48. デビュタントボールに参加しよう1
「おはようございます!」
リリムちゃんが元気よく扉を開けて入ってきた。
まだ眠気が去り切っていない頭から、眠気を取り去ってくれる快活さだ。
「おはよう、リリムちゃん、マリーさん。今日も元気だね」
私はベッドに腰掛けて、伸びをしながら二人に挨拶をする。
「リリム。ノックを忘れてますよ。お嬢様方、大変失礼いたしました」
「ご、ごめんなさい! でもこの肌を見てほしくて!」
肌、昨日お姉ちゃんが侍女三人衆に渡してた美容品の事かな。
あ、リリムちゃんの肌を見るとツヤツヤしている。
「早速使ったんだね。ツヤツヤしてるよ、リリムちゃん」
「そうなんです! こんなにもちもちツヤツヤした肌、初めてですよ!」
「リリム。落ち着きなさい」
「ごめんなさい……でもマリーも喜んでたじゃないですか!」
「それは……! 今言わなくてもいい事です」
「本当だ、マリーさんも肌が瑞々しいね」
「二人に渡してよかったわぁ」
「おはよう、お姉ちゃん」
「おはよう。蒼ちゃん」
『おはよう』
「タルトも起きたね。おはよう」
お姉ちゃんとタルトも起き出してくる。相変わらず、もそもそしながらの挨拶だけど。タルトは目を瞑ったままだったりする。寝てていいんだよ?
マリーさんとリリムちゃんが、お姉ちゃんにテンション高めに昨日の美容品のすごさとお礼を話している。
どうやら二人共、昨日午前に作って渡した美容品の虜になったみたいだった。
そういえば午後はお姉ちゃん何したんだろ。午後の事、聞いたらはぐらかされちゃったんだよね。だから私としては午前の美容品より午後の行動を追求してほしいけど、二人にそんな気はないみたい。
そして今日は精霊の日。私たちのデビュタントボールがある日だ。
火点し頃から、お義父様と同じ民衆派でその筆頭のノーヒハウゼン侯爵の別邸で開かれる。
午後になったらすぐ準備を始めて、家族で向かう。
改めて考えると、とても緊張してくる。
「大丈夫よ。パパも言ってたじゃない。あまり歓迎されてないみたいだから、きっと端っこにいればいいのよぅ」
「そんな訳ないからね。歓迎されてないから怖いんだよ……」
「大丈夫です! 二人共美人ですから! きっと受け入れられます!」
リリムちゃんが両手拳を元気よく体の前でグッとして慰めてくれる。
私はそれに何とか笑顔を返しながら、午後はドレスで大変だからと許してもらった普段着に着替えを始めるのだった。
「ではまず、入浴いたしましょう」
「マリーちゃん、まだお昼過ぎよぅ」
「この後が本番ですから、十二分に念入りに綺麗にしませんと」
お昼を食べてから、私の緊張はますます強くなる一方だ。
ご飯もあまり食べられなかった、気がする。
マリーさんが言うなら入浴は必須なんだろう。確かに念入りにしておいた方が、些細な不安は無くなるよね。
「お姉ちゃん、一緒でいいから入ろう」
「入る!」
貴族になっても、まるで緊張するそぶりを見せないこの姉は本当に尊敬する。
私はお姉ちゃんに引っ張られて浴室へと向かう。
お風呂に入っていつもと違ったのは、ボディオイルを使って、リリムちゃんに隅々までマッサージされた事だった。
「本当は毎日やって差し上げたいのですが……」
「高いの? このオイル」
「いえ、値段はまぁそれなりにですが、それより量が手に入らないんです。なので、当家では大事な日に使う事になってます。王様たちは毎日使うんでしょうけど」
「なるほど」
「マリーちゃん気持ちいいよぅ」
「それは何よりです」
あっちもマッサージされているみたい。いつものマッサージですら私にとってはとても気持ちがいいのに、それをこんな丹念にされてしまったら、もう寝てしまいそうなくらい、リラックスしてしまう。
「アオイお嬢様がリラックス出来てよかったです」
