとリリムちゃんからの賞賛を、とりあえず事実でかわしておく。
二人のスキルについて話していると、シルキーさんが三枚のギルドカードを応接机の上に置いてくれる。
「こちらがお三方のギルドカードになります」
三人がそれぞれ手にとって眺めている。私とお姉ちゃんもランクが上がった時に知ったんだけど、ギルドカードは縁の色がランクによって違っている。私とお姉ちゃんのBランクカードの色は赤。Eランクスタートの三人は黄緑……じゃない?!
マリーさんとリリムちゃんは青色、つまりCランクだ。カードを覗き見ると確かにCって書いてある。
そしてタルトは私たちと同じ赤。Bランク。
「三人のランク、Eじゃないんですね」
私はイアンさんに尋ねる。
「あのな、なぜかBランクの貴族がこの場にいるんだぞ。更にそこのメイド二人も、リインフォース領で冒険者を指導してCランク以下を完膚なきまでにのしているのは報告を受けている。おまけにドラゴンときた。Eランクにする理由がないな」
「でも雫たちは貴族の紹介があってもEランクだったわねぇ」
「あぁ、紹介人はアーガス・ドルカ……剣聖アーガスになっているな。当初はシズク嬢とアオイ嬢の実力が不明だったからじゃないか? ただ、ランクアップのスピード感を見ると便宜は図られていると思うぞ」
「別に文句が言いたい訳じゃないからいいわ」
「私は昔、冒険者の方に伺いましたが、Cランクで一人前でしたよね。私たちが……」
「それに、タルトさんはBランクってすごいです!」
「何か、めんどくさそう」
三者三様の感想が聞こえてくるけど、とりあえず、タルトも含めて登録は終わったみたい。
さて、それじゃあここに来た本題の植物の植生を調べますか。
「シルキーさん、この辺りの森の植生を知りたいんですけど……」
「情報はありません!」
「え? シルキーちゃん、そんな訳無いでしょう? 資料室だってあるんだし……」
「残念ながらシルキーの言う通りだ。この町は騎士団と魔術師団が強いからな。冒険者の出る幕がほとんど無いんだ」
「それにしたって……情報の蓄積は大事よぅ?」
「その通りなんだが、王都の直轄領で悪さをする奴はいないし、発生した魔物は騎士団と魔術師団が討伐する。だから町の人は安心して薬草取りに出かけられるって訳だ。冒険者ギルドに来る依頼がそもそも少ない」
「この冒険者ギルドではどんな依頼があるんですか?」
「他領へ移動する際の護衛依頼や、騎士団らが出る程ではない、小さな魔物の討伐だな。冒険者のレベルもあまり高くない」
「そうなのねぇ」
「イアン、質問だ。依頼を受けずに採取や魔物討伐をしても問題ないかい?」
「勿論だ。悪い事じゃなければ問題ない」
可愛いワンピースを着たうちの子がぶっきらぼうな口調とか、これギャップ萌え? 可愛いんだけど!