「私そんな緊張してる風に見えた?」
「はい。見た事ないくらいでした」
「そっか。ありがとうリリムちゃん」
「いえいえ」
入浴もそこそこ、上がってからも別のボディオイルを付けて貰う。マッサージ用と保湿用で違うみたい。それからヘアオイルも付けて貰って、体の準備は整った。
一度部屋に戻って、ドレスに着替える。
イブニングドレスはワンピースで薄香色、明るくてやや灰味のある橙色のドレスだ。上半身はウェストをしっかり締めて、首元から胸元にかけては大きく開けた作りになっている。でも下品にならないように、レースとフリルで押さえるところはしっかりと押さえてある。それと、ノースリーブで同じ系統色の肘上まで隠せるグローブを着ける。
スカートは足を覆い隠す様な長い丈で、私がフリルスカート、お姉ちゃんがフレアスカートだ。どちらもパニエでしっかりと広げる。生地は薄めで柔らかく。踊った時にはスカートも一緒に舞う様に広がるのがとても綺麗だ。
後忘れずにアクセサリー。アクセサリーは、お義母様に貰ったイヤーカフを着ける。
指輪は着けない。
最後に、お義兄様に貰ったヘアアクセを着けて、髪をセットして完了。
お姉ちゃんと二人で確認しようとすると……。
「今日はまだですよ!」
「お二人共、お座りください」
リリムちゃんとマリーさんに促されて、ドレッサーの前に座る。
「今日はメイクもしますので」
そう言ってマリーさんたちがメイクブラシを取り出す。
「お二人共、そこまでしなくても綺麗ですけどね」
「ただこういったものは作法として見られますから。とは言っても、綺麗なのは事実ですので薄めにしますよ」
地球にいた頃は、休日にお姉ちゃんや友達とメイクして遊んだりしたけど、こっちに来てからメイクは初めてだ。
人にされるメイクっていうのは、こそばゆいもので、つい笑ってしまう。
「蒼ちゃん、やっと笑った」
「え? 私笑ってなかった?」
「一日中緊張しておりましたよ」
「さっき浴室でリラックスしたと思ったらまた緊張してましたね」
「そっか。気を付けるね」
「蒼ちゃんの笑顔は無敵だからねぇ。雫負けちゃう」
「何それ。お姉ちゃんも笑顔可愛いよ」
「ふふ。ありがとう」
リリムちゃんがしてくれたメイクは、ベースメイクにファンデーションはかなり薄め、それにアイラインとリップも少し付けただけって感じだった。
でも少しだけのはずなのに、私がかつて地球でしたものより血色がよく見えるし、目や口元もハッキリとしている。え、メイクってこんなに出来るの? すごい。
「私渾身の出来ですよ! ふぅ、やり切りました!」
「いつもそれくらいの出来でいてほしいものですが」
隣を見ると、お姉ちゃんも化粧している感じは全くしない、普段と同じ肌の色なのに、血色がすごいよく見える。これがなちゅらる。
「ありがとうリリムちゃん、すごい綺麗になれたよ」
「マリーちゃんさすがぁ。これで主役は雫のものね」
「目立つ事はしないでよ……」
今度こそ準備完了、と二人で確認して頷き合う。
そして、エントランスに向かう。
エントランスに着くと、お義父様とお義母様も丁度準備が終わって来た所の様だった。お義母様の胸、ネックレスを着けているけど、あの宝石はもしかしてあれだよね。作ったんだ。でも似合ってる。
二人がこっちを見て頷く。
「二人共、綺麗になったな」
「旦那様、まるでいつもは綺麗じゃないみたいじゃないですか。二人共今日は一段と可愛いですよ」
「いつもはお転婆だからな」
私たちは笑いながら抗議とお礼を言う。お義母様も笑っているので、二人なりに緊張を解してくれたんだろうな。
私たちはお義母様の後に、お義父様のエスコートで馬車に乗り込む。ちなみに御者はジョセフさん、その隣にはマリーさんで、リリムちゃんやジェニファーさんはお留守番との事。今日の牽引役はブルーノ。私は忘れずに挨拶したよ。