「それなら何も問題ないわねぇ。依頼は無さそうだし、挨拶はしたから森に行きましょう」
「あの!」
「なぁに? シルキーちゃん」
「町の人の分を残してあげてください!」
「勿論よ。森の奥の方に行くわ」
マイヤ領で薬草の大量納品をした事は知られているけど、採り方までは書いてないから、ギルドとしては当然危惧するよね。私もお姉ちゃんも、根絶やしにするような採り方はしないけど。
ちょっと採れるようになった冒険者で、報酬に目がくらむと時々やる人がいるから困ってるってマイヤの冒険者ギルドでソフィアさんが溢してたのを思い出す。
「地図はありますか?」
「それなら資料室にある。シルキー、案内してやれ」
「かしこまりました!」
私たちはイアンさんにお礼を言って、部屋を出て五人でシルキーさんの後ろを付いて資料室へ向かう。
資料室の中に入ると、本棚や書類棚の数の割に中がスカスカで、ぎっしり埋まっている段は数える程しかなかった。王都だから一番華々しいと思ったんだけど、案外世知辛い事情があるんだね。
部屋の中央にある作業机に、この辺りの地図が広がっていた。
森は……、北の方と、南西の方にあるね。
「近場の森は、地図をご覧の通り二ヶ所にあります。南西の森の方が大きいです。植物の植生は大きく違うと町の人は言いますが、詳細は分かりません。どちらも魔物が発生する事がありますが、そのレベルは北の方が強いです」
「お姉ちゃん、どっちに行く?」
「シルキーちゃん、村の人がよく採取に出かけるのはどっちか分かる?」
「魔物が弱い南西の森ですね。小物が多いので、最悪逃げる事が出来ますので」
「じゃあ今日はそっちに行きましょう」
「分かった」
侍女二人とタルトも了解する。
シルキーさんにお礼を言って、五人で冒険者ギルドを出る。森は南の門から出るのがいいと教えてもらったので、平民街の細い道を縫って、南中央通りに出て門のある方に進む。
面白いよね、片方は普通の町なのに、もう片方の柵がある側は綺麗で、まるで別世界を見ているかのような錯覚を覚える。私たちもそちら側の人間になってしまっているのだけど、生まれが地球の一般家庭なせいか、平民街の方が親近感があるんだよね。あぁ、リエラの家が懐かしい。
すれ違う町の人に何度か振り向かれたりしたけど、概ね注目を浴びずに門まで来れたと思う。
門番さんにギルドカードを見せつつ挨拶をして、問題なく門を通過する。
この町に初めて来た事を話したら、ちょっと申し訳なさそうにしながら、頑張れって言ってもらった。騎士団と魔術師団が強い事を申し訳なく思ってるのかな?
五人で森に向かって街道を歩き出す。
「マリーちゃんとリリムちゃんは、植物採集をした事はあるかしら?」
「幼少期に薬草取りはしましたね」
「冒険者らしい事と言えば、魔物狩りしかやった事ありません!」
「魔物狩りであれば、ジョセフ様に扱かれた時以来かもしれません」
ジョセフさん、どんな扱き方をしたんだろう……とても気になるけど、今は話を進める。
「じゃあ教えるから一緒に採集してみない? これからやってもらうかもしれないし、侍女を辞めて欲しくはないけど、辞めた時に役に立つかもしれないし」
「私は辞めるつもりはありませんが……仰せの通りに」
「リリムちゃんは辞めちゃうの……?」
「分かりません……。でも、今は辞めようとは思ってません。私も採集してみたいです!」
タルトはどうする? と聞いてみる。
「僕? 森の奥に行くよ。魔物の分布を見てくる。ドラゴンになっていい?」
「森の奥はいいけど、ドラゴンはダメ」
「見られたら狩られちゃうわよぅ」
「分かった。蒼、フロートとエアイクストルードの魔術語教えて」
「うん。フロートが『物体 浮遊』。エアイクストルードが『疾風 纏う』だよ」
「ありがとう。これで速く移動出来る」
「え? 速くって……」
「じゃあ、僕は先に行くね」
それだけ言い残して、タルトの体が薄い緑色に輝き出す。
私たちが見ているうちに、その輝きが増して行くと、タルトの体が浮遊して風を纏い始めた。
そして、じゃあ後で合流するね、とだけ言い残して森の方へあっという間に飛んで行ってしまった。