それから馬車が動き出す。王都の、それも貴族街の中にノーヒハウゼン侯爵家もあるから、距離からしたら馬車に乗る必要は無いけどこういうのは貴族のマナーとの事。
「アオイちゃん、緊張してますか?」
「そう見えますか?」
「えぇ。今能面よ。でも、あなたたちの笑顔はとても素敵ですから、それを忘れないでくださいね」
「はい」
「分かったわ」
「不安になったら私とタルトを思い出せ」
「パパ、どうして?」
「この組み合わせなら、貴族も暴力も何とかなりそうだろう?」
「パパじゃ不安だわ。ママの方が安心出来るわよぅ」
「シズクは減点。ご褒美は無しだな」
「パパ大好き! パパなら雫を守ってくれるわ!」
「私はタルトのように簡単じゃないぞ」
と言い合っていたお姉ちゃんとお義父様が、見つめ合って大笑いする。お義母様も、私も釣られて笑ってしまう。緊張してピンと張り詰めていたどころか、こんがらがってどうしようもなくなっていた糸が、あっという間に解けていく感覚を覚える。これを思い出せば、大丈夫。笑顔で出来る。
そう考えていたら、馬車は目的の場所に着いたみたい。別邸とはいえ、うちの本邸よりも大きな家と庭が広がっている。これが侯爵家。まさに洋邸と言った感じで、二階建ての大きな建物は、白塗りの壁に紺の屋根で出来ていた。
その門に、私たちと同じ目的の馬車が先に止まっているので、後ろにつけて順番を待つ。
順番が来て、ジョセフさんが門番に来訪を告げて、門を通してもらう。
門から玄関までも百メートル程の距離がある。玄関に、さっき私たちの前にいた馬車が止まっていたから、ジョセフさんは少し手前で馬車を再び止める。
前の馬車が動き出してから、ジョセフさんが同じように正面玄関に馬車をつける。
それからお義父様のエスコートで、お義母様から降りていく。
次はお姉ちゃん……のはずだけど、なかなか呼ばれない。お義父様たちが出迎えられて挨拶しているのか、少し時間が掛かってるみたい。
手が震える。
「えい!」
「わ! きゃぁ! ……やめ! はぁ……はぁ……」
お姉ちゃんがいきなり私の脇腹をくすぐって来た。
「大丈夫よ、笑顔よぅ」
私の手を握ってそんな事を言うお姉ちゃん。
「どうした? シズク、おいで」
「何でもないわ。はぁい」
お義父様に呼ばれて、お姉ちゃんが先に降りていく。全く……。もう大丈夫よ。
その後、私もエスコートされて降りる。お姉ちゃんが待っててくれたので、お義父様とお義母様の後ろを並んで歩き出す。
周りからどよめきが聞こえるけど、気にしない。きっと双子だから珍しがってるんだ。
エントランスを抜けてホールに行くと、そこは百人近い人数が入れる大きな空間で、すでに到着している何人かが、話をしていた。
中に入って早速、その男性集団の元へお義父様が歩いて行った。
どうしたものかと、お姉ちゃんと見つめ合っていると、お義母様が小声で指示を出してくる。
「シズクちゃん、アオイちゃん、最初は私と一緒に。誰かに呼ばれたら失礼して抜けていいわ。ダンスは誘われたら踊りなさい。今日はずっと一緒にいる事は出来ないから、頑張って」
「「分かりました」」
お姉ちゃんも社交モードになったみたい。それを見て私も頭のスイッチを切り替える。
言われた通り、お義母様に付いてていくと、こっちは女性集団に向かって行くみたい。さっきの男性集団のご夫人かな。
「ごきげんよう。昨日はありがとうございました」
「あらクラウディア。ごきげんよう」
「ごきげんよう。昨日はごちそうさま」
「こんばんは。そちらは?」
「えぇ、昨日お話しした義娘です。二人共、挨拶を」
お義母様に促されて、お姉ちゃんと二人でカーテシーをする。
「初めまして、次女の雫と申します」
「三女の蒼です。お見知り置きください」
緊張したけど学んだ通りに出来た!