「タルトーー!」
「タルトちゃーん!」
ポツンと残された私たち。もう見えなくなってしまった。
「タルトさんも……」
「……十分規格外ですね」
「私も出来そうなんだけど、四人で飛んで行く……?」
「何があるか分からないし、歩いて行きましょう」
お姉ちゃんの一言で、私たちは歩いて行く事にした。歩き続けて、遠目に見えていた森に到着する。森の中に入って少しした所で止まる。
「じゃあ始めるわねぇ」
「待ってお姉ちゃん、二人にやってもらおう」
「あ、そうね。分かったわ」
「まずは植物を探すんだけど、探し方を教えるね。薬草とか薬や美容品の素になる植物って、魔力を持っているんだ。だから、探すために魔力感知をとにかく広く」
「「はい」」
「慣れないと干渉しちゃうから、リリムちゃんからやってみようか」
「分かりました!」
早速、魔力を広げ始めるリリムちゃん。前に見た感じだと、広げるのは苦手だけど感度はよかったはず。今日は、どれだけ広げるかが見られるかな。
初めは順調に広がっていた魔力だけど、段々広がるスピードが落ちてきて、ついに広がらなくなった。
「リリムちゃん、もうちょっと広げられるわよぅ!」
「もう無理ですぅ」
お姉ちゃんが煽っている。Cランクで中級魔術が使える魔術師よりちょっと広いくらいかな。
「広げる訓練じゃないからそこまででいいよ。移動していない僅かな魔力が点在していると思うんだけど、分かるかな?」
「えっと……はい、分かります」
「それが植物ね。その塊の大きさや密度で植物の量をざっと量るんだ。多そうなところはあるかな?」
「んと……ありました! 南の方です!」
「じゃあそっちに行ってみましょう。進む時も魔力感知はし続けてねぇ」
「シズクお嬢様、確認は?」
「マリーさん、お姉ちゃんの呼び方、お嬢様?」
「シズク、様……」
「冒険者同士で、様?」
「シズクさん……」
「よし」
「そうね、外で冒険者のふりをするのだから、気をつけた方がいいわね。マリーちゃんの言う確認だけど、リリムちゃんを信じてるから不要よ」
「責任重大です!」
「間違えたってまた感知すればいいだけだから、気楽にね」
私たちはリリムちゃんが感知した南の方へ進んでみる。
「そろそろです」
「あ、あったわねぇ」
お姉ちゃんが植物を見つける。薬草だ。
「まずは薬草ね」
「目的のポイントに来たから、魔力感知はやめてもそのままでもいいよ」
「魔力感知し続けた方が見つけやすいって事は伝えておくわね、リリムちゃん」
「はい」
「採り方は、纏まりを七割から八割まで、なるべく間引くように採っていってね」
「植物の見分けは付くかしら?」
「先日美容品を作る所を見せていただきましたので」
「分からなければ聞いてねぇ」
リリムちゃんとマリーさんに、鎌とカゴを渡してそれぞれ別れて採集を始める。
お、命草だ。
「リリムちゃんいいわよぅ。こっちに魔力草もあったわ」
少しして集合すると、他にも美容品の材料になりそうな植物を採れていた。量も上々。私とお姉ちゃんは美容品以外の材料も採集しているけど、それはまだ教えない。
「じゃあ、次はマリーちゃんの魔力感知ねぇ」
「はい……」
「マリー、緊張しているんですか?」
「えぇ……。リリム、知っているでしょう? 私は魔力感知が苦手なのを」
「そうなの? 大丈夫だよ。気楽にね」
「あの、私が群生を確認した後に、魔力感知で本当にあるか確認していただけますか?」
「分かったわぁ」
「ありがとうございます」
そこまで確認してマリーさんが魔力感知するために、魔力を広げ始める。
リリムちゃんと広さはあまり変わらないみたいだけど、魔力が多い。これだと感知の精度が上がりにくい。
「なるほどねぇ」
お姉ちゃんもすぐに気付く。
あれ? でも……。
「リリムちゃん、マリーさんって前にクルーエルグリズリーを見つけた時の魔力感知は、精度がよかったよね?」
「あれは気配察知と魔力感知を合わせて、おまけに近距離なので……。なので私もマリーも近距離しか精度がよくないんです」
「なるほど」