「双子なの? 可愛いわね」
「初めまして、よろしくね」
「でも次女と三女なのねぇ」
やや毒を含んだ言い方をするご夫人。何女かなんて正直気にしていなかったけど、リエラは勘当された事になっているから、本来ならお姉ちゃんが長女、私が次女が正しい。
「えぇ、旦那様があの不祥事を忘れないために、と仰せでしたので」
お義母様がその毒に答える。笑顔だけど笑顔じゃない顔だ。
「そうなのね。でもまた女子なのねぇ。大丈夫?」
「何がでしょう? 可愛い義娘たちですよ」
「聞いているわよぅ。魔術が達者なんでしょう?」
「えぇ、うちは生活魔術を教えるのが得意ですから。養女とはいえ、二人にもしっかり教えましたよ」
二人の会話が激しくバチバチしている気がする。私とお姉ちゃんは笑顔で前を見て、話を聞く事しか出来ない。貴族の会話怖い。
しかし、そこで別のご夫人が話に割って入る。
「それより! 昨日のお菓子、持って来てくださいました? 私あの味が忘れられなくて」
「はい。うちの侍従に持って来させましたから、後で出ると思いますよ」
「まぁ! それは楽しみだわ!」
「私はそれより、クラウディア様の美の秘密が知りたいですわ。双子ちゃんもとっても綺麗ね」
「義娘たちの侍女に、美容品を若干ですが持たせています。少量でよろしければ後でお渡ししますわ」
「ありがとうクラウディア! あら、首元のダイヤかしら? 立派ねぇ」
「えぇ、旦那様がプレゼントしてくださったんです。今日、身に着けていろと。全く、義娘の晴れ舞台だというのに困ったものですわ」
「相変わらず仲がよろしいのね」
お義母様たちの話に時々頷き返していたら、ホールは段々人で埋まって行く。
最初話していたご夫人たちも、他のグループに行ったり、私たちも移動したりと忙しなく会話が進んでいく。何回自己紹介したか分からない。
しかし分かった事がある。挨拶したご夫人たちは、私たちを心から受け入れてくれる人、表面上は受け入れてくれる人、毒を吐く人。この三パターンに分けられるって事。
途中、後で名前を教えるから会話の内容と、顔と雰囲気は覚えておきなさいとお義母様に言われた。
ひと段落して人がはけたので、次のグループに向かおうとしている所、こっちに向かって女性が歩いてきた。藤袴色を更に薄くした、淡い紫色の綺麗なポニーテールで、細身の背の高い女性だ。
お義母様が慌てたように頭を下げたので、私たちも追従する。
「クラウディア、久しぶりね」
「イザベル様。これはご挨拶が遅れまして申し訳ありません。お久しぶりでございます」
「堅苦しいのは抜きにしてっていつも言ってるのに、真面目ねぇ。まぁそれより、そちらの可愛い子たちは?」
「先日養女にした義娘です。二人共、こちらはイザベル・ドルカ様。ご挨拶を」
「初めまして、次女の雫です」
「初めまして、三女の蒼です」
「よろしく、イザベルと呼んでちょうだい。シズク……アオイ……」
「「はい?」」
じっと、私とお姉ちゃんを交互に見つめるイザベル様。そして口を開く。
「どっちかアーガスの嫁に来ない?」
「はい?」
「え? アーガスって……」
そこへ、戸惑っている私たちの方に、イザベル様と同じく藤袴色を更に薄くした色の長髪で細身の男性がやってきた。
「母上やっと見つけた。また人様のご令嬢にちょっかいを出して、私は妻を娶る気は無いと何度言ったら……って、シズクにアオイ?」
「「アーガスさん?!」」
アーガスさんはリエラの学院時代の友人。リエラの家で、私たちに剣での戦い方を教えてくれた師匠。伯爵家の次男っていうのは覚えてたけど、ドルカって家名は聞いてなかったな。アーガスさんがあの家を去ってから一、二年という所だけど、変わりなく優男の雰囲気を出している。