話しているうちにもマリーさんの魔力感知は進む。なかなか見つけられないみたい。
「マリーちゃん、どうかしら?」
「難しくて……恐らく、あちらの方に……」
マリーさんが南西を指差す。
「一度魔力感知を切っていいわよぅ、確認するわ」
「はい」
マリーさんの魔力が霧散して、マリーさんの緊張した面持ちが落ち着く。
入れ替わりにお姉ちゃんがのほほんとした顔で魔力感知を始める。
あっという間に、マリーさんが広げた程の範囲に魔力が広がる。
「ふむふむ……。じゃあ行ってみましょう。雫が案内するわ」
「シズク、さん、正解は……」
「行ったら分かるわよぅ」
泣きそうな顔のマリーさんを無視して、お姉ちゃんが歩き出す。リリムちゃんがマリーさんを慰めながら進みを促す。私もそれに付き添って声を掛ける。
「まだ無いって決まった訳じゃ無いんだから……」
「ですが……」
「それに無くったってお姉ちゃんも私も見捨てたりしないし、怒ったりしないよ」
「そう、思いますが……」
「マリーがここまでうじうじするの珍しいですね。ちょっと面白いです」
「リリム……」
お、睨んでる睨んでる……。ちょっと元気が出たかな。
そんな話をしているうちに、少し前を進んでいたお姉ちゃんが立ち止まる。
「ここ? お姉ちゃん」
「マリーちゃんが示したのはこの辺りね」
「じゃ、さっきと同じように採集始めようか」
「はい」
「はい……」
何かまた落ち込んでるのが一人いるけど、もうここまで来ちゃったし、私も気にせず採集を始める。
しかしあまり見つからない。魔力草を見つけたけど、量も質もさっきの程じゃない。
「見つかりません!」
「確かに、さっきより量は少ないね」
「申し訳ありません……」
「あったわよぅ。水のハーブ!」
少し離れた、日当たりのいい場所にいたお姉ちゃんから叫び声が聞こえた。
「え?! 珍しい! すごい!」
「水のハーブ、ですか……?」
「これが一番高かったのよぅ。お手柄ね。マリーちゃん」
「ですが、私の魔力感知は……」
「確かにまだ魔力が厚いし、広げるのも手間取っているから練習する必要はあるわ。でも無事に、ちゃんと欲しい植物が見つかったわよ」
「……! はい」
「よかったね、マリー!」
その場で採集した後も、四人で順番に魔力感知をして色々な植物を採集していく。
「いくつか足りないのもあるけど、多分北の森かな?」
「北の森も見てみたいけど、明日かしらね。それより雫は腹ペコよぅ。さっき見つけた日当たりのいい場所でお昼にしましょう」
「分かった」
「「分かりました」」
少し北に戻って、小さく開けた日当たりのいい場所に出る。『ストレージ』からテーブルと椅子四脚を取り出して置く。
私はその横で調理道具を同じように『ストレージ』から取り出して料理を始める。
マリーちゃんとリリムちゃんに止められたけど、お姉ちゃんが、『冒険なら蒼ちゃんの料理よ!』と、ごねたので渋々引き下がった。半分はわざとだね、あれ。
作る事に不満はないので久々に料理を始める。最近お菓子しか作ってなかったから、私もちょっとうきうきしている。
今日はレッドタイラントバッファローの生肉を、さっき手に入れた魔力草やスパイスを使って香草焼きにする。
付け合わせは、朝たくさん焼いてくれるパンの余ったものを拝借してきたので、それをトーストにする。
それからオニオンスープを作った。本当は飴色になったものを使いたいんだけど、ストックと時間がないので諦めた。という訳で完成。
「あれ? なんで二人共座ってないの?」
「アオイさんが働いていらっしゃるのに……」
「私たちが休む訳には……」
「私、お嬢様扱い禁止って言ったよね?」
「呼び方だけではなかったのですか?!」
「そんな侍女の動きしてたらバレバレじゃん……一緒に食べるよ」
「さぁ、座るのよぅ。蒼ちゃんの料理が冷めちゃうわ」
「「は、はい!」」
二人が座ったのを確認してから、私は配膳する。
いただきます。
三人、特に侍女二人の舌鼓の声を聞きながら、お昼ご飯をいただきました。
評価、ブクマ、いいね、誤字報告いつもありがとうございます。
今回も楽しんでいただけたら幸いです。