「ん? 三人知り合い?」
「えっと、リエラの……」
思わず聞かれたままに答えを口に出してしまって、アーガスさんに手で遮られる。
それから、アーガスさんとイザベル様が小声で話し出す。やがて話が終わってこっちに向き直ってから、アーガスさんが小声で教えてくれる。
「リエラの事はここでは禁句なんだ。母上は理解しているから今の発言は問題無いよ。私たちは街でたまたま出会ったという事にしよう。悪いけど一応、私は二人の上位貴族になるから、この場では言葉に気を付けて」
そして普段はいつも通りでいいよ、とウィンクしてくれる。
「失礼しましたアーガス様。以前は助けていただいてありがとうございました」
「姉を助けていただいてありがとうございました」
「シズクの言葉に慣れないが、二人が変わりなくてよかった」
私もアーガスさんが元気でよかった。お姉ちゃんと二人で、アーガスさんにリエラの事は出さないように、マイヤの街で冒険を始めてからの日々をアーガスさんに伝える。
訓練時代と変わらず、私たちの話を面白そうに聞いてくれるアーガスさん。ほんと優しいお兄ちゃんって感じ。うちのお義兄様も優しいけど、タイプが違うかな。
三人で結構な時間話をしていると、イザベル様もお義母様も違うところへ話に行ってしまったみたい。
正直このまま三人で話してたら楽なんだけど、アーガスさんも付き合いがあるだろうし、そう言う訳には行かないよね。
「アーガス様、他に行かなくて大丈夫ですか? 付き合いとかあるのでは……」
お姉ちゃんも気になってたみたいで、アーガスさんに聞いている。
「あぁ、どうせ結婚の話しか無いから気にしないでいいよ」
「相変わらず、結婚する気は無いんですね」
「うん」
かなりの優しみイケメンなのに、全く結婚願望が無いんだって。それで何度も父親と喧嘩しているとか。
そこへその話を打ち切るように、壇上に中年に差し掛かった位の男性が上がる。あれがノーヒハウゼン侯爵だとアーガスさんが教えてくれた。その人が声を張って話し出す。
「諸君、よく集まってくれた。今宵はデビュー、デビュタントの会でもある。だからまず紹介しよう。次代を担う彼らを」
それから名前を呼ばれていく子女のみなさん。恐らくみんな今日が初めてなんだろうな。緊張しているのが伝わってくる。あれ、他人事のように思っていたけど、私たちも呼ばれるの?
「最後に、シズク・リインフォース、それから妹のアオイ・リインフォース!」
予期した通り、何人もの後に私たちも呼ばれてしまった。しかも最後。アーガスさんを見ると、小声で頑張れと言ってくれる。当然、助けてはくれない。
私たちは、アーガスさんが開けてくれた壇上までの道を並んで歩いて行く。
途中、ヒソヒソする声が聞こえるけど、さっきの毒舌で慣れちゃったのか、大分気楽に進めている。
先に上がった子女と同じように壇上に立って、まずノーヒハウゼン侯爵にカーテシー。そして会場を見てカーテシー。
今までと違って二人同時にしたためか、その瞬間だけ静寂に包まれた。
そして壇上を降りる。
しかし降りようとしたところ、ノーヒハウゼン侯爵から、私とお姉ちゃん以外には聞こえない小さな声で話しかけられた。
「期待しているぞ」
当然、振り返って何をなんて聞き返せるはずもなく、しかし一瞬だけ立ち止まった私たちは、すぐに動き出してそのまま壇上を降りていく。
降りた後、二人揃って疑問符を浮かべるのだった。
評価、ブクマ、いいね、誤字報告いつもありがとうございます。
今回も楽しんでいただけたら幸いです。




